本書は、ブッシュ大統領とその主要閣僚がどれほど緊密に軍需独占と結びついているのか、さらには軍需独占とエネルギ−独占、CIA等諜報機関との関係など、これまで一般マスコミが伝えてこなかった部分を幅広く展開している。
「ペンタゴンは、銃砲からミサイル、軍艦、戦闘機に至るまで、武器と兵器の国内製造を推進しながら、同時にそれを紛争地に送り込むマシーンとして機能する巨大組織である。その資金を受けるのが、全米の上院議員と下院議員とホワイトハウス要人たちである。」
序章 不思議な国アメリカ
第1章 ペンタゴン受注軍需産業のランキング
第2章 軍閥のホワイトハウス・コネクション
第3章 日本の防衛産業を育てた太平洋戦略
第4章 二十世紀の戦争百年史
第5章 CIAとFBIと諜報組織の成り立ち
第6章 NASAと宇宙衛星産業
上記の目次をざっと見ただけでも分かるとおり、本書は単にアメリカの軍需産業が巨大で政権と癒着していることを示すだけでなく、個々の企業の成り立ちにまで遡って、政権と軍需産業の関係・肥大化を示しており複雑で理解しながら読むのは大変ではあるが、筆者が特に力を注いだ点であろう。
特に印象に残ったのは、ブッシュ政権がNMD(国家ミサイル防衛構想)を強力に推進している衝動力を展開している部分である。
ブッシュ政権の国防長官ラムズフェルドは、エンジン製造メ−カ−の重役だけではなく、別会社では元国防長官カ−ルッチと同僚重役で、同時に軍事シンクタンクのランド・コ−ポレ−ションを2人で一体になって動かした。80年代にラムズフェルドがランドの理事長になり、理事のカ−ルッチとともに、ロッキ−ド・マ−チンと組み、議会にNMDの必要性を認めさせる圧力をかけながら、NMD理論をランドが、NMD製造はロ社が進めるという体制を取る。
ラムズフェルドがニクソン政権の経済局長時に、補佐官にチェニ−をとるという関係もできていて、現副大統領が今度はラムズフェルドを国防長官にとる関係である。ちなみに副大統領チェニ−の妻はロッキード・マーチンの重役であることも本書で暴露されている。ラムズフェルドが親玉で、手下がチェニ−でNMD強行という構図である。(本書では現副大統領Cheneyをマスコミが書くチェイニーではなくチェニーが適切な表記であるとしている。)
ブッシュが石油会社を経営していたことは知られているが、主要閣僚と石油メジャ−との関係についても展開されている。国家安全保障担当大統領補佐官ライスは、石油メジャ−シェブロンの重役をしていた。
このように、軍需独占とエネルギ−独占のコネクションとネットワ−クが、クモの巣のように張り巡らされているもとで、ブッシュが軍拡を突き進む根底にある関係が明らかになっている。
広瀬隆著 集英社新書
アメリカの巨大軍需産業