<沖縄県第三準備書面> 第七 米軍基地問題に対する県の対応と二一世紀への展望
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一 米両国政府等に対する基地整理・縮小等の要請
被告知事は就任以来、人類が国境を越えて普遍的に共有しなければならない崇
高な願いである反戦・平和、反基地の願いを実現するため、基地問題の解決を県
政の最重要課題に位置づけ、来る二一世紀に向けて若い世代が夢と希望の抱ける
「基地のない平和な沖縄」をめざし、米軍基地の整理・縮小を促進している。
沖縄は、太平洋戦争・沖縄戦で「鉄の暴風」と形容される熾烈な、我が国唯一
の地上戦に巻き込まれ、二〇万人余の尊い生命とかけがえのない文化遺産、生産
施設、公共施設、住居や緑をことごとく失い、文字どおり焦土と化した。
県民一人一人は戦禍をとおして、戦争を憎み、平和を希求し、共に助けあって
生きるという「沖縄のこころ」を身をもって体験・体得した。そして、戦争の深
い反省に立って、改めて戦争の悲惨さと平和の尊さを正しく次の世代に伝え、軍
事基地をはじめ戦争に結びつく一切のものを拒否しなければならないとの決意を
新たにした。
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この県民の反戦・平和、反基地の願いは、県民の生活実感をとおして感得した
こころからの叫びであり、未来にわたって人間的生き方を求めてやまない切実な
願いなのである。
県民は二七年間も米国の統治下におかれ、平和憲法のもとに復帰して二三年余
を経た今もなお、広大で過密な米軍基地と隣り合わせの生活を余儀なくされその
重圧に苦悩している。
沖縄の米軍基地の存在は、県民みずからが進んで選択したものではない。米軍
の沖縄占領後に米軍の軍事力によって一方的に囲い込まれたものであり、また一
九五二年の対日平和条約の発効により占領状態が終了した後は、米軍統治下の布
令・布告により地主の同意をえずに、いわゆる銃剣とブルドーザーによって強権
的に接収され構築されてきたものである。軍用地として接収された土地は、その
大部分が農耕地や宅地であった。住民は残された荒蕪地に移住し、生活と生産の
場を求めざるを得なかった。
県民は、一九七二年の日本復帰に際して、米軍基地が大幅に整理縮小され、土
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地が自分の手に戻るものと期待したが、その期待は大きく裏切られた。
「本土並み」といわれながら、沖縄返還協定によりそのままの状態で日米安保
条約及び地位協定に基づく米軍基地として提供されたのである。
祖先崇拝の念の強い沖縄では、土地はたんに作物を作る土壌とか売買の対象と
なる物品ではない。祖先が残してくれたかけがえのない遺産であり、祖先と自分
を結びつけてくれる心の紐帯ー精神的な絆となるものである。
しかし、県民の強い願いにもかかわらず、日本復帰後一九九四年三月末までに
返還された米軍基地は、全面積のわずか一四・九パーセントにすぎない。この数
字は、日本本土での返還率五九・一パーセントに比べあまりにも少ない。
地位協定二条は、日米安保条約に基づき日本国内のどこでも基地を置くことが
許される旨規定している。このいわゆる全土基地方式は、沖縄を標的とし、沖縄
に基地を置くことに限定しているわけではない。
このように全土基地方式でありながら、国土面積の〇・六パーセントにすぎな
い沖縄だけに、在日米軍専用施設の七五パーセントが集中しているというのが現
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実なのである。「日米安保条約が重要というのであれば、全国で全国民が等しく
その責任と負担を負うべきではないのか。なぜ、沖縄だけに過重な負担を押しつ
けるのか」、と県民は心の底から訴えている。
米軍基地は、戦後五〇年を経ても相も変わらず、沖縄本島の約二〇%を占め、
とりわけ人口や産業が集積している沖縄本島中南部地域に集中し、計画的な都市
づくりや道路網の整備、産業用地の確保など沖縄の振興開発を進めるうえで大き
な制約となっている。
また、水域二九箇所・空域一五箇所にも米軍の管理権が設定されており、産業
振興を図るための埋立計画や民間航空路の円滑な運用に支障をきたしている。
たとえば、那覇港湾施設内の自由貿易地域の場合、入居企業の事業を拡大し、
新規企業を導入し、その活性化を図ろうにも、面積が狭あいのためそれができな
い状況にある。埋立などによって水域を活用し、拡充する途があるのであるが、
米軍の訓練のための水域であるため、それができない。あるいは、今後建設を計
画している伊平屋空港の場合、その空路が伊江島訓練空域と重なるため、円滑な
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運行の確保に支障をきたすことが懸念されている。
さらに、住民地域と隣接する嘉手納飛行場や普天間飛行場から発生する騒音は、
地域住民の日常生活や教育環境にも悪影響を与え、県道一〇四号線越え実弾砲撃
演習による着弾地周辺の環境破壊は看過できない状況にある。
そればかりでなく、米軍基地に起因する水質汚濁や土壌汚染などの環境破壊、
米軍人軍属による事件、航空機墜落等の事故は跡を絶たない。
特に、市街地の中央部に位置する普天間飛行場では、一九七二年の日本復帰以
来、これまで五五件もの不時着や墜落等の事故が起こっており、存在そのものの
危険性が強く指摘されている。
キャンプハンセン演習場では、県道一〇四号線を封鎖し、同県道越え実弾砲撃
演習が実施されているが、一九九一年から一九九四年までの四年間だけでも約2
0,000発が恩納連山に打ち込まれている。この演習は、狭い地域で、しかも
住宅や学校、病院などが近接しているため極めて危険である。
読谷補助飛行場ではパラシュート降下訓練が行われているが、施設周辺の民間
地域に訓練兵が降下するなどの事故が一九五〇年八月の訓練開始以来一九九五年
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一一月末までに二九件も発生している。
沖縄県は、事件・事故が起こるたびに、再発防止や隊員の網紀粛正を申し入れ
ているがいっこうに改善されていない。
米軍基地に対する県民の意識は、沖縄タイムスと朝日新聞が実施した調査によ
ると、一九八七年九月の調査では「整理・縮小」五四パーセント、「撤去」二七
パーセント、一九九二年四月の調査では「整理・縮小」六五パーセント「撤去」
二一パーセント、昨年一〇月の調査では「整理・縮小」七二パーセント、「撤去」
二〇パーセントとなっている。県民の大多数は、米軍基地の「整理・縮小・撤去」
を強く望んでいる。
沖縄県はこのような沖縄が置かれている厳しい状況と県民の意向を踏まえ、県
民の基本的人権や生命、財産を守り、沖縄の地域特性を活かした振興開発により
自立的発展を図るため、これまで六回(うち四回は大田知事)の訪米をはじめ、
機会あるごとに日本政府、米国政府・連邦議会・軍関係者に直接米軍基地の整理・
縮小などを繰り返し訴えてきた。沖縄県が一九七二年の日本復帰以降日米両国政
府等に対し行った要請等は、実に四三八回(うち大田県政一九八回)をかぞえ、
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沖縄県議会の行った決議等も一二六回に及んでいる。
ちなみに、昨年の訪米要請内容等は以下のとおりである。
日程 一九九五年五月一七日〜六月二日
構成員 県 知事、県議会議員(一人)ほか
市町村 恩納村長、金武町長、読谷村長・議会議長、
宜野湾市長、嘉手納町長、北中城村長、
那覇市議会議員(一人)ほか
マスコミ関係 四人(地元紙二人)
要請先 国務省、国防省、連邦議会、その他
要請内容 一 重要三事案について
(1) 那覇港湾施設の返還
(2) 読谷補助飛行場におけるパラシュート降下訓練の廃止及び
同施設の返還
(3) 県道一〇四号線越え実弾砲撃演習の廃止
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二 普天間飛行場の返還について
三 一部水域、空域の返還及び縮小について
四 米軍施設・区域の返還等について
(1) 奧間レストセンターの返還
(2) キャンプ桑江・北側の一部返還
(3) キヤンプ瑞慶覧の一部(泡瀬ゴルフ場)の返還
(4) 金武ブルービーチ訓練場及びギンバル訓練場の返還
(5) 嘉手納飛行場及び嘉手納弾薬庫地区内道路の共同使用
五 諸問題の解決について
(1) 嘉手納飛行場及び普天間飛行場周辺における航空機騒音の
軽減
(2) 事故の未然防止と安全管理の徹底
(3) 基地内における環境汚染等の防止対策の強化
(4) 実弾砲撃・射撃演習に伴う不発弾の処理
六 米軍人による地域住民の殺傷・暴行事件等の防止を図るため、
隊員の教育及び綱紀の粛正の徹底
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また、沖縄県は、米軍提供施設等が所在する一四都道県で構成する「渉外関係
主要都道県知事連絡協議会」を通じて、米軍基地の整理・縮小、事件・事故の未
然防止などその解決促進を政府関係省庁に強く要望している。さらに、米軍基地
から派生する諸問題のうち、現地レベルで解決可能なものは、三者連絡協議会
(知事、那覇防衛施設局長、在沖米軍四軍調整官、各軍司令官、オブザーバーと
して在沖米国総領事で構成)の場において、早期解決を図るよう強く働きかけて
きた。そして、一九九三年度からは新しい試みとして米国のワシントンポスト紙、
ニューヨークタイムズ紙などに沖縄の米軍基地の現状等を紹介し、マスコミを通
じて広く米国民に対し、沖縄の基地問題への理解を深めてきている。
昨年、沖縄の米軍基地の整理・縮小などを促進するため、日米両国間に「沖縄
における施設及び区域に関する特別行動委員会」が設置され、また国と県で構成
する「沖縄米軍基地問題協議会」が設置されるなど、明るいきざしもみえる。し
かし、戦後五〇年の節目に県民の目に見える形での解決を目指し、一九九四年の
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訪米の時米国政府・連邦議会に要請したいわゆる三事案のうち、那覇港湾施設の
返還と読谷補助飛行場におけるパラシュート降下訓練の廃止及び同飛行場の返還
については、日本政府から県内移設による解決案が提示されたが、移設先の地元
自治体や地域住民の反対が根強く、その解決は未だ見通しが立っていない。また、
残る県道一〇四号線越え実弾砲撃演習の廃止についても、その全面廃止の見通し
が立たない実情である。
日米両国政府は、基地問題解決については「国家間で協議すべき問題」である
との認識を示し、日米安保条約の重要性は強調するものの、基地の整理・縮小は
もちろん、基地から派生する航空機騒音の軽減や事件・事故の再発防止などに向
けた取組みが弱く、県民の納得が十分に得られるような改善の跡が見られない。
二 二一世紀への展望と行動───国際都市を目指して
1 国際環境変化の中の沖縄の位置と期待される役割
沖縄は、日本の最南端・最西端に位置し、東西約一、〇〇〇キロメートル、
南北約四〇〇キロメートルの海域に広がる、五〇の有人島を含む一六〇の島々
からなる。
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県都那覇市を中心に半径約三、〇〇〇キロメートルの円を描くと、その内側
には東京をはじめ北京、ソウル、上海、台北、マニラ等の主要な都市がすっぽ
り納まる。
沖縄の先人たちは、一四世紀から一六世紀にかけて、このような地理的特性
を活かし、「平和愛好の民」としてこれらの国々と盛んに友好的な交易を行い、
独自の文化を有する琉球王国を築き上げた。
沖縄の将来像は、このような先人たちの歴史的蓄積を抜きにしては語れない。
近年、アジア各地には、新たな経済圏が台頭してきている。
この経済圏の中には、中国とアジアNIESが結び付いたもので香港と広東
省が一体化した香港・広東経済圏がある。また、台湾海峡と福建省とで構成さ
れる両岸経済圏も著しい発展が見られ、これらの経済圏はいわゆる華南経済圏
へと発展している。沖縄の身近にはこのように無尽蔵と見られる文化経済交流
圏が存在している。
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沖縄は、中国、韓国等の東アジア、フィリピン、タイ等の東南アジアと日本
本土との結節点に位置し、我が国の中でもこれらの国々と豊富で最も長い国際
交流の歴史を有している。加えて、我が国で唯一、亜熱帯性気候に属し最も
「アジア的」な文化が根付いており、また、県民性でも平和を希求し共に助け
合う「共生」のこころが強いことなど、アジアと日本との国際交流・協力を深
める上で必須の条件を備えている。
このような中で、今後、沖縄がその歴史的蓄積と地理的特性などを活かした
期待される役割は、アジアの国々と我が国の多面的な交流の「架け橋」として
(1)経済・文化交流、 (2)平和貢献、 (3)国際技術協力の三つの視点から国際
的な貢献を行い、アジア太平洋地域の平和と安定に寄与することである。
2 国際都市形成整備構想
(一) 構想の背景
第四次全国総合開発計画(以下、四全総という)は、その第X章第2ブロッ
ク別整備の基本方向において、(一〇)沖縄地方整備の基本方向として「・
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・・東南アジアをはじめとする諸外国との交流拠点の形成」等によって、地
域特性を活かした沖縄の自立的発展を図ると位置付けている。
この四全総を上位計画として一九九二年九月に、国において策定された第
三次沖縄振興開発計画は、第一次、第二次の計画の基本目標であった「本土
との格差是正」と「自立的発展の基礎条件の整備」に加え、新たに「広く我
が国の経済社会及び文化の発展に寄与する特色ある地域」づくりを掲げてい
る。
そして、その具体的方向として振興開発の基本方向や部門別の推進方針の
中で、四全総で位置付けられた「南の国際交流拠点の形成」を強く打ち出し
ている。さらに第四章「圏域別開発の方向」では、一〇〇万人余の人口を有
し、産業が集積する中南部都市圏の開発の方向として「沖縄の中核都市及び
特色ある歴史文化を反映した個性豊かな国際都市として整備するため、国際
交流、情報、研究開発等高次の都市機能の集積を図るとともに、県内、県外
及び外国との有機的な結合と円滑な交流を促進し、我が国の南における交流
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拠点の形成を図る」としている。
沖縄県では、平成四年度から「国際都市形成整備構想調査」を実施し、平
成六年度には「亜熱帯交流圏における国際貢献拠点地域形成調査」を実施し
たほか、国際的ハブ機能の導入をめざした「那覇空港国際機能等整備拡充調
査」、都市モノレール建設と連動してその周辺整備をめざした「国際都市モ
ノレール地区形成調査」を実施している。
このような第三次沖縄振興開発計画や各種の調査を踏まえ、我が国を取り
巻く国際化の時代の潮流のなかで、二一世紀に向けて沖縄が進むべき道を模
索してきた中から生まれてきたのが、「国際都市形成整備構想」である。
国際都市形成整備構想は、これまでの戦後五〇年にわたる極東アジアの軍
事拠点としての沖縄から、平和の研究や情報の発信拠点、国際的な学術研究・
会議の拠点、地球環境等の技術協力の拠点、NGO等の活動拠点など国際的
な貢献拠点へと方向転換を図り、二一世紀の成長センターといわれているア
ジアの国々と我が国の″架け橋″となることをめざしている。
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(二) 国際都市像と基本方針
国際都市形成整備構想は、「経済・文化交流」、「平和貢献」、「国際技
術協力」を軸として、二一世紀に向けた沖縄の振興開発のあるべき姿ー国際
都市像を具体的に示したグランドデザインである。
この国際都市像を実現するため、以下の七つの基本方針を設定している。
(1) 基本方針1ー南北交流拠点としての「場」の形成
これを実現するためのプロジェクトとしては、迎賓館の設置、国際機関の
誘致、国際協力のための基幹的施設・機関の誘致、国際的物流機能・国際交
易機能の整備、人材・組織の育成と活用等である。
(2) 基本方針2ー我が国の「南の地域連携軸」の形成
沖縄は、アジアと日本本土との結節点としての位置にあることから、交流
拠点としての役割を果たすと同時に、従来の境界を越えて連携・発展してい
くため、これまで以上に地域連携を強化する。
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(3) 基本方針3ー環境共生モデル地域の形成とアジアへの環境情報の発信
地球環境問題が深刻化する中で、地域開発においても環境との共生が大き
なテーマである。
沖縄では、我が国唯一の亜熱帯気候の自然環境を活かし、バイオ技術や農
業技術の面で独自の環境共生型の研究開発が進められている。これは、今後
大きな問題となるであろう発展途上国における、環境共生型の地域開発の一
つのモデルとして注目される。
沖縄が生み出した地域開発の考え方や手法を世界に向けて発信する。
(4) 基本方針4ー「国際保養リゾート」の形成と国際会議の誘致
本格的な高齢化社会、余暇社会の到来を前にして、「健康」「ゆとり」を
一層重視した新しい観光・保養ニーズが高まってきている。
地域に根付いた魅力ある国際健康保養リゾート地域の形成を図り、地域の
ニーズに沿った自立型地域振興をめざす。
(5) 基本方針5ー開発拠点地域の設定と基幹的インフラの戦略的整備
国際都市形成のための拠点整備地域を設定し、那覇空港や都市モノレール
などの基幹的な都市基盤を重要プロジェクトとして国際都市にふさわしく整
備促進する。
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(6) 基本方針6ー各地域の機能分担による質の高い潤いに満ちた生活空間の形成
世界各国からの訪問客、滞在者を受け入れるため、魅力のある顔づくりと
都市生活機能の質的向上と併せて、沖縄らしさを積極的に保全し、あるいは
作り出す。
(7) 基本方針7ー地域の自主主体性を尊重した新たな行政体制等の確立
国際都市形成の推進には、地域の独自性、地域アイデンティティの確立が
不可欠である。
地方分権は時代の潮流であり、「地方公共団体の自主性及び自立性を高め、
個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ること」として、平成七年五月
には『地方分権推進法』が制定されたところである。
沖縄の地理的、歴史的、文化的特性を活かした我が国の「南の交流拠点」
を形成するためにも、今後、さらに地方分権を進め、新たな時代に即応した
行政体制等を確立する。
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以上の基本方針を踏まえ、「国際都市」形成を具体的に整備するため、付図
1に示すように、以下のような拠点を設定する。
(1) 国際交通・物流ネットワーク拠点
航空拠点地区、港湾拠点地区、拡大自由貿易地区
(2) 国際協力交流拠点
国際学園都市、外交都市、コンベンションシティ
(3) 国際エアロネットワーク拠点
(4) 国際ビジネス拠点
(5) 国際平和交流拠点
平和創造の杜構想
(6) 国際ヘルシーリゾート開発拠点
(7) 国際産業技術研究開発拠点
国際技術開発支援地区、
(8) 国際亜熱帯農業・水産技術研究開発拠点
先端農業開発地区
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(9) 国際学術交流拠点
(10) 国際リゾート開発拠点
(11) 国際亜熱帯自然環境保全・技術開発交流拠点
(12) 亜熱帯森林修復技術研究開発拠点
三 国際都市形成へ向けた基地返還アクションプログラム
1 国際都市形成と米軍基地
国際都市形成整備構想は、基地のない平和な沖縄をめざす県民の壮大なロマ
ンであり、目標であり、二一世紀に向けて沖縄が進むべき方向を提示した振興
開発のグランドデザインである。
しかし、沖縄本島はその約二〇パーセントが米軍基地で占められている。
都市機能の基盤となる道路などを整備し、緑あふれるまちづくりを進め、新
たな産業を興し、雇用問題の解決を図ろうにも、米軍基地は県民の前に大きな
壁となって立ちはだかっている。
特に、人口や産業が集積している中南部地域は、広大で過密な米軍基地の重
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圧に呻吟している。中でも嘉手納町は町面積の実に八三%が米軍基地であり、
北谷町は五七%、読谷村は四七%、沖縄市は三七%、宜野湾市は三三%である。
この五市町村を平均すると、なんと五一%が米軍基地に占められている。中南
部地域では米軍基地の広大・過密さゆえに、多くの自然緑地帯が失われ、新た
な産業用地は、海面を埋め立てることによりつくり出さざるを得ない状況にあ
り、沖縄の重要な環境資源である水際線の崩壊など海洋環境の改変を引きおこ
している。また、都市の中心に米軍基地が位置している所もあり、都市の連担
化を阻害し、さらには交通網のロスを生んでいる。日本本土の他都道府県では
とうてい考えられない厳しい沖縄の現実である。
沖縄本島中南部地域は、県都那覇市の都市圏の拡大に伴って、糸満市から石
川市までの約五〇キロメートルにわたる都市圏を形成しつつある。
中南部地域の市街地は、戦後、米軍基地の構築のため土地を接収され、追い
出された行き場のない住民がやむなく米軍基地を取り巻く形で、限られた地域
に集中して形成されてきたものである。これらの米軍基地の位置は、地形や交
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通など最高の条件の地にあり、都市開発の潜在的可能性が極めて高い地域であ
る。人間のからだにたとえて言えば背骨の位置にあり、都市形成を図るうえで
大きな制約・障害となっている。
2 基地返還アクションプログラム
沖縄を国際都市として、我が国の南の国際交流拠点として形成するには、必
要な諸機能をそれぞれにふさわしい拠点に適正に配置し、都市基盤の整備を通
じた相互の有機的連携によって効率的で均整のとれた、環境と共生した新しい
都市圏をつくらなければならない。
そのためには、付図2に示すように、中南部地域に広大な面積を有する米軍
基地はもとより、沖縄の米軍基地を整理・縮小、撤去し、その平和転用を図る
必要がある。
基地返還アクションプログラムは、このような国際都市形成整備構想の進捗
と、これまでの返還要望の実情、市町村の跡地利用計画の熟度、市町村の意向
等を勘案しながら、同構想の実現目標年次である二〇一五年を目途に、日本政
府に対し、米軍基地の計画的かつ段階的返還を県民の目に見える形で求める沖
縄県の行動計画である。
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基地返還アクションプログラムは、沖縄県に存在するすべての米軍基地(四
〇箇所)を対象とし、国際都市形成整備構想における優先度、緊急度に応じて、
付図3に示すように、返還目標期間を第T期から第V期の三段階に区分し、当
該期間内で跡地利用計画に基づく事業着手のめど付けができるよう返還を求め
るものである。各期間設定の考え方、対象となる施設・区域、国際都市形成整
備構想における位置づけは以下のとおりである。
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第I期
第三次沖縄振興開発計画が終了する二〇〇一年を目途に、早期に返還を
求め、整備を図る必要があるもの。
│那覇港湾施設 │国際交通・物流ネットワーク拠点 │
│ │国際ビジネス拠点 │
│普天間飛行場 │国際協力交流拠点 │
│工兵隊事務所 │ │
│キャンプ桑江(一部) │国際エアロネットワーク拠点 │
│知花サイト │ │
│読谷補助飛行場 │国際亜熱帯農業・水産技術研究開発拠点│
│天願浅橋 │ │
│ギンバル訓練場 │国際リゾート開発拠点 │
│金武ブルービーチ訓練場 │ │
│奧間レストセンター │ │
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第II期
第四次全国総合開発計画後の第五次計画の終期が二〇一〇年と想定され
ることから、それまでに返還を求め、整備を図る必要があるもの。
│牧港補給地区 │国際交通・物流ネットワーク拠点 │
│キャンプ瑞慶覧 │国際協力交流拠点 │
│キャンプ桑江 │ │
│泡瀬通信施設 │国際産業技術研究開発拠点 │
│楚辺通信所 │ │
│トリイ通信施設 │亜熱帯農業・水産技術研究開発拠点 │
│瀬名波通信施設 │ │
│辺野古弾薬庫 │国際学術交流拠点 │
│慶佐次通信所 │ │
│キャンプコートニー │ │
│キャンプ・マクトリアス │国際リゾート開発拠点 │
│八重岳通信所 │ │
│安波訓練場 │国際亜熱帯自然環境保全・技術開発交流│
│北部訓練場 │拠点 │
---------- 改ページ--------282,283
第III期
国際都市形成整備構想の最終年次である二〇一五年までに返還を求め、
整備を図る必要があるもの。
│嘉手納飛行場 │ │
│嘉手納弾薬庫地区 │国際エアロネットワーク拠点 │
│キャンプ・シールズ │ │
│陸軍貯油施設 │ │
│キャンプ・シュワブ │国際学術交流拠点 │
│ │亜熱帯森林修復技術研究開発拠点 │
│キャンプ・ハンセン │亜熱帯森林修復技術研究開発拠点 │
│ │国際リゾート開発拠点 │
│伊江島補助飛行場 │ │
│金武レッドビーチ訓練場 │ │
│ホワイトビーチ地区 │国際リゾート開発拠点 │
│浮原島訓練場 │ │
│津堅島訓練場 │ │
│鳥島射爆撃場 │ │
│他五射爆撃場 │ │
---------- 改ページ--------284end(空白)
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付図−1 沖縄国際都市形成マスタープラン(素案)
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付図−2 沖縄国際都市形成マスタープラン(素案)と駐留軍用地
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