DVDの紹介

「死んどるヒマはない─益永スミコ86歳」

企画・制作 ビデオプレス 2010・3 68分



 こんな元気な先輩が日本にもいることに感激した。
 益永スミコさんはたった一人、道行く人に憲法9条の大切さを訴える。マイクなんか使わない。朗々とした声で、戦争は人殺しであることを語りかける。家を出るときから1mあまりのプラカードを首からかけて歩く。「これを持って歩くとみんなが見るから、(言いたいことが)伝わるんです。」とあっけらかんと言う。1923年生まれ、笑顔の素敵な小柄なおばあちゃんは本当にたくましい。


 軍国少女で戦後も生活に追われていた益永さんが社会の仕組みについて考えたのは、47歳で労働組合をつくった頃からだという。助産婦として勤務していた病院で67名の女性だけで結成した。医療現場で女性だけで作った組合は初めてだったそうだ。人の言うことに従ってきた彼女が自分で考え行動を始めると次々と活動の場が広がっていく。「やれることをやるだけ」といいながら、人権について考え、死刑囚の養母となり、死刑廃止や裁判制度の問題にもかかわっていく。かつて「天皇教」の教えのままに男たちを戦場に送り人殺しをさせてきたという深い悔恨が、「もう誰も殺したらいかん」という強い思いになっている。

 憲法にある人間らしく生きられる社会を作りたい、偉い人にまかせっ放しにしないで自分の頭で考えようと人びとに訴え続ける彼女の姿を2年間取材して作られたのがこのDVDだ。今回レイバー映画祭(注)で上映されると大きな拍手が鳴りやまなかった。

 今年の梅雨明けの日には神奈川県座間市の小さなデモにも埼玉県狭山市から参加し、猛暑のなか1時間半を元気に歩き続けて娘や孫のような他の参加者を感嘆させた。益永スミコさん、まだまだ死んどるヒマはない。
 

(注)レイバーネット主催の映画祭。
http://www.labornetjp.org/news/2010/0724shasin/

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