【必見】従軍慰安婦教科書問題討論資料(1)

 県議会での慰安婦問題について、新潟・岡山のほかに、鹿児島・長崎・茨城で同様
の動きがあるようです。
 新潟ではとえりあえず見送りの方向ですが、2月県議会で再浮上します。

 前回お知らせした、私たちが議会対策用に作成した資料を掲載します。このamlで
おなじみの半月城さんにも目を通していただきましたが、「かなりよく推敲されてい
て、論理展開が明瞭で説得力があ」ると評価いただきました。

 前回でも書いたとおり、自民党を説得する、あるいはこちら側が協力を要請する「
革新系」に大義を確信してもらうためには、事実関係の厳正な分析と、政府・国連機
関などの公式見解などを動員して作成された資料が必要だと思い、作成しました。新
潟では議会内外でこれが重要な武器となりました。
 慰安婦の方々の痛苦な証言だけでなく、日本に残された文書資料や国連資料などに
よってでも、彼らの理論を切り崩すことができるのだということにも確信を持つべき
です。

 作成に当たり、半月城さん、戦争責任資料センターの上杉さんに御協力いただきま
した。

 主要には新潟への陳情に対する討論資料として作成されたものなので、他の地域で
は不十分なものかもしれませんが、加工・加筆して今後活用できると思います。
 とりあえずメールで掲載しますが、改行位置などが崩れる場合があります。Macで
ワークスかNisusというワープロを御使用であれば、Eudraの「書類の添付」機能を使
ってテキストだけでなく書類ファイルとして送ることもできます。郵送も可能です(
その際は実費カンパ願います。A4で8枚くらい)。

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「従軍慰安婦問題」に関する論争点をめぐる討論資料

※この資料は、96年12月新潟県議会に提出された「中学校歴史教科書の訂正について
の意見書提出に関する請願」について討論するために私たちが作成した資料で、12月
13日、議会内各党会派に配布した。再緑するにあたり若干の省略と加筆をおこなった。

                        1996.12.      市民新党
にいがた

1.「従軍慰安婦問題」の事実関係と「強制性」に関する日本政府及び国際機関の見解
■政府の見解
 すでに従軍慰安婦の存在、当時の軍や政府の関与については自民党単独政権の時か
ら既に公式に認めており、自民党の地方組織がこうした見地に異論を唱えるとは理解
しがたい。事実関係の発覚と政府見解の経緯は以下に示すとおりである。
●92年1月11日、防衛庁所蔵資料の中から吉見・中央大教授が慰安婦関係資料を発見。
●翌12日には当時の加藤紘一官房長官が日本軍の関与を正式に認め、13日には謝罪の
談話を発表。また訪韓した当時の宮沢喜一首相は17日、日韓首脳会談で公式に謝罪。
●政府は慰安婦問題について調査を進め、その結果を同年7月6日発表した。報告書は
慰安所の設置や経営・監督、慰安所関係者への身分証明所の発給などの点で、軍隊の
みならず「政府が直接関与」していたことを初めて公式に認めた。
●この調査資料は防衛庁、外務、厚生省などから127件も集めらた。その公表資料は
次のような内容を含んでいる。
(1)軍占領地で「日本軍人が住民の女性を強姦するなどして反日感情が高まってい
るため慰安施設を整備する必要がある」という内容の軍の指令。
(2)軍の威信を保持するため、慰安婦の募集にあたる人の人選を適切に行うよう求
める指令。
(3)慰安施設の築造、増強のために兵員の提供をもとめる命令。
(4)部隊ごとの慰安所の利用日時の指定、料金のほか、軍医の慰安婦に対する定期
的な性病検査を定めた「慰安所規定」
(5)慰安所解説のための渡航には、軍の証明書が必要とする指示。
●同じ日、当時の加藤官房長官は記者会見で、韓国を始め中国、台湾、フィリピン出
身などの元慰安婦に対する日本政府としての謝罪の意を次のように表明。
 「政府としては、国籍、出身地を問わず、いわゆる従軍慰安婦として筆舌に尽くし
がたい辛苦をなめられた方々に対し、改めて衷心よりおわびと反省の気持ちを申し上
げたい。このような過ちを決して繰り返してはならないという深い反省と決意の下に
たって、平和国家としての立場を堅持するとともに、未来に向けて新しい日韓関係お
よびその他のアジア諸国、地域との関係を構築すべく努力していきたい。
 この問題については、いろいろな方々の話を聞くにつけ、誠に心の痛む思いがする
。このような辛酸をなめられた方々に対し、われわれの気持ちをいかなる形で表すこ
とができるのか、各方面の意見を聞きながら誠意を持って検討していきたい。」
●日本政府は7月26日、ソウルで元慰安婦16人から聞き取り調査を始めた。そして報
告書で「慰安婦強制」を認め謝罪。報告書は宮沢内閣退陣の前日、すなわち92年8月4
日に発表。そのなかの「慰安婦の募集」の項では「斡旋業者らがあるいは甘言を弄し
、あるいは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが多く、さらに
官憲等が直接これに荷担する等のケースもみられた」と強制連行を明確に認めている
のである。
●さらに、この報告書に付け加える形で河野洋平官房長官が談話を発表し、慰安婦の
募集や移送、管理などが、甘言、弾圧によるなど「総じて本人たちの意志に反して行
われた」と述べて、募集だけでなく全般的に「強制」があったことを認めた。そして
「心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気
持ちを申し上げる」と、日本政府として改めて謝罪した。さらに「このような歴史の
真実を回避することなく、歴史の教訓として直視していきたい」と述べ、歴史教育な
どを通じて「永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と決意を表明した。
●96年10月第1次橋本政権の見解 
「いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深
く傷つけた問題でございました。私は、日本国の内閣総理大臣として改めて、いわゆ
る従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒(いや)しがたい傷を負
われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを申し上げます。
 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。わが
国としては、道義的な責任を痛感しつつ、おわびと反省の気持ちを踏まえ、過去の歴
史を直視し、正しくこれを後世に伝えるとともに、いわれなき暴力など女性の名誉と
尊厳に関わる諸問題にも積極的に取り組んでいかなければならないと考えております。」
 (1996.10. 「従軍慰安婦」への「おわび」の手紙、橋本首相)
●小杉隆現文部大臣の態度
 現文部大臣の小杉隆氏は、就任時の記者会見で、来春から中学校の教科書に登場す
る従軍慰安婦の記述について、アジア諸国に対する日本の侵略行為などを謝罪した昨
年八月の村山富市首相(当時)の談話に「全く賛成だ」とした上で「率直に事実は事
実として載せる教科書検定調査審議会の判断を支持する」と述べている。
 また、同様の主旨で国会でも答弁しいている(96年11月)。

 今回自民党が採択の方向で検討している「陳情」は、こうした日本政府及び自民党
の歴代幹部・党首などの公式見解、現内閣の文部大臣の姿勢にも真っ向から敵対する
ものである。

■国連による調査と見解・評価
●国連はすでに92年に日本政府から「従軍慰安婦」に関する資料を入手して検討を始
め、国際法に関する論議なども人権委員会で論議してきた。同委員会は早くから慰安
婦の問題について関心を寄せ、日本政府が初めて公式に謝罪した翌月(92年8月)に
は、差別小委(差別防止及び少数者保護小委)で特別報告官が「日本政府に資料提出
を求める」など本格的な調査を開始している。この委員会は、90年に予備報告、91年
と92年に中間報告、93年に最終報告をおこなった。その中で、特に従軍慰安婦などの
ように国際的に違法だと認識されている人権侵害は個人に国家賠償を請求する権利が
あり、加害国はこうした行為を行った責任者を処罰し被害者を救済する義務があると
結論づけている。
 ※加害国の救済に関して言えば、アメリカは過去、戦時中に強制収容した日系人に
対し大統領が謝罪し、一人あたり2万ドルの謝罪金を支払ったのは記憶に新しいとこ
ろである。
●同人県委員会差別小委ではこの報告をさらに深めるために、旧日本軍による従軍慰
安婦・強制労働問題などの人権侵害を調査する「特別報告官」の設置を決めた。
●こうした調査と討論の結果、日本軍の慰安所は国際法違反であるとするIFOR(国際
的な人権擁護組織)の提案が採択され、正式な国連文書として配布されている。つま
りこの時点で、日本軍の慰安所は国際法違反であるという、国連の正式な認識がすで
に成り立っているのである。
※IFORの提案は、(1)従軍慰安婦問題は、時効による免責規定がない国際条約「強
制労働に関する条約」(日本の批准は1932年)などに明確に違反する。(2)日
本は批准後、条約の精神を具体化する法整備を怠っている。(3)過去にさかのぼっ
て責任者の処罰をおこなうための立法化を進める義務がある。とする内容を含んでい
る。ちなみに、近代法では「法の不可遡及」、すなわち法律成立以前の行為について
は責任を問われないというのが原則である。しかし、にもかかわらず、責任者処罰は
先進諸国では国際的な流れになっている。過去の戦争犯罪者を裁けるように、ドイツ
では79年に、カナダでは87年、オーストラリアでは88年、イギリスでは91年に国内法
の整備をし、時効を停止するなどして戦犯を裁いてきた。
●クマラスワミ報告調査
 この問題はその後「女性に対する暴力問題」特別報告官のクマラスワミ氏に引き継
がれた。クマラスワミ氏はスリランカの民族学研究国際センター所長としてアジア地
域の女性問題に取り組んできた女性法学者だが、94年4月に特別報告官に任命された。
 クマラスワミ氏はこうした「国際的な認識」を基本に、各国政府やNGOから得た
資料を検討し、予備報告書を人権委員会に提出した。その予備報告書の中では慰安婦
問題を「犯罪」と認定する立場を明らかにした。なお、クマラスワミ氏は「国連調査
団」として同年7月に日本を訪問しているが、国連調査団が日本を訪れたのは旧国際
連盟が「満州国」問題で派遣したリットン調査団以来のできごとである。 こうして
アジア各国での調査をもとに、96年3月、最終報告書が人権委に提出された。なおク
マラスワミ報告が短期間の調査に基づく、信憑性のないものとする批判があるが、こ
うした経緯からわかるように同報告はそれまでの数年間に及ぶ一連の人権委員会の調
査の成果を引き継ぎそれを深化させるものとなっていることに留意すべきである。
 調査は日本政府からも資料の提出を受け、慰安婦からの聞き取り調査も行なわれた
。そしてまず調査団から見た日本政府の見解を、以下のように評している−「・・・
日本政府が我々に渡した文書には、いわゆる『慰安婦』問題について道義的責任を受
諾する声明や呼びかけ文が含まれている。河野洋平官房長官による1993年8月4日付談
話は、慰安所の存在及び慰安所の設置・運営に旧日本軍が直接・間接に関与したこと
、及び募集が私人によってなされた場合でも、それは軍の要請を受けてなされたこと
を受諾した。談話はさらに、多くの場合『慰安婦』は、その意思に反して集められた
こと、及び慰安所における生活は『強制的な状況』の下での痛ましいものであったこ
とを承認した」。また、こうした政府の見解や資料と慰安婦の証言との関係・符号性
についても、証言が「性奴隷制が軍司令部および政府の命令で組織的方法で日本帝国
軍隊により開設され厳重に統制されていたことを信じさせるに至った文書情報と符合
している」としてその信憑性を示している。
 この報告では、第二次大戦中、旧日本軍が朝鮮半島出身者などに強制した従軍慰安
婦は「性奴隷」であると定義し、奴隷の移送は非人道的行為であり、さらに「慰安婦
の場合の女性や少女の誘拐、組織的強姦は、明らかに一般市民に対する人道に対する
罪にあたる」と断定した。
 その上で、従軍慰安婦問題を現代にも通じる女性に対する暴力の問題とする観点か
ら、次の六項目を日本政府へ「勧告」した。
 (1)日本帝国陸軍が作った慰安所制度は国際法に違反する。日本政府はその法的責
任を認める。
 (2)日本の性奴隷にされた被害者個々人に補償金を支払う。
 (3)慰安所とそれに関連する活動について、すべての資料の公開をする。
 (4)被害者の女性個々人に対して、公開の書面による謝罪をする。
 (5)教育の場でこの問題の理解を深める。
 (6)慰安婦の募集と慰安所の設置に当たった犯罪者の追及を可能な限り行う。

 オランダを始めとする諸外国はこの報告書を高く評価したが、日本政府はこの報告
内容に抵抗した。しかし当初は膨大な反論資料を作成し各国に配布したものの、むし
ろ反発を招き撤回した。この報告に対し日本政府は未だに「事実関係については留保
」という態度を示し個人補償などの必要性を認めていない。補償問題は今回の議論に
はなっていないのでおいておくが、日本政府自身、この報告を「留意する(teke not
e)」という決議に賛成していることを無視すべきでなく、なによりこれが国際的な公
式評価であることを忘れてはならない。

 国連で安保理非常任理事国に選出された日本は特に国連機関の決議を尊重すべきで
ある。なかんずく人権委員会は「国連精神」具現の一つの場として国連機関の中で特
に重要な存在である。我々は−特に公党や公の議会関係者は−その機関の決議や公式
見解を軽んじるべきではない。