Political Criminology

インターネットと法

 インターネットの普及で、コンピュータ・ネットワークも人々の身近なものになってきた。さまざまな人々が関われば、そこに他人の権利との出会いも生まれる。それが「ネットワークと法」の世界である。

 さまざまな技術革新が社会の制度に影響を与える。しかしその立場から考えても、インターネットの分野と法の世界との邂逅は、これまでにないインパクトを持ってたちあらわれてきたと言えるだろう。関係する法分野も、憲法から民事法や商法、刑事法、行政法、国際私法と多岐にわたっている。

 インターネットは、一般の市民に出版、放送の技術とツールを提供したとも言える。情報を操るという、これまでは一部の特権階級にしか許されていなかった分野に、一般の市民が自然体で参入しはじめたのだ。各個人が、その自由意思で情報を発信することを可能にする。メディアにおける民主主義の実現。それがインターネット社会が持つ肯定的な側面である。

 ところがその一方で、インターネットには多くの問題が潜んでいる。個人がぶつかるがゆえのプライバシー問題、ソフトウェアの権利、著作権、わいせつ情報をはじめとするサイトへのアクセス制限、あるいは政治的なサイトへのアクセス制限を課す国家。インターネットも一つの場だとして、その場をどのように既存の国家の枠組みで規制しようとするかを考えている国家と、個人の情報発信ツールを入手し個の解放へと向かおうとする動きとの相克。その一方で、災害時のボランティア活動の際に、威力を発揮したコンピュータ通信などによる市民運動の可能性。そして情報発信の速度に着目した、世界同時多発的な運動への可能性など。新しい場であるが故に、インターネットにはさまざまなイメージが集中している。

 また、インターネットのシステムを応用したエレクトロニック・コマース(電子商取引)が世界的に登場しつつあることも特徴だろう。学術目的や軍事目的などを中心に発達してきた電子ネットワークの世界だが、ここにきて市民運動とビジネスという、まったく性格の違う二つの新たな潮流が力を持ちはじめているのである。

 ここでは、インターネットと法をめぐる諸問題に光をあて、そこにあらわれたインターネット時代の新たな傾向と、可能性とを考えてみよう。

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    Criminological Theory Autopoiesis and Law
  1. インターネットと法
  2. マルチメディアと著作権
  3. インターネット上の著作物
  4. クラッカーの攻撃
  5. ハイパーリンクと取り締まり
  6. インターネットの表現の自由
  7. ネチケットというもの
  8. 暗号法制とエレクトロニック・コマース
  9. サイバースペースの権利

福富忠和さんとの共著「文化としてのマルチメディア論」(1998年)第6章。同年の聖マリアンナ医科大学のマルチメディア特別講座教材(非売品)。

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