142回-衆-本会議-14号
教育関係
1998年2月19日(木)
この資料は、この度公開された国会議事録から「教育」に関係した部分を抜粋した
ものです。この website の「教育関連リンク集」からもリンクをはっております。
順次整備していきたいと思いますが、当面は【経過】からリンクします。
○土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、橋本内閣総理大臣の施政
方針演説に対して質問いたします。
《省略》
さて、総理も施政方針の冒頭で憂慮されている子供たちの問題です。
宗像誠也さんという教育学者は、教育とは人間の尊厳を確立する過程という
言葉を残しています。
多くの子供たちが家庭にも学校にも居場所を見つけられなくなっているのは、
効率や競争原理を最優先しようという政治や経済や社会の運営のありように、
根本原因が潜んでいるからではありませんか。それぞれの家庭は社会の真った
だ中にあり、社会全体のひずみや不安定はすぐに忍び込んでくるのです。文部
省や教育委員会、校長先生や教頭先生による上からの指導でこの問題を扱おう
とするだけでは、とても解決できる問題ではありません。
こんな場合、お上の関与を教育現場において強めることには、かえって有害
でさえあると考えます。むしろ、国は、教育現場への関与は最小限にとどめて、
学校や家庭や地域を初めとする現場の自主的な解決努力を見守るべきでしょう。
私たちも、子供たちの危機のために何ができるか。難しい問題ですが、差し迫っ
たことでもあると考えております。
そのためには、地域の学校と教育委員会、文部省を結んで機能してきた教育
システムもまた制度疲労に陥っているのではないかということを、指摘する勇
気が問われているのではないでしょうか。
例えば、ことしの春に小学校に入学する新一年生の男の子がいます。僕は水
色のランドセルがいいなと強く望んで、両親は実のところ困っています。男の
子は例外なく黒のランドセルで通う学校で、水色は許されるだろうか。最近は
自立した個人が語られるけれども、まず周囲と協調する必要があるのではない
か、子供が孤立していじめられてしまうのではないかという心配です。
また、小学校六年生の元気な女の子が、中学入学前に、私はスカートは嫌い
だ、ズボンをはいて行きたいと心に決めています。男の子はズボン、女の子は
スカートと長い間決められているので、両親は心配しています。
総理、また文部大臣、彼の小学校、彼女の中学校の校長先生なら、どのよう
な判断をなさいますか。
つい最近の悲惨な事件を契機に、文部省が、事故防止の具体策として、各県
教育委員会に所持品検査を検討させていることに一言申し上げたいと思います。
子供たちがナイフやその他の凶器を学校に持ち込んでいる事態は、もちろん
放置できるものではありません。持ち込まないようにという指導は大切なこと
だと思います。けれども、学校という場は、そもそも相互信頼を前提に運営さ
れているのです。もし生徒を信頼できなければ、家庭科の調理実習も、技術科
の木材加工も、美術の彫刻も取りやめにしなければなりません。所持品検査と
いう対処策は、何とか子供たちとの関係を取り戻そうとしている先生にとって
も、新たな苦悩の種ともなりかねません。
文部省の発表で、日本全国に、三十日以上学校を休み続けている小中学生が
十万人近くいます。実際の数は、この数字を大きく上回るのではないかとも指
摘されています。もはや子供個人や家庭の問題だけではなく、教育、学校とい
うシステムの問題です。高度経済成長の時代ははるか昔に終わり、私たちの社
会は、二十一世紀の諸課題を直視しながら脱皮していかなければならないとき
を迎えています。現在の学校システムは、大量生産と消費の時代そのままに、
休まずに動き続けてきたラインなのではありませんか。
毎日の食卓で、教育は家庭共通の話題です。ここ数年、伝えられるニュース
は暗く、また未来に大きな不安を投げるような事柄が続きました。今こそ、悩
み苦しんでいる子供や先生、そして多くの親たちが安心して、これでやれる、
大丈夫とうなずけるような具体策を総理に強く求めたいと思います。
《省略》
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
(11/13) 次の分割内容へ
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 土井議員に御答弁を申し上げます。
《省略》
次に、子供たちの問題について、幾つかの御指摘、御提言をいただきました。
冒頭触れられましたのは、学校と教育委員会、文部省を結ぶ教育システムに
ついてのお尋ねでありますが、それぞれの地域や学校が創意工夫を生かし、特
色のある教育活動を行うことができるよう、地方教育行政システムと申し上げ
ていいのだと思います、地方教育行政システムの見直しが必要であり、現在中
央教育審議会において御審議をいただいておりますが、その審議を踏まえなが
ら、主体的な地方教育行政を展開していくよう、国、都道府県、市町村間の関
与のあり方を改善していく。また、校長先生がリーダーシップを発揮できるよ
うな、学校の自主性を確立していくことなどの改善を図ってまいりたいと思い
ます。
子供の持ち物、服装について、例示を挙げてのお尋ねをいただきました。こ
れらについては、各学校それぞれの教育方針などに基づいて定めているのが一
般的であります。
おまえが校長先生だったらこういう場合どうするという御質問をいただきま
した。
私は、仮に校長先生でありましても、現実に行われているのと同じように、
保護者の方々の考え方あるいは地域の実態を十分踏まえたものにする必要があ
ると考えますし、そうした点を踏まえて対応していくという以上に申し上げよ
うがないと思います。
《省略》
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣小渕恵三君登壇〕
(12/13) 次の分割内容へ
〔国務大臣町村信孝君登壇〕
○国務大臣(町村信孝君) 土井議員にお答えを申し上げます。
最初に、戦後の教育システムが制度疲労に陥っているのではないかという御
指摘がございました。
我が国の初等中等教育は、戦後五十年にわたりまして教育委員会制度を中心
に進められてまいりまして、それなりの成果を上げてきたと考えているわけで
ございますが、二十一世紀の日本の教育をつくり上げていくためには、教育改
革の重要な一環といたしまして、地方分権の推進を進めるという観点からも、
地方教育行政システムの全体の見直しを進めているところでございます。
この問題は、総理からも御指摘のとおり、中央教育審議会において御審議を
いただいておりますし、この夏前ごろまでには答申を得たいものだと考えてお
ります。
その中では、特に教育委員会の学校への関与をできるだけ少なくすること、
これによりまして校長がリーダーシップを発揮できるよう学校運営の自主性を
確立することや、あるいは教育活動における地域住民との連携協力を強化する
こと、さらには主体的かつ積極的な地方教育行政が展開できるように文部省の
関与もできるだけ少なくしていく、こういう方向で改善を進めてまいりたいと
考えているところでございます。
子供の持ち物、服装につきましては、ただいま橋本総理が申し上げたのと私
は同じでございます。(拍手)
《省略》
(13/13)
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