日米物品役務相互提供協定
1996年4月15日締結
日本政府と米国政府は、自衛隊と米国軍隊との間における後方支援、物品または役
務の相互の提供に関する枠組みを設けることが、自衛隊と米国軍隊との間の緊密な協
力を促進し、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用に寄与することを認識し、こ
のような枠組みを設けることが、国連平和維持活動と人道的な国際救援活動において
自衛隊と米国軍隊がそれぞれの役割を一層効率的に果たしていくことを促進し、国連
を中心とした国際平和のための努力に積極的に奇与することを理解して、次のとおり
協定した。
第一条
(1)この協定において、「後方支援、物品または役務」とは、後方支援において
提供される物品または役務をいう。
(2)この協定は、共同訓練、国連平和維持活動または役務の自衛隊と米国軍隊と
の間における相互の提供に関する基本的な条件を定めることを目的とする。
(3)この協定は、相互主義の原則に基づく後方支援、物品または役務の提供のた
めの枠粗みについて定める。
(4)この協定に基づいて提供される後方支援、物品または役務の使用は、国連憲
章と両立するものでなければならない。
(5)この協定に基づく米国軍隊による後方支援、物品または役務の提供は、合衆
国法典第一〇編第一三八章により与えられた権限に基づいて行われる。
(6)この協定に基づいて行われる後方支援、物品または役務の要請、提供、受領、
決済については、自衛隊と米国軍隊が実施する。
第二条
(1)いずれか一方の政府が自衛隊と米国軍隊との間で実施する共同訓練のために
必要な後方支援、物品または役務の提供を他方の政府に対して要請する場合に
は、他方の政府は、その権限の範囲内で、要請された後方支援、物品または役
務を提供することができる。
(2)この協定に基づいて提供される後方支援、物品または役務は、次に掲げる区
分に係るものとする。食料、水、宿泊、輸送(空輸を合む)、燃料・油脂・潤
滑油、被服、通信、衛生業務、基地支援、保管、施設の利用、訓練業務、部品
・構成品、整傭、空港・港湾業務 それぞれの区分に係る後方支援、物品また
は役務については、付表=表=において定める。
(3)(2)の規定については、弾薬の提供が含まれるものと解してはならない。
第三条
(1)いずれか一方の政府が、自衛隊または米国軍隊による国連平和維持活動また
は人道的な国際救援活動の実施のために必要な後方支援、物品または役務の提
供を他方の政府に対して要請する場合には、他方の政府は、その権限の範囲内
で、要請された後方支援、物品または役務を提供することができる。
(2)前条の(2)および(3)の規定は、この条の規定に基づく後方支援、物品
または役務の提供に適用する。
(3)自衛隊が(1)の規定に基づいて米国軍隊により後方支援、物品または役務
の提供を要請される楊合には、自衛隊による米国軍隊に対する後方支援、物品
または役務の提供は、国連平和維持活動等に対する協力にに関する法律(一九
九二年法律第七九号)に従って行われるものと了解される。
第四条
(1)この協定に基づく物品の提供に係る決済の手続きは、次のとおりとする。
a 物品を受領した政府は、当該物品を提供した政府にとって満足の出来る状
態及び方法で当該物品を返還する。ただし、bの規定の適用を妨げるもので
はない。
b 提供された物品が消耗品である場合または受領国政府が当該物品を提供国
政府にとって満足のできる状態及び方法で返還することができない場合は、
受領国政府は、同種、同等および同量の物品を提供国政府にとって満足ので
きる状態および方法で返還する。ただし、cの規定の適用を妨げるものでは
ない。
c 受領国政府が提供された物品と同種、同等およおよび方法で返還すること
ができない場合は、受領国政府は、提供国政府の指定する通貨により償還す
る。
(2)この協定に基づく役務の提供に係る決済については、提供国政府の指定する
通貨により提供された役務を償還するかまたは同種であり、かつ、同等の価値
を有する役務を提供することによって決済する。決済の方法については、当該
役務が提供される前に両国政府の間で合意する。
(3)いずれの政府も、この協定に基づいて提供される役務に対して内国消費税を
課してはならない。
第五条
前条の(1)c及び(2)の規定に従って償還される物品または役務の価格は、
第七条に規定する手続き取り決めに定める関連規定に基づいて決定される。
第六条
この協定に基づいて提供される後方支援、物品または役務については、提供国政
府の書面による事前の同意を得ないで、一時的であれまたは永続的であれ、いかな
る手段によっても受領国政府の部隊以外の者に移転してはならない。
第七条
この協定に基づいて行われる後方支援、物品または役務の要請、提供、受領及び
決済の実施については、この協定に従属し、条件の補足的な細目および手続きであっ
てこの協定を実施するためのものを定める手続き取り決めにのみ従うものとする。
手続き取り決めは、両国政府の権限のある当局の間で締結される。
第八条
(1)この協定のいかなる規定も、日米地位協定に影響を及ぼすものではない。
(2)両国政府は、この協定の実施に関し相互に緊密に協議する。
(3)この協定および手続き取り決めの解釈または適用に関するいかなる事項も、
両国政府の間の協議によってのみ解決されるものとする。
第九条
(1)この協定は、米国政府が日本政府から日本がこの協定を承認した旨の書面に
よる通告を受領した日の後百二十日目の日に効力をを生ずる。この協定は、十
年間効力を有するものとし、その後は、いずれか一方の政府がそれぞれの十年
の期間が満了する六カ月以上前に他方の政府に対してこの協定を終了させる意
思を書面により通告しない限り、順次それぞれ十年の期間、自動的に効力を延
長されるものとする。
(2)(1)の規定にかかわらず、各政府は、他方の政府に対して一年前に書面に
より通告することによって、いつでもこの協定を終了させることができる。