弾道ミサイル迎撃手続き簡略化 高まる対北朝鮮戦争挑発の危険性! 統合運用強化・米軍との一体化で侵略戦争に加担するための自衛隊法改悪に反対しよう! |
この論評は各種インターネットサイトの情報や報道を元にピース・ニュースとして議論をしながらまとめました。(2005.3.6) |
政府は2月15日、自衛隊法の「改正」案を閣議決定しました。法案は弾道ミサイル迎撃の手続きを簡略化し、現場指揮官の判断にゆだねるものです。法案にはこれ以外に、統合幕僚監部、統合幕僚長の新設などの組織再編の内容も含まれています。これらは昨年(04年)末に策定された、新しい「防衛計画の大綱」(防衛大綱)や「中期防衛力整備計画」(中期防)にも沿ったもので、北朝鮮や中国に対する脅威を煽りながら、自衛隊と米軍との一体化を進め、海外侵略のための自衛隊派兵を本格化させるための法案です。 政府は海外活動の本来任務化についても法改正を狙っています。政府・防衛庁は「恒久法」を目標としていますが、すぐに策定できないため、現行法の「付随的任務」の一部を格上げすることを考え、これも今国会で成立させようと狙っています。昨年末にはいったんトーンダウンしていましたが、津波被災地域への自衛隊派兵が決まると同時に、再度、今国会提出の意向を表明しています。 2月19日にワシントンで行われた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)では、「日米共通戦略目標」の一つとして、「大量破壊兵器拡散や国際テロの防止・根絶に向けた世界規模の日米協力の強化を確認し」、「こうした課題に効果的に対応するため、自衛隊と米軍の役割分担を見直し、米軍再編協議を加速する」ことで合意しています。防衛大綱や今回の自衛隊法改悪は、このような流れの中で見ると、より、その目的がはっきりとわかります。 |
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弾道ミサイル迎撃の手続き簡略化は文民統制を否定するもの 弾道ミサイル迎撃の手続き簡略化とは、ミサイル防衛(MD)システムで他国の弾道ミサイルを迎撃する際の手続きを「簡略化」しようとするものです。 法案はまず、ミサイル迎撃の要件として、「弾道ミサイルと、その他が日本に飛来する恐れがあり、日本の領域における被害を防止するため」と規定、「その他」にはミサイルの部品などを含むとしています。つまり、米国に向けて発射されたミサイルでも、日本領空で部品が脱落、失速するなどの事態が想定されれば、迎撃が可能だというのです。実質的に集団自衛権の行使を可能とするものです。 さらに、迎撃命令について、@防衛庁長官が首相の承認を得て迎撃を命令するケースと、A時間的余裕がなく、事前に作成して首相の承認を得ておく「緊急対処要領」に基づき、長官が迎撃を命令するケースとに分類します。そしてAのケースの実際の運用では、防衛長官が事前に期間を定めて部隊に命令を発しておき、同要領に基づいて部隊指揮官が迎撃するかどうかを判断するとしています。そして、国会に対しては事後報告だけでかまわないというのです。 結局、現場指揮官の判断で弾道ミサイル迎撃が可能となるのです。これでは歯止めがなく、シビリアンコントロール(文民統制)を全く否定しています。迎撃ミサイル発射の口実はいくらでもでき、戦争挑発や軍部の暴走にもつながる内容です。 MD配備は北朝鮮や中国に対する先制攻撃能力を高めるもの 政府・防衛庁は米軍の進めるMDへの積極的な加担を行っています。MDの東アジアへの配備は、北朝鮮、中国を標的としていることは明らかです。defense(防衛)とはいっていますが、配備が進めば、相手の報復能力を脆弱化し、逆に先制攻撃能力を高めるものとなるのです。 改悪法案は北朝鮮脅威論を煽り、戦争挑発を許すため この法案はMDによる迎撃の手続きを対象としていますが、そもそもMD自体、まだ存在しないものなのです。にもかかわらず手続き簡略化の法案を急いで成立させようとしているのは、「北朝鮮脅威論」を煽っているとしか考えられません。北朝鮮の脅威を煽ることで、対北朝鮮敵視政策の継続、戦争挑発、MD推進などの口実にしようとしているのです。 MDはまだ完成していない軍事システム、開発・配備には巨額の費用が必要に MDは完成されたシステムというわけではなく、まだ開発を進めている段階で、これからも巨額(1兆円以上)の費用を要することがわかっています。また、その効果や実現性についても疑問が多く指摘されているのです。 ところが、政府の防衛予算では従来型装備の予算を削減し、MD推進のための費用を大幅に増加させようとしています。05年度だけを見れば、イージス艦4隻の改修やパトリオットミサイル(PAC3)の4高射部隊への配備などですが、今後予算は確実に増大することになるのです。 米国では軍産複合体がMDを次の収益源として推進していますが、日本でも軍需産業が生き残りをかけてMDをビジネスチャンスとして狙っているのです。そのために経団連や経済同友会は露骨に武器禁輸三原則の緩和を主張しています。 統合幕僚監部を設置し、陸海空自衛隊の統合運用をさらに強化 統合運用は米軍との一体化を円滑に進めるためにも要求されている 自衛隊の組織再編は、統合幕僚監部の新設などです。統合幕僚監部は統合幕僚長を置き、陸海空自衛隊の統合運用をさらに推進するための組織です。防衛庁は、「防衛白書('04年度版)」で統合運用の「態勢強化」に触れ、「現行の運用態勢では、自衛隊が統合軍である米軍と共同作戦を実施する場合、米軍が1人の指揮官の下、4軍が同一の作戦構想の下で行動するのに対し、自衛隊の行動は、各自衛隊がそれぞれの作戦構想に基づいて個別に行動し、必要に応じて統合調整を行って対処する」と指摘しています。今後自衛隊がますます米軍と連携を強めるためには、自衛隊の統合運用が必要とされており、米軍の組織と同一にする必要があるのです。 政府は現在、津波被災地へ過去最大の1000人規模の自衛隊を派兵していますが、陸海空自衛隊の統合運用態勢のテストケースとなっている点にも注目する必要があります。輸送活動、任務の調整、燃料補給・機体整備などを陸海空一体で実施し、ウタバオ(タイ)の司令部は、「自衛隊の窓口を一本化して各国軍や関係国との輸送調整や情報収集を行ったうえ、陸海空の輸送部隊、輸送艦に指示を出し」ているのです。「人道支援に反対するものはいない」との理由で海外派兵を行い、統合運用の実績まで積んでいるのです。統合幕僚監部とは、まさにこの統合運用を指揮するための組織なのです。 自衛隊法改悪は新防衛大綱に沿ったもの 「対テロ戦争」に米軍と一体化して参戦! 新しい防衛大綱では、「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」や「国際的な安全保障環境の改善のための積極的・主体的な取組」を掲げています。つまり、ミサイル防衛や「テロ対策」を強化し、自衛隊の海外派兵を積極的に進めるということですが、裏返せば、自衛隊の海外展開を本格化し、米軍と一体となって他国への侵略をますます進めていくということなのです。 さらに、上記の目標を実現するため、「即応性や高い機動性を備えた部隊」の配備、陸海空自衛隊の「統合運用の強化」や「情報機能の強化」といった、防衛力の整備方針が示されています。今回の改悪法案に含まれるミサイル迎撃防衛や自衛隊の組織再編は、防衛大綱で掲げた方針をさっそく実現するものなのです。 海外派兵の本来任務化も狙う政府・防衛庁 大野防衛庁長官は1月10日、シンガポールで、自衛隊の国際平和協力業務を、国土防衛と並ぶ自衛隊法の「本来任務」に格上げする自衛隊法改悪案を通常国会に提出し、成立を目指す意向を表明しました。自衛隊派遣を随時可能にする「恒久法」の検討作業が遅れ、いったん見送りとなっていたのを、津波被災国への自衛隊派遣を機に、大野長官が通常国会への提出を強く指示したの」です。「人道支援」を逆手にとり、専守防衛の自衛隊の任務を逸脱し、憲法にも反し、海外侵略を可能にする自衛隊法改悪に、利用しているのです。 海外活動の「本来任務化」は、新防衛大綱では「適切な位置付けを含め所要の体制を整える」と記されています。また、昨年10月にまとめられた、「安全保障と防衛力に関する懇談会」(安保防衛懇=首相の諮問機関)の報告書では、「国際平和協力のための一般法(恒久法)の整備」が、より明確に示されています。 |
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大野長官は、「どんなことがあっても本来任務化は次期国会(今国会のこと、引用者注)でやりたい。恒久法も一緒に整備するのが望ましいが幅広い問題があり、少し時間をかけて議論しないといけない」と発言しています。小泉首相も、「自衛隊の活動は非常に高く評価されている。各省、各政党が必要ならば結構で、(本来任務化の法案を)出しても問題ない」と発言しました。 しかし、公明党の慎重姿勢や、「恒久法」を急ぐべきだとの反対もあり、すんなりと今国会提出には至っていません。 |
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自衛隊法改悪に反対し、自衛隊海外派兵の拡大に反対して闘おう! 日本政府は、米ブッシュ政権が推進する「対テロ戦争」、「ミサイル防衛」に、ますます加担し、自衛隊が米軍と一体となって海外侵略を本格的に担うことができるように準備を進めています。今回の自衛隊法改悪はこのような動きの一環なのです。 私たちは、このような専守防衛に反し、憲法にも反する法案に反対ですが、国会では与党に加え、野党の民主党もこの法案に対しては反対していません。「日米共通戦略」なるものが掲げられ、在日米軍基地は再編強化され、米軍と自衛隊とのいっそうの統合化が進んでいます。米軍基地再編反対の運動とともに、自衛隊法改悪反対の声を上げ、法案成立を阻止する運動に取組みましょう。 これまでMDを支持してきたカナダは、MDに対する国民の反対が強いため、ついに不参加を表明しました。米にとっては大打撃となりました。日本でも反対を訴え続けることで、政府の支持・参加を止めさせることができるはずです。 |
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(05年3月6日) | |||||||||||||||