[「つくる会」教科書批判]
歴史事実ではなく、神話と戦争賛美を教える |
「つくる会」歴史教科書は歴史的事実ではない神話を事実と混同しやすい形で載せ、天皇制と大日本帝国憲法、日本の過去の侵略戦争を賛美し、植民地支配を正当化しています。また南京大虐殺、強制連行、従軍慰安婦など戦争の悲惨な事実を認識させないなど、徹底した国粋主義・戦争賛美の教科書です。 |
1 皇国史観に貫かれ、科学性を無視しています。 「神武天皇の東征伝承」と「日本の神話」と題するコラムで、『古事記』『日本書紀』の神話が、かなりのページ数を割いて紹介されています。実在しない神武天皇の東征の記述を読めば、実在したと誤解しても不思議ではありません。古代から天皇が権力を掌握していたことを読者に印象付けることを狙っています。 ●天皇中心の歴史 神話の神武天皇が登場することからもわかるのですが、この教科書は日本の歴史が天皇中心であったことを強調しています。さすがに神話を歴史として扱うことはできないので、代わって登場するのが聖徳太子です。(第1章第3節「律令国家の成立」)すなわち、この頃から天皇の名称が使われ始め、「日本の伝統」が確立したとの見方です。 2 自国中心で、他民族への侵略や支配を肯定しています。 ●日清・日露戦争
3 侵略戦争を植民地からの「解放戦争」と美化します。
|
憲法を教えず、大日本帝国憲法と改憲を教える
|
「つくる会」公民教科書は大日本帝国憲法を積極評価し、憲法についてはその意義を教えず「改憲」の動きをことさら強調しています。国防の意義を強調し自衛隊の世界での活躍を賛美しています。国旗・国家、領土問題と拉致問題を詳述し、家族の意義を強調しジェンダーフリーを毛嫌いして否定します。 |
1 「日本国憲法の基本的原則(第3章第1節)」について 憲法について学ぶ箇所ですが、項目は (23)大日本帝国憲法と日本国憲法、(24)国民主権、(25)平和主義、(26)憲法改正、(27)基本的人権の尊重・・・・という順番となっています。 -(23)大日本帝国憲法と日本国憲法: 大日本帝国憲法が、天皇主権の国家体制をつくり、国民の自由を奪い、人権を抑圧した非民主的憲法だったことにはふれずに、「国民にたたえられた大日本帝国憲法」という資料を掲載しています。日本国憲法については、占領軍から押しつけられた憲法だということを強調しますが、憲法の精神や内容についてはほとんど触れていません。そのうえ、日本国憲法が「改正」されていないことを非難するため、「世界最古の憲法」と揶揄する産経新聞記事を資料として引用しています。 -(24)国民主権: 国民主権の説明に天皇の写真 国民主権の説明をすべきなのに、なぜか「国民統合の象徴としての天皇」についてスペースを割いて記述し、天皇の写真までも掲載しています。「皇室は、国の繁栄と人々の幸福を祈る祭り主として、古くから国民の敬愛を集めてきた」、「国家が危機をむかえたときには、国民の気持ちをまとめ上げる大きなよりどころとなってきた」などと特異な歴史観まで述べ、あえて国民主権を説明しません。 -(25)平和主義: 平和主義の記述がなぜか自衛隊の発足 憲法の平和主義のことにはほとんど触れずに、代わりに「自衛隊の誕生」という説明をしています。「国際情勢と占領政策の変化によって、憲法に対する考え方も大きな影響を受け」自衛隊が発足とし、憲法の平和主義についてもまともに書きたくないことが明白です。 -(26)憲法改正: 前項で憲法のことをまともに説明していないのに、早々に「憲法改正」の記述が登場します。現行憲法は「改正」すべきもので、内容を理解する必要はないという執筆者の意図が露骨に表明されています。 -(27)基本的人権の尊重 2ページのうち半分は「公共の福祉と国民の義務」にあてられ、さらに国防の義務についても記述しています。基本的人権を尊重よりも、「公共の福祉」の名の下で、社会の秩序維持という理由で人権を制限できることを重視した内容です。 2 その他の記述について ●自衛隊 湾岸戦争以後の自衛隊の海外派兵(後方支援)の実績をあげ、自衛隊の「軍事的な面での国際評価も高まりつつある」、わが国が「責任ある国際社会の一員として認められるようになってきた」などと述べて、自衛隊の海外派兵を全面的に肯定しています。さらに「自衛隊がより国際的な責任を果たせるよう、集団的自衛権を『行使することができる』と解釈を変えるべきだという主張もある」などと、今日の憲法「改正」論にいっそうふみこんだ記述となっています。 日米安全保障条約については「わが国だけでなく東アジア地域の平和と安全の維持に大きな役割を果たしている」と評価し、批判的意見はまったく紹介していません。周辺事態法の成立によって「米軍との協力・支援体制が強化されることになった」と、全面的に肯定しています。
●「愛国心」の強制、伝統文化の強調
|
参考文献: ●『使ったら危険「つくる会」歴史・公民教科書--子どもを戦争にみちびく教科書はいらない!--』 上杉聰・大森明子・高嶋伸欣・西野瑠美子著 明石書店 ●『ここが問題「つくる会」教科書--新版歴史・公民教科書批判--』 子どもと教科書全国ネット21編 大月書店 ※扶桑社「新しい歴史教科書」(改訂版)は、「つくる会」HPに抜粋が紹介されています。 http://www.tsukurukai.com/05_rekisi_text/rekisi_kaitei.html |