142回-衆-予算委員会-27号
教育関係
1998年3月18日(水)
○石井(郁)委員 私はここで二枚目の資料をちょっと御紹介したいのですけれども、
大臣は、こういうのをごらんになっているのでしょうか。
先ほどの作文も茨城県の高校の生徒なんですね、県立高校の生徒でございま
すが、その茨城県では、この内申書が使われているわけであります。ここには、
皆さんのところでは白黒の印刷なんですけれども、赤い字で書かれているとい
うのは小さい字のことですが、それが点数なんですよね。
これによりますと、学級活動をしたら二点、生徒会活動三点、ボランティア
活動二点、校外の団体に表彰されれば十点、部活動を三年間続けたら五点、全
国大会などに出場すれば二十点ということで、極めて具体的にこれは示されて
いるでしょう。
先ほどの黒磯の話に戻りますけれども、やりたくない部活でも三年間続ける
ということがあるし、もしやりたい部活で、そこで挫折をしたら、これまたそ
の子にとっては将来がそこで一つ閉ざされるということにもなりますので、こ
れは、大臣が言われたような平素の日常の活動を評価するということとはもう
離れて、極めてがんじがらめに、行動、そしていろいろな活動、もちろん学習
が、日常的にこうして点数化されているということなんですね。こういう事態
にまでなっている。
ですから、高校生になって中学活動を振り返ると、自由がなかったとか、苦
しかった、つらかった、そういうことを言わざるを得ないというのは、ここに
起因しているわけであります。
私は、先ほど大臣の御答弁ありましたけれども、高校受験とか内申書に基づ
く生徒管理から子供たちをすぐにも解放しなければいけないというふうに考え
ているものですけれども、この資料をごらんになって、再度、大臣どうでしょ
うか。
○町村国務大臣 文部省で必ずしもすべてを承知しているわけじゃございませんが、
ここまで点数化しているのは、どうも茨城県ただ一つのようでございます。
ただ、これをごらんいただきますと、例えば、学習の記録の所見、とても熱
心な態度であったとか、生徒会の副会長として活躍したとか、野球部のキャプ
テンとして県大会に出たとか、むしろそうした、必ずしもテストの点数だけで
ない、評価すべきこの子のメリットというものをここにあらわしているわけで
ありまして、私がもし高校の校長さんならば、ああ、こういうすばらしい子な
らむしろとろう、仮に多少学力検査の点数が悪くてもこういう子はぜひとりた
いと思うメリットも、ここに記されているのもまた事実でございましょう。
したがいまして、私は、文部省として、こういう、全人格を点数化するとこ
こにキャッチフレーズみたいなものが書いてございますが、これのよしあしは、
それぞれの県において、あるいは設置者において、一番いいと思う方法でやっ
てもらうのが文部省の基本的なスタンスであるということは申し上げさせてい
ただきます。
○石井(郁)委員 私は、本当に文部大臣がそのようにお考えでしたら、そこをちゃ
んと貫いていただきたいと思うのですが、しかし、実際は、こういう方向を文
部省が挙げて推進してきたのじゃないんですか。
これは、高等学校入学者選抜の改善等に関する状況ということで、ことし二
月に出されたものです。だから、高校入試を多様化するんだ、そして観点別評
価をするんだ、どの県がどこまでこれを実施しているかということを逐次報告
しているわけでしょう。
これによりますと、調査書でボランティア活動についても評価をするという
ような県が三十八県になっているとか、こうして推進しているわけですよ。だ
から、県独自で、設置者の判断でと言われますけれども、文部省がこれをやれ
やれと言っているわけで、ここのところは文部省は非常に責任が重いのですよ。
○町村国務大臣 私どもは、今の子供たちの多面的な能力をただ一回のテストだけで
判断する、そういうやり方はやはりおかしいのではないか。むしろ、その子そ
の子のいろいろ持っている、点数にあらわされた理解力ではない面で非常に評
価すべき点があるのだろう。そういう多面的な評価をするための一つの方法と
してこういうこともあるのじゃないでしょうかということで全国のやり方をい
ろいろな形で御紹介しているのであって、後、それを各県がそれぞれどういう
形で多様な高校入試、さらに言えば私は大学入試もそうだろうと思いますが、
多様な方法で入学試験に御努力をいただくというのは、私は、それぞれの県の
試みがあっていい、こう考えております。
一斉に、これをやりなさい、これはやってはいけません、そういう統制的な
文教行政は、少なくとも今後は、今まではどうか、余りそれを言うと先輩文部
大臣がおられるのでいかがかと思いますが、今の文部省の方針というのは、で
きるだけの地方分権をやり、できるだけそれぞれの学校、それぞれの地域の主
体性を重んじてやっていこうというのが今の方針でございます。
逆に、今もし委員が言われたような形で、こういうものを全部やめる、それ
は一案かもしれません。しかし、やめてどういうことが生ずるかというと、今
度はまた、もとの一回きりの、一発勝負の入試に逆戻りいたします。それが本
当にいいのだろうかなと思うと、やはり、こうした子供のメリットをむしろ積
極的に書けるような、さまざまな欄のあるこういう調査書の意義というのもま
たむしろあるのではないだろうか、こう私は考えております。
○石井(郁)委員 文部大臣に重ねて言わなければいけないのですけれども、一発勝
負かそれとも日常の評価か、今そういう選択ではないのですよ。日常の評価と
いうのが、この調査書というのが、関心とか意欲とか態度、これこそ人間の心
に属する問題じゃないのですか。こういうところを日常的に評価するという、
行動とか性格まで評価の対象になっているのですよ。それが新学力観と言われ
るものなんです。
だから、そこが本当に行き過ぎだということで、やはり是正をされるという
ふうに先ほど来の御答弁を受けとめていいのでしょうか、そこが一番肝心なと
ころなんです。というのは、そういう学力観、新学力観と言われるものですけ
れども、そのもとで人格を点数で評価するということがもう現実に進んできて
いるんですよ。それの極端なあらわれが茨城の、きょうお示ししたものですけ
れども。
ですから、中学生はいつでも先生に見られている、こういうもとで本音を出
せない。いわゆるよい子競争と言われているでしょう、今。いつでもよい子に
ならなくてはいけないのですよ。中学生は一番反抗心旺盛なときじゃありませ
んか。ところが、それが許されない。ここが、ストレスがたまる、あるいは時
には切れる状態にまでいくという、こういう問題なんです。
特別活動などを点数化する、あるいは行き過ぎた内申書重視の高校入試、あ
るいは推薦制というのもあるんですね。この茨城の場合は推薦制の枠が三〇%
なんですよ。推薦といったらやはりそうでしょう、先生に推薦をもらうわけで
すから、その先生によく見てもらわなくてはいけないわけですよ。こういうこ
とが物すごく子供たちを息苦しくさせている、これはあるでしょう。これは先
ほど来作文でお示ししたとおりであります。だから、ここは、中学生の発達に
おける本質的な障害になっているという認識をやはり持ってもらわないと困る
のです。いかがでしょうか。
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○町村国務大臣 例えば、高校入試の多様化ということを私どもは言ってまいりまし
た。それは、先ほど申し上げたように、一回こっきりの試験の点数だけでは決
めない方がいいと考えるからであります。例えば推薦という制度が、それが全
部というのだと困りますが、一定割合であるならばそれもまたよし、あるいは
内申書重視でいくのもよし、あるいはかなりその場の、当日の試験にウエート
を置くのもよし、それはそれぞれの見方があると思うけれども、ただ、今の文
部省の立場として考えておりますことは、多面的にその子供のよさを、いいと
ころを伸ばしていこうという発想で言っているのであります。
ここまで点数化することの是非は、あえて私は、それは茨城県の判断ですか
ら申し上げませんけれども、何も人格を点数化しようということが目的ではご
ざいませんで、当たり前のことでありますけれどももともと点数化できる話で
もありませんし、そうではなくて、子供たちのいい点、伸ばしてあげたい点を
どう評価して、それを中学から高校に伝えていくかという趣旨でいろいろな工
夫をしているというふうに御理解をいただければ、こうした調査書、内申書と
いうものがすべて悪であり、すべてストレスはここから来ているという言い方
にはなってこないのではなかろうかな、こう私は考えます。
○石井(郁)委員 今回のいろいろな一連の中高校生の事件の中から、新聞などでも
いろいろな投書がございます。大臣もごらんになっていると思いますけれども、
やはり高校入試内申書重視路線というか、この弊害を訴えている声は多いのじゃ
ないでしょうか。
私は一つ御紹介するのですけれども、二月二十五日ですけれども、高校の先
生です。先生の立場で見てもこういうお訴えなんですけれども、内申書重視の
弊害はよい子志向の人格管理になることだ、それは制度そのものから必然的に
生じてくる問題なのだというふうに言われています。だから、決してもう個々
の先生の考えでどうかできるという種類の問題じゃないんですね、今。制度が
つくり出している弊害だということです。
そういう意味で、子供もがんじがらめというか、いつも見られている緊張感
にさらされているけれども、こういう細かな採点というか点数化する、あるい
は評価をするという、先生方もまた大変な御苦労をされている。より一層の困
難をつくり出している。
先ほど官房長官が、どうしてゆとりがないのかというお話がありましたけれ
ども、現場はこういうことで物すごい事務量なんです。だって、日常的に、授
業で何回手を挙げたとか、そういうことまでカウントしていかなければいけな
いのですから、もう先生も緊張のしっ放しだということになるわけですね。そ
れで、私どもは、もっと子供とゆったりと、ゆとりのある、そういう子供と接
する時間を欲しいという意味でも人をふやさなければいけないと申し上げたの
です。
再度伺いますが、やはりこれは、茨城のこういう例は行き過ぎた内申書重視
だというふうに考え、この制度のあり方をもっと検討するという点で、いかが
でしょうか。
○町村国務大臣 例えば手を挙げた回数で意欲をはかる、もしそういうようなやり方
でその生徒の意欲を見ているとすれば、それは私は、正直言って、そんな方法
でしか意欲なんてわかりませんかとあえて申し上げたいですね。そんなことで
もし忙しいのなら、どうぞおやめください。だれが何回挙げたなんて回数を数
えること自体が、そんなことまで私ども文部省、やれなんてもとより言ってお
りません。
それよりは、逆に今度、仮にこういうものをやめたら、そして、では高校入
試は一回の試験だけにしましょうと言ったら、多分またごうごうたる反発、批
判が出てくると思います。逆にそういう批判があったからこそ、内申書も、日
常の子供の活動もやはり考えて高校入試をやった方がいいよといって今の制度
が過去の反省においてできたので、これをやめたら、またもとの姿になって、
また同じ批判が出てくるという意味で、私は、こうした内申書重視が一概に悪
いとかということではなくて、何度も申し上げるようですが、むしろ多面的な
評価ができる一つの方法であろう、こう思っております。
ただ、ではその調査書の書き方とか表現の仕方、それに改善、工夫の余地が
あるかないか。それはまたいろいろ議論の余地もあるでしょうし、そこはまさ
にそれぞれの県なり学校なりで大いに工夫をしていただいてよろしいのだろう、
こう思っております。
○石井(郁)委員 きょうは労働大臣もおいでいただきまして、大変お待たせいたし
ましたが、あと残りの時間で、特に父母の教育参加の問題、とりわけ父親が教
育にどうかかわっていくかということで、ちょっと御所見を伺いたいと思って
いるのです。
もう一枚の資料を持ってきておりますけれども、これを見ても、改めて日本
の父親がいかに子供と接していないかというのがわかるのです。
国際的に見ても低い日本の夫の家事負担ということで、妻と夫でどのぐらい
こういう問題でかかわっているかということですけれども、例えば乳幼児の世
話を見ますと、日本は〇・九%ですね。圧倒的に日本が少ないということがわ
かります。ドイツやスウェーデンは一六%ですから、極端ですね。それから次
のところで、男性の家事協力度の国際比較ですけれども、ここでも、子供の世
話というのは日本は一二・一%です。ほかはもう三割台に大体届いているわけ
ですね。
そういう点で、これはもういろいろと指摘されてきたところなんですけれど
も、今、学校の問題、そして子供たちのこんな困難な問題をやはり大人がかか
わって解決していくというときには、父親がもっと家庭にも帰る、また学校に
も出ていく、これが私は大変大事だというふうに思うのですね。そのためには
何が必要なのかということになりますと、やはり日本の働くお父さんの長時間
労働や残業の長さや、そういうことが問題にならざるを得ないわけであります。
労働大臣がその点の御認識をお持ちかどうかということを、つまり、長時間
労働や労働日の多さなどが父親が教育参加をする上での障害になっているとい
うような御認識をお持ちかどうかを伺いたいと思います。
○伊吹国務大臣 今先生のお話のように、私は、日本の子供が日本人として生きてい
く知恵といいますか、子供としてのしつけといいますか、これをきっちりと身
につけていくのは、学校よりもやはり家庭だと思っております。そういう意味
では、家庭の一員である、今御指摘の父親が学校の参観等に参加をして御一緒
におやりになるということは、まことに私は結構というか、むしろそうなけれ
ばならない。
そのために、不必要な長時間労働であるとか、あるいは有給休暇を完全に消
化していないなどということが数字の上で出ているようでございますけれども、
必要であれば、文部大臣とも御相談して、そういうものは十分消化していただ
けるように私は話してもいいと思っております。
ただ、時間の短縮というのは、賃金を下げずに時間を短縮するということは、
これはやはりそれにたえられるだけの実体経済をつくらなければならないとい
うのは、これは市場原理でございますので、そこのところだけはしっかりと押
さえてやっていきたいと思っております。
○石井(郁)委員 先週土曜日の読売新聞の夕刊で、これは北海道の、大臣は北海道
ですから、稚内南中学校の、父親参加による荒れた中学の再生という感動的な
記事が一面トップでございました。
そういう意味で、今の教育の再生に本当に父親の役割が大きいということで、
これはぜひ文部大臣として、今年休のお話もございましたから、年休をどんど
んとって学校教育に参加をしていくということでは、労働大臣や通産大臣にも
提案をして、そういう方向を推進されるという御決意、いかがでしょうか。
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○町村国務大臣 委員の御指摘のとおりであろうと思っておりまして、私も、既に幾
つかの経済団体とお話をしまして、残業を少なくしたりとか休暇をとりやすく
したりとか、あるいは単身赴任をできるだけ少なくするようにというようなお
願いをしてございまして、父親が母親とともに子供の教育に当たるということ
に理解を求めていく。そのために、労働大臣あるいは通産大臣のお力もかりな
がら、ぜひそういうことでやっていきたい。
文部省全体でも、子供と話そうキャンペーンというのを前文部大臣のときか
ら一生懸命やっておりまして、いろいろな面で、親子の触れ合いの場、あるい
は自然体験活動の実施等によりまして、父親も母親もともに子育てを一生懸命
やる、そういう社会的な雰囲気の醸成、またそのための具体的なプログラムも
積極的に展開をしていこうと思っております。
○石井(郁)委員 最後になりましたけれども、橋本総理が今国会の所信表明で、
「今こそ大人の責任で対策を考え、実行しなければなりません。」と演説をさ
れたわけであります。
最後に官房長官、この総理の所信表明との関係で、子供たちのために政治が
何ができるかということが緊急に求められているわけでありますので、ぜひ閣
議で父親の参加の問題等々も御検討される、そしてまた、やはり財革法も、見
直しを含めて、もっと教育の予算もふやしていくという点での御答弁をお願い
したいというふうに思います。
○村岡国務大臣 青少年の問題については、内閣を挙げて対処をしていきたいと思っ
ております。
先ほどから委員のお話を聞いておりました。うなずけるところもございます
が、そうでない部分もございまして、どうもあの作文聞いておりますと、今の
少年全部じゃないなと。何か、よい子になるために学級委員もしたとか掃除も
したとか、それではもう子供自身が夢も希望もないのじゃないか。これはもう
本当に、先生の方もそうだし生徒の方もそうだし、もうちょっと私ども、きょ
う初めて先生からその実態みたいな、あるいはその一端をお聞きいたしました。
文部大臣とも協議をしながら、一生懸命やっていきたい。
財革法の方は、増員しろということでのあれでは、これは見直しはできない
し、財政改革はやっていかなければならないと私は思っております。
○石井(郁)委員 終わります。
○越智委員長 これにて石井さんの質疑は終了いたしました。
《省略》
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