学習資料

「沖縄の負担軽減」を削除、日米軍事同盟のさらなる強化 -- 4.27共同発表

 
「動的防衛協力」による対中国包囲網強化反対!


  日米両政府は、4月27日ロードマップ見直しに関する「(2+2)共同発表」文書を出し、30日には日米首脳会談で「日米共同声明」を発表した。これらは、2月に行われた在沖米海兵隊のグアム移転と辺野古新基地建設の「パッケージ」切り離しを踏まえてより露骨に日米軍事同盟の統合による対中国包囲網強化を確認したものである。

 今回の一連の文書の中で注目すべきものは日米の「動的防衛協力」の強化が盛り込まれたことである。すでに2010防衛大綱では、従来の専守防衛を極限まで形骸化する「動的防衛力」の構築が掲げられた。「動的防衛力」とは、常時、警戒・監視を怠らず、「迅速かつシームレス」に対処する能力とされ、平時においても有事の態勢をとる、挑発的で危険な軍事戦略である。これが、日米間の「動的防衛協力」に格上げされ、日米両軍の統合化・一体化による有事態勢の構築を図ろうとするものである。

 共同発表では、対中国包囲網の強化について強調する一方、「沖縄の負担軽減」についてはその文言が消され、「地元への米軍の影響を軽減」へと後退させた。実際にはメドが立たない辺野古新基地建設について再確認する一方で普天間基地の補修を明確にした。普天間基地の継続使用とオスプレイ配備は「負担軽減」どころか負担増である。

 

グアム・テニアンへの共同訓練施設の建設、「動的防衛協力」の具体化

  日米共同発表は、グアム及び沖縄における部隊構成に触れ、米海兵隊の「前方プレゼンスを維持しつつ、地理的に分散された兵力態勢を構築する」ため、地上及び航空戦闘部隊で構成され単独で作戦を遂行できる即応部隊である海兵空地任務部隊(MAGTF)を沖縄、グアム、ハワイに置き、オーストラリアには「ローテーションによるプレゼンスを構築する」と述べている。すなわち、機動力を備えた部隊のローテーションにより、対中国包囲網の強化を図ろうとしているのだ。

 これに基づきグアム及び北マリアナ諸島(テニアン)への共同訓練施設建設が盛り込まれた。訓練施設は自衛隊が駐留し、米海兵隊との共同訓練を繰り返すための施設であり、「動的防衛協力」の具体化をもくろむものである。「南西諸島防衛」、「沖縄の抑止力維持」とは、自衛隊が米海兵隊と一体化し、対中国包囲網に組み込まれることに他ならない。この訓練施設の建設費も日本政府が負担するのだ。

 これまでの日米合意による在沖米海兵隊のグアム移転は、日本にグアムの基地建設費用を負担させることが米の目的の一つであった。新たな日米合意により米海兵隊員数が半減したのにもかかわらず、米海兵隊のグアム移転に係る日本側費用負担は2009年グアム協定の真水部分の28億ドルを維持(実際には31億ドルに増額)している。

 さらに訓練施設の建設と並べて、ODAを用いた日本からの武器輸出も明記している。「地域の平和、安定」を「促進する」ためと称して、日本から米の同盟国に軍艦などを輸出することまで行おうとしているのだ。野田民主党政権は「防衛」面でも従来の自民党政権を乗り越える暴走をしている。

普天間「固定化」・オスプレイ配備で、危険性は増大


 沖縄の辺野古新基地建設反対、普天間基地撤去、「県外」移設を掲げた闘いは、辺野古への新基地建設が極めて困難な状況へと追い込んだ。新基地建設のメドが立たなくなったいま、普天間基地を補修して使用し続けることが、米海兵隊の最優先の要求となった。共同声明では金額の明示はしなかったが、すでに8年間で200億円の要求が出されているとの報道がある。

 もともと辺野古新基地建設は、オスプレイ配備を前提としたものでもあったが、建設のメドが立たなくなった今、普天間にオスプレイを強行配備しようとしている。そのためにも、米海兵隊は普天間の補修をなんとしても必要としている。

 米海兵隊は、普天間でのオスプレイ運用を今年10月から予定し、日本政府は沖縄の「理解を得る」ために「本土」の米軍基地での一時配備を地元に打診していた。しかし、岩国など地元住民・自治体の反発にあい、あっさりと「本土」への一時配備を断念した。7月にも沖縄への持ち込みを強行しようとしている。本土の自治体が拒否するとすぐに引っ込めたにもかかわらず、沖縄県民の総意は無視してごり押しする沖縄差別が、オスプレイ配備でも明確となった。オスプレイ配備を許すならば普天間基地はこれまで以上に危険な飛行場として継続使用=「固定化」される。

 一方、ロードマップで返還されるとされた施設についてもその返還条件が示されたが、具体的な見通しを欠いた細切れ返還である。

「2正面」から、「1正面プラス」戦略への米軍事戦略の転換

 米海兵隊のオーストラリア駐留と、在沖縄海兵隊のグアム先行移転=「パッケージ」切り離しの背景には、イラク・アフガンからの撤退、対中国シフトという米軍事戦略の変化がある。

 オバマ政権は、今年1月、「米国のグローバルな指導力の堅持」と称する「新国防戦略」を発表し、米戦略の見直しを明らかにした。これまでの「2正面」戦略から、「1正面プラス」戦略への移行である。「1正面プラス」とは、「一つの大規模紛争に対処する一方、『第二の敵』が戦争を起こさないように封じ込める」戦略であるが、具体的には、イラク及びアフガニスタンに駐留している米軍を段階的に撤退し、アジアにシフトさせ対中国包囲網を強化しようとするものである。

 米新戦略は深刻な財政危機のもとでの軍事費削減に対応するものでもある。オバマ政権は今後5年間で2590億ドル(約20兆円)の軍事費削減を発表した。さらに昨年8月に議会で定められた予算管理法が施行されれば、2013年以降10年間で4870億ドル削減される。

 グアムへの米海兵隊移転に関して2013会計年度予算の上院委員会審議でも在沖海兵隊のグアム移転費が削除される事態となっている。米議会内には、沖縄からの米海兵隊撤退の主張や、「在沖海兵隊は冷戦時代の遺物」との批判も出ている。

 軍事費が大幅に削減される中で、米軍はこれまでのような大規模な地上軍を駐留させることが困難になりつつある。空海軍による統合運用(エアシーバトル構想)を進め、海兵隊と陸軍を削減せざるを得ない。新戦略では、米軍と同盟国軍隊との統合化も進めようとしている。在沖縄海兵隊は、新たな基地建設を必要とするグアムだけでなく、オーストラリアを含め、より分散化させることになった。
 しかし、米海兵隊は議会に対する強力な影響力を行使し、組織の生き残りを図っている。そのためにも、日本の財政負担による沖縄への駐留継続とグアムへの海兵隊基地新設は必要なのである。

オスプレイ配備反対、普天間基地「固定化」反対の闘いに取り組もう!

 辺野古新基地建設は、沖縄の粘り強い闘いにより、押しとどめているが、一方で「普天間固定化」の脅しが日米両政府からかけられている。高江のヘリパッド建設工事も続けられようとしている。
 沖縄では、オスプレイ配備の撤回と普天間基地「固定化」を阻止する闘いが重要な焦点に浮上した。普天間基地の補修を阻止する闘いは重要である。

 オスプレイが7月にも配備されることに対し、沖縄では一斉に反発の声が噴出している。5月13日の「普天間飛行場閉鎖・オスプレイ配備撤回を求める集会」には、「復帰40年」の5.15平和行進の参加者を含め、3000人が結集した。6月10日の県議選後に闘いは本格化する。宜野湾市では「オスプレイ配備反対、普天間飛行場の固定化阻止」を掲げ市民大会を6月17日に開催する。市民団体もオスプレイ配備撤回と普天間固定化を阻止するための闘いを準備している。

 「本土」からも沖縄に連帯してオスプレイ配備反対、普天間「固定化」反対の運動を作りだしてゆこう。