[報告]

 第4回 沖縄・韓国・日本 米軍基地環境シンポジウム
「どうなっているの?米軍再編」 〜東北アジアの米軍基地と環境問題を考える〜
2011年9月24日 岩国市民会館

 9月24日、第4回沖韓日・米軍基地環境シンポジウムが、岩国市民会館で開催された。今回はサブテーマとして「どうなっているの?米軍再編」〜東北アジアの米軍基地と環境問題を考える〜 が掲げられ、駐留米軍基地に対して活動する全国の代表、韓国の代表、地元の市民など約130人が参加した。

 このシンポジウムは、第1回が2005年3月に沖縄で開催され、日本・沖縄・韓国の米軍基地を抱える地元が連携し、闘いを前進させる目的で継続して開催されており、今年はその4回目となった。今回は、第1部が各地域からの報告、第2部がパネルディスカッションであった。

<第1部 米軍再編をめぐる各地の状況と市民の取り組み>
 
 地元岩国から始まり、沖縄、神奈川、韓国、横田、佐世保、鹿児島からの報告がなされた。岩国からは、「米軍住宅建設など全体で900億円を見込む愛宕山再開発が計画されている。今年度予算200億円の執行は延期させたが、県知事が12月末までに判断しようとしている。これを阻止するためにも岩国訴訟を含めて支援してほしい」と訴えがなされた。厚木からは、「米軍機の爆音は何の軽減もされていない。爆音と墜落の恐怖にさらされている。海上自衛隊の次期対潜哨戒機P-1は、機体にひび割れをおこすことが判明し、本格配備は延期となったが、厚木上空の試験飛行は継続している」と基地被害の実態を訴えた。座間は、「厚木基地の米軍ヘリがキャンプ座間で訓練を繰り返して爆音をまき散らしている。陸自中央即応集団司令部移駐の工事に伴う土壌調査では鉛汚染が検出されている」と報告した。横須賀からは「GWの改修時に放射性物質は外には出さないと約束しながら、実際には積み替えを行った。横須賀のある三浦半島は、活断層があり震度7以上の危険性が指摘されている」と報告した。辺野古、鹿児島県馬毛島、韓国での闘いの報告を以下に記す。

● 辺野古(安次富浩さん)
----辺野古移設は破たんしているが、6月末の2プラス2共同声明の問題点として、以下のことを指摘したい。
 移設期限を明記しないことは普天間基地の固定化を謀っている。また、「辺野古アセス」範囲内での50m移動案を視野に入れている。下地島パイロット訓練飛行場をアジア太平洋地域の災害救援拠点として整備することに合意した。馬毛島が将来、米空母艦載機離発着訓練の恒久的施設に変貌する可能性が強い。
  「V字形合意は砂上の楼閣」を裏付けるアメリカ議会及び米軍の動向を注視している。7月に就任したパネッタ新国防長官は、海外に駐留する米軍の任務と役割、戦力の見直し、国防費の削減に着手するとの意向を示した。

 政府をチェックする国会の機能低下、政治の劣化を背景として、シビリアン・コントロールの弱体化が進んでいる。中国敵視政策は民主党の「対等の外交関係」、「東アジア共同体」構想の崩壊であり、歴代政権の対米隷従関係を引き継いだ。前原前外相は独自に訪米し、日米合意の推進を約束している。
 
――今後の展望として以下を提起したい。
 沖縄県議会は6月14日、全会一致でオスプレイ配備反対を決議した。県民大会を開催し、知事、県議会、名護・宜野湾市長等が帯同で野田新政権に配備反対要請を行うべきだ。

 市民運動団体が訪米し、アメリカ市民運動と連携して連邦議会へのロビー活動、座り込みとデモ、国連本部への直訴を検討すべきだ。辺野古違法アセス訴訟を通じて、アセス調査の不備を突き、裁判に勝利する。政府は知事のもつ公有水面埋め立て権限を奪う特別立法を狙っている。大規模な県民大会を開催し、知事を支える大衆運動を構築することが必要である。

● 馬毛島(鹿児島に米軍基地はいらない県民の会)
 2007年にFCLPの候補地と報道された。防衛省はこれまで、検討対象ではないと言ってきたが、今年5月に「検討対象」との報道があり、6月1日に防衛省に反対要請した。そのとき「検討している」との説明がなされた。 それから急遽反対運動を立ち上げた。6月21日の日米安全保障協議委員会の共同文書に、「馬毛島」が明記された。

 この間、1市3町では、「米軍基地等馬毛島移設反対協議会」を発足、要請活動、署名活動を行ってきた。住民組織は、西之表市を中心に「市民団体連絡会」を発足させ、9月1日には、「自然を守る会」が、国と県に工事の差し止めを求め、開発業者に工事中止と原状回復を求める訴訟を起こした。

 一方、賛成派は、7月に「自衛隊訓練施設の推進を求める陳情書」を西之表市議会に提出(否決)。賛成の署名活動も行っている。防衛省は7月2日、1市3町への説明後、漁協、建設業などへ個別説明を行った。移設には250億円投入という金額を提示した。

 今後の取り組みとして、住民への署名活動、街宣活動・立て看板設置、学習会の開催を計画し、住民への情宣に取り組む。11月以降に「断固反対大集会」を検討している。

● 韓国・郡山 平和の風 タルギさん
@在韓米軍の環境犯罪―漆谷(チルゴク)郡のキャンプ・キャロル
 5月19日、慶尚北道漆谷郡に存在するキャンプ・キャロルに枯葉剤を埋設したとの米退役軍人の証言が報道され、米韓共同調査団が5月27日から土壌を調査した。猛毒性の発がん物質であるTCEとPCEは基準値を超える量が検出されたが、ダイオキシンは検出されなかった。調査はずさんなものであったことが明らかになっているが、韓国政府は疑惑にふたをしようとしている。8月8日、平澤(ピョンテク)米軍基地周辺の調査で、ダイオキシンが検出されたとの発表がなされた。枯葉剤不法埋蔵が、単なる疑惑でなかったことが証明された。また、5月26日には、群山米軍基地で油流出事件が発生した。油流出事件は過去にも何回も起きている。

A米軍の環境事故は事故でなく「犯罪」
 米軍から返還された全国の在韓米軍基地は、深刻な汚染状況にある。返還されずにずっと使われている部隊は、規模の大小を問わず環境汚染事故が日常的に起きている。米軍は環境汚染問題を日常的に隠蔽してきた。米韓駐屯軍地位協定(SOFA)では「施設及び区域に対する適切な出入は合同委員会で定められた手続きによって行われる」と明示され、韓国政府は措置を直ちに行うことができない。

B海軍基地阻止のための住民たちの壮絶な闘争―済州島江汀(カンジョン)村
 済州海軍基地は2002年から推進され、2007年に江汀村が候補地になり、4年間闘いが続いている。2007年4月、村の住民1900人のうち、87人のみ参加した議会で米軍基地誘致を決議した。候補地の海は、天然記念物の軟珊瑚、絶滅危惧種のジムグリガエルや赤脚馬糞蟹をはじめとする多様な生物の生息地である。海軍は環境影響評価から意図的に保護生物の生息に関する情報を削除・歪曲している。また、済州で唯一「クロンビー」(一塊の溶岩の岩)が見られる場所でもある。海軍の基地建設はこの溶岩の岩と海をコンクリートで埋めようとしている。現在は、海の埋め立てのための測量作業とクロンビーを埋めるために事業敷地内にある住民の農地を奪い取っている。住民たちは身を挺して海上闘争を行った。9月2日の代執行でカンジョン村村長を含む7人が逮捕・拘留され、村長は未だに拘留されている。


 <第2部 パネルディスカッション>
第2部は、「米軍再編とどう闘っていくか?」と題されたパネルディスカッションが行われた。パネリストとして、安次富浩(沖縄・辺野古)、新倉裕史(横須賀)、金子豊貴男(厚木)、田村順玄(岩国)の4氏が、話をした。

 田村氏は、自身が9月18日の海上自衛隊岩国航空基地祭で見学を拒否された「事件」について話した。これまでのリムピースなどの活動が、米軍や自衛隊にとって大きな圧力となっており、彼らが恐れていることが明らかになった。

 安次富氏は、昨年は名護で稲嶺市長を誕生させ、県知事選では仲井真知事が、県外移設を主張して再選された。沖縄では圧倒的多数が県外移設だ、と報告した。今、知事は訪米して、県外移設を訴えている。新基地建設を強行すれば、日米安保にも影響するとも言った。また、オスプレイ配備の問題もある。私たちも訪米し、ワシントンでデモをして訴えたい。国際社会にもこの怒りをぶつけたい。

 金子氏は、全国の米軍再編はうまくいっているところとそうでないところがあると指摘した。キャンプ座間では米第1軍団が移駐するといわれたが、前方司令部が設置され、少人数だ。一方で、陸自の中央即応集団司令部の移駐は進められている。また、岩国への米軍機移駐は、訓練施設が決まっていないため、進んでいない。米の財政危機も絡めて、米軍再編に反対していくことが必要である。

 新倉氏は、アンケート調査では「基地はやむを得ない」という人が多いが、僕らはこの人たちに展望をもっていると語った。賛成でやむを得ないという論理はあり得ない。ところが3月の大震災直後の調査では、基地があってもよいという人が多くなった。報道で米軍や自衛隊の"活躍"が取り上げられたことを反映していると考えられる。したがって、我々も、基地の危険や米軍の危険をもっと訴えていくことで、支持を得られると考えており、これからも続けていきたい。

 最後に、「沖縄、韓国、日本各地の基地を抱える街の住民が集まり、岩国をはじめとする各地で起こっていることがその場所だけのことではなく、大きな米軍の世界戦略のるつぼの中に置かれていることを改めて確認しました。そして、そこから抜け出すためには在日米軍だけではなく、在韓米軍の再編問題についても、私たちはつながりを強め、共に闘っていくネットワークを構築していかなければならないことを確認しました」などの集会アピールを採択し、団結ガンバロウで締めくくった。


集会アピール

 私たちは、今日、沖縄、韓国、日本の基地を抱える街に住む住民が岩国に集い、米軍再編がどうなっているのかを学びました。その中で、岩国だけではなく、沖縄、韓国、日本の基地を抱える各地において、米軍再編によって基地が拡張され、その機能が拡大されようとしている現状を学ぶことができました。

 6月21日の2プラス2において、グアム移転と普天間移設が遅れることが明らかとなりましたが、その一方で厚木からの空母艦載機部隊の岩国への移駐はロードマップ通りこ推し進められようとしています。しかも、馬毛島をFCLPの恒常施設に選定しようとしており、地元でも反対の声が上がっています。沖縄では、普天間を固定化させてはならない、嘉手納統合案反対の声が上がっており、9月8日にも沖縄防衛局前で集会が行われました。また、日本政府は米軍の指示により、来年10月に欠陥機であるオスプレイを配備することを関係自治体に通告してきており、宜野湾市、沖縄県などからも反対の声があげられています。

 韓国においても、済州島に韓国海軍基地が拡張されようとすることに対し、地元住民が阻止行動を続けていますが、警察などの弾圧も激しく、住民団体の代表者が拘束され、世界文化遺産の美しい海がつぶされようとしています。それに対する住民の闘いは続いています。

 岩国では、昨年5月29日から新滑走路の運用が始まりました。つまり、新たな基地が米軍に提供されたことを意味しています。さらに日本政府は、海だけではなく愛宕山までも米軍に提供し、米軍住宅及び米軍関連施設にしようとしています。これに対し、愛宕山周辺住民は沖縄・辺野古の闘いに学び、月3回の座り込みを続けるなど反対の行動をとり続けています。

 その岩国に沖縄、韓国、日本各地の基地を抱える街の住民が集まり、岩国をはじめとする各地で起こっていることがその場所だけのことではなく、大きな米軍の世界戦略のるつぼの中に置かれていることを改めて確認しました。そして、そこから抜け出すためには在日米軍だけではなく、在韓米軍の再編問題についても、私たちはつながりを強め、共に闘っていくネットワークを構築していかなければならないことを確認しました。

 岩国では、住民投票の大勝利から6年が経過しましたが、米軍再編が推し進められようとしており、今が厳しい苦悩の中にあります。だからこそ、私たちの闘いをさらに発展させるためにも、この日の取り組みを活かし、東北アジアの基地を抱える街の住民が共に手を取り合い、連携を強め、共に闘っていくことをここで確認いたします。

2011年9月24日