憲法9条は「変えるべきでない」が62% |
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毎日新聞の世論調査結果 自民党・財界が進める憲法「改正」は世論に逆行している! |
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この記事はピース・ニュースでの議論によりまとめたものです |
毎日新聞が9月初めに実施した世論調査結果によれば、憲法9条について「変えるべきでない」と答えた人が62%で「変えるべきだ」の30%の2倍に達している。 改憲派の狙いは世論と対立している この世論調査の結果は、9条改悪への国民の抵抗感を改めて明にした。一方で憲法「改正」に「賛成」と回答した人は58%、「反対」が34%である。しかし、その中身を見てみると、憲法「改正」に「賛成」した人の「賛成」理由は、「今の憲法が時代に合っていないから」が56%で圧倒的に多く、改憲派がしばしば主張する「米国から押しつけられたものだから」、「自衛隊の活動と憲法9条にかい離があるから」は、それぞれ10%と9%と国民の多数意見ではないことも明らかにした。 また、憲法「改正」に「賛成」と回答した人に、どのように改めるべきかという質問では、「集団的自衛権を行使できるようにする」、「国民の新たな義務を盛り込む」、「憲法改正の要件を緩和する」など改憲派がもくろむ憲法改悪の狙いについてはいずれも10%台前半であり、国民はそのようなものは求めていないことが明らかにされた。 ここから浮き彫りにされるのは、マスコミや改憲派によって煽られている「改憲ムード」によりなんとなく「賛成」の雰囲気も強いが、一方で現憲法が果たしている先進的な役割については国民にしっかり根付いているということではないだろうか。 財界・自民党の狙い目は9条改悪と憲法改正要件の緩和 財界、自民党の憲法「改正」の大きな狙い目は、憲法9条と憲法改正要件の緩和にある。 経団連は2005年1月に発表した「わが国の基本問題を考える」という文書で、@憲法九条二項の改正による自衛隊保持の明確化、集団的自衛権の明示、A九六条の憲法改正用件の緩和を「当面、最も求められる改正」として最初に着手すべき、としてその立場を明らかにした。 10月29日に発表された自民党の新憲法草案では9条1項の「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」はそのままとしているが、9条2項で「自衛軍の保持」を明記し、「国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行う」としている。 また憲法改正の要件については現行の衆参、各院で三分の二以上の賛成による発議が、各院で過半数の賛成で国会が議決するとなっている。 しかし世論調査結果が示しているように、財界、自民党など改憲派の狙いは国民世論と大きく乖離している。 海外での武力行使を可能とする9条改憲を世論の力でストップしよう! 自民党の「新憲法草案」が9条1項をそのまま残したのは国民世論を誤魔化すためだけのものである。改憲派がやろうとしていることは、「国際協調」、集団的自衛権の行使などの名目で、実際には自衛隊が米軍と一体となって世界中で戦闘行動ができるようにすることである。イラク侵略と占領の現実で明らかなように、米は国連も国際法も無視して平然とウソを言いまくって外国へ侵略戦争を行っている。そのような米と一体となって海外での軍事行動を可能にしようというのである。 現行憲法にあるように、9条1項は、2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と一体となって初めて効力を発揮される。9条2項を書き換えるのは、さまざまな名目で1項を骨抜きにするためのものである。 改憲派はマスメディアを使って改憲ムードを作りあげている。しかし今回の世論調査でも明らかになったように、その狙いとするところは決してその思いどおりになっているとはいえない。 改憲派の本当の狙いを明らかにしてゆくことによって、憲法改悪をストップさせよう。 【参考】 「憲法世論調査:9条改正「反対」は62%」 毎日新聞 2005・10・5 より 毎日新聞は憲法問題について、全国世論調査(面接)を実施した。憲法改正に「賛成」と回答した人は58%で、「反対」の34%を上回った。戦争放棄や戦力の不保持を定めた9条については「変えるべきでない」が62%で、「変えるべきだ」の30%の2倍に達した。衆参両院の憲法調査会や自民、民主、公明各党による論議で国民に改憲への支持が広がる一方で、自民党が重視する9条改正についてはなお慎重な国民意識を示した。 調査は9月2日から4日まで全国の4550人を対象に実施し、2418人から回答を得た。調査方法が異なるため単純に比較はできないが、昨年4月と今年4月の電話調査では、憲法を「改正すべきだ」が6割程度、「改正すべきでない」が3割で、ほぼ同じ傾向となっている。 男女別では、男性は改憲派62%、護憲派33%であるのに対し、女性は改憲派54%、護憲派36%だった。世代別では30、40代で改憲派が各65%と最も多く、20〜60代の各年代で5割を超えた。70代以上では賛成44%、反対40%と拮抗(きっこう)している。 同時に、9条改正について聞いたところ「変えるべきでない」との答えが男性で57%、女性は67%に達した。「変えるべきだ」は、男性が38%、女性は23%にとどまった。世代別では、20代の70%が9条改正に反対したのをはじめ、30、50、70代以上の各世代で6割を超えた。改正賛成派は40代の36%が最高。 9条改正賛成派にどの部分を変えるべきかを聞いたところ、戦力不保持と交戦権否認を規定した2項だけを「変えるべきだ」と答えた人が50%と最多。戦争放棄を定めた1項と2項の「両方とも」が35%と続き、1項だけを「変えるべきだ」は13%にとどまった。 憲法96条の規定で、改憲には(1)衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成による発議(2)国民投票で過半数の賛成−−が必要。今回の衆院選で自民、公明両党は衆院の3分の2を超える327議席を獲得している。【松尾良】 |
◇世論調査の質問と回答◇ ◆あなたは今の憲法を改めることに賛成ですか、反対ですか。 全体 男性 女性 賛成 58 62 54 反対 34 33 36 ◇<「賛成」と答えた方に>どのように改めるべきだと思いますか。(三つまで) 憲法の文章が翻訳調なので、分かりやすい日本語にする 43 36 50 自衛隊の位置づけを明確にする 41 48 34 集団的自衛権を行使できるようにする 15 22 8 象徴天皇制を見直す 14 11 18 国会の2院制を廃止して1院制とする 22 26 17 首相を国民の直接投票で選べるようにする 43 44 41 地方分権を現在より拡大する 18 21 14 国民の新たな権利を作る 20 19 22 国民の新たな義務を盛り込む 11 11 11 憲法改正の要件を緩和する 14 13 15 ◇<「賛成」と答えた方に>改正に賛成する理由は何ですか。 今の憲法が時代に合っていないから 56 55 57 今の憲法は米国から押しつけられたものだから 10 12 9 今の憲法は制定以来、一度も改正されていないから 18 15 22 自衛隊の活動と憲法9条にかい離があるから 9 12 6 今の憲法は個人の権利を尊重しすぎているから 2 2 2 ◇<「反対」と答えた方に>改正に反対する理由は何ですか。 今の憲法が時代に合っているから 8 7 8 改正するほどの積極的理由がないから 26 24 27 9条改正につながる恐れがあるから 44 43 44 個人の権利を制限したり、義務を規定する恐れがあるから 6 6 5 国民や政党の議論がまだ尽くされたとは言えないから 17 18 15 ◆戦争放棄や戦力の不保持を定めた憲法9条を変えるべきだと思いますか。 変えるべきだ 30 38 23 変えるべきでない 62 57 67 ◇<「変えるべきだ」と答えた方に>憲法9条は第1項で「戦争の放棄」を定め、第2項で「陸海軍その他の戦力を保持しない」と定めています。あなたは、1項と2項のどちらを変えるべきだと思いますか。 1項を変えるべきだ 13 11 15 2項を変えるべきだ 50 52 47 両方とも変えるべきだ 35 36 34 ◆戦後の日本の平和維持に、憲法9条が実際に役立ったと思いますか。 かなり役立った 32 34 30 ある程度役立った 48 46 49 あまり役立っていない 11 11 11 まったく役立っていない 3 4 2 ◆自民、民主、公明など各政党により、憲法改正に関する議論が進んでいます。あなたは、こうした議論に関心がありすか。 かなり関心がある 22 30 15 ある程度関心がある 47 46 48 あまり関心がない 23 17 28 まったく関心がない 5 4 5 ◆あなたは、憲法改正がいつまでに実現すると思いますか。 3年以内に実現する 10 12 9 5年以内に実現する 21 24 18 10年以内に実現する 23 23 24 10年以上先に実現する 14 13 14 実現するとは思わない 23 22 25 注)数字は%、小数点以下を四捨五入。無回答は省略。複数回答は合計が100%を超える。 |