ごまかされてはいけない!
「不審船」攻撃・撃沈・殺人は違法な戦闘行動です。
恐怖感・危機感・不信感を煽り、
有事立法を進めることは大変危険です!


■ 「航行の自由」を認められた公海上での「威嚇射撃」=船体攻撃・撃沈・殺人は違法な戦闘行動です。
■「不審船」は日本領海侵犯をしたわけでではありません。
■公海上(日本の排他的経済水域)で発見され、公海上(中国の排他的経済水域)で攻撃・撃沈・殺人が行われました。


 奄美大島沖での「不審船」撃沈事件では、政府やマスメディアは「正当防衛」論を展開し、「攻撃されて当然」、「撃沈、死者が出ても全く問題ない」かのような風潮が作り出されています。しかし冷静に考えれば、恐ろしい戦闘行動、戦争行為がおこなわれたのです。


「不審船」発見場所−海上保安庁ホーム・ページより

 海洋条約法によれば国家の主権が及ぶのは沿岸12海里(20Km)の領海です。今回「不審船」が発見されたのはこの領海のはるか沖(奄美大島北東240Km)の公海上です。「不審船」は領海侵犯を犯したわけではありません。しかも海上では、領海においてさえ歴史的に「無害通航権」が認められており、船舶の航行は、沿岸国に脅威を及ぼさない限り認められているのです。

 今回「不審船」が発見された水域は日本の排他的経済水域といい、日本には水中・海底の資源を排他的に管理することができる権利が認められています。しかし、どの国にも「航行の自由」、「上空飛行の自由」等が認められています

 日本がこの水域で主張できるのは「漁業に関する主権的権利等」です。具体的には漁業に関し法律を制定し、これを執行し、違反を検挙することです。すなわちこの「不審船」が漁獲を行っていた場合にのみそれを検挙できるだけなのです。


      ◆海洋法条約についてはこちらへ  http://www2.justnet.ne.jp/~soyokaze/82.htm
                        http://www.glocomnet.or.jp/okazaki-inst/eezletter801.html


 このためもあって、今回の措置について政府当局の法的根拠は「漁業法違反」としています。しかし、政府・海上保安庁・自衛隊自身が今回のこの不審船にたいし、「魚網を積んでいない」、「漁業をやっている形跡がない」としています。「漁業法違反」で検挙しようとすること自身が矛盾しています。初めから法律などはどうでもよく、「北朝鮮」「不審船」だから攻撃、捕捉するという意図が見えています。

 また「威嚇射撃」の根拠は警察官職務執行法が適用されたとしています。しかしこの法律では相手に危害を加えることは禁じられています。威嚇射撃であるなら船首前方の海上やマストなどの致命傷、危害のでない部分に射撃しなければなりません。しかし今回は船尾や船首部分を撃ち抜く射撃をしています。当然乗組員への直接の被弾、船体に浸水や出火、沈没による船員の漂流等が想定されます。「車のタイヤを狙って撃ったようなもの」とはわけが違います。
つまり、根拠となる法律違反の事実自身があやしいのに、その上でさらに過剰な「威嚇」=危害射撃、攻撃が行われたのです。

 今回の事態は、冷静に考えれば、国際法、国内法を無視した危険な挑発的、好戦的行為であることは明らかです。


■ 「不審船」への先制銃撃、撃沈、漂流する乗組員15名を救助せず見殺しにした行為は「正当防衛」ではありえません。
■不当な攻撃、戦闘行為であり、殺人行為です。

 今回の「不審船」騒動では、自衛隊、海上保安庁は最初から待ちかねたように大部隊を派遣し、「今回は取り逃がすわけにはいかない」という、銃撃戦・撃沈をも最初から想定した、極めて好戦的、挑発的な異様な状態が作り出されました。公海上を航行するわずか100トンあまりの小型船にたいし、海保巡視船20隻、航空機数機、自衛隊対潜哨戒機P3C、イージス艦など護衛艦2隻を動員しての30時間以上にもわたる執拗な追跡と攻撃を行いました。

 報道によれば、自衛隊の対潜哨戒機P3Cが発見する数日前に、米軍からの「北朝鮮から工作船が複数出港」という情報があったこと、「暗号電波を受信」などと伝えられています。これからしても、最初から北朝鮮籍であることを承知の上で、「泳がせ」、強行策を準備していたことが十分考えられます。


不審船を追尾中の巡視船「いなさ」−海上保安庁ホーム・ページより


 20ミリ機関砲による船体を狙った射撃は「威嚇射撃」とはいえません。この20ミリ機関砲はジャイロによる自動照準付きの最新兵器です。波が4メートルもあるシケ状態の海上ですが、正確に何度も船首部分を撃ち抜いています。攻撃、戦闘行為そのものです。後日の報道で、「不審船」がロケット砲を持ち出したと言われていますが、自動照準付き20ミリ機関砲はそれよりはるかに強力な兵器であることは明らかです。

 船体射撃により「不審船」は出火しました。しかし海保巡視船は消火、救助もせずただ監視するのみでした。この事実も海保が最初から撃沈も想定した行動をとっていたことは明らかです。「不審船」が自力で消火、再度航行を始めるや再び船体を機関砲攻撃しています。

海上保安庁発表・新聞報道などから構成(ピース・ニュース)
日付 時刻 自衛隊 海上保安庁 官邸・危機管理センター
12月21日 16:00 海自哨戒機が発見    
  夕方     防衛庁、首相官邸に通報「99年工作船」と似た船がある」
12月22日 1:10 防衛庁が海上保安庁に連絡    
  2:05   「不審船対策室設置」  
  6:20   海保航空機が不審船発見  
  9:41   海保庁、航空機が中国航空管制区域に入ることを連絡。中国の了解を得た。  
  10時頃     安部官房副長官に第一報。
  11時頃 イージス艦「こんごう」など2隻を「威嚇のため」派遣。   杉田内閣危機管理監、大森官房福長官長補が危機管理センターへ
  12時過ぎ      安部官房長へ威嚇射撃の事前通告。
  12:48   海保「いなさ」が不審船確認  
  13:12   停船命令  
  14:30   「不審船」日中中間線を越える  
  14:36   「いなさ」威嚇射撃  
  14:37   「いなさ」威嚇射撃2回目  
  15:11   「いなさ」威嚇射撃3回目  
  15:14   「いなさ」威嚇射撃4回目  
  15:17   「いなさ」威嚇射撃5回目  
  16:16   「いなさ」船尾に向け射撃  
  16:30     安部官房長、首相官邸へ。小泉首相「万全を尽くせ」。山崎拓が阿部に「悪い前例を作ってはいけない。必ず捕捉しろ。」
  16:58   「みずき」船体射撃  
  17:23   「みずき」船体射撃  
  17:24   「不審船」から出火、停船  
  17:51   鎮火  
  17:53   航行再開  
  18:18   再び停船  
  18:20   航行再開  
  18:52   「きりしま」が不審船に接舷  
  18:53   不審船停船。接舷措置を実施中  
  20:00     危機管理センターから阿部帰宅。「海保の特殊部隊の到着を待ち、朝7時半に乗り込む(首相周辺)
  21:22   不審船6ノット無灯火で航行開始  
  21:35   「不審船」航行再開。「みずき」船体射撃  
  22:09   不審船が「あまみ」に発砲。「いなさ」が不審船に船体射撃  
  22:13   不審船沈没。15名が海上に漂流。  
  22:30     内閣官房、外務、国土省、防衛庁幹部、危機管理センターへ。
   23:45    6人が漂流しているのを確認。   
  0時過ぎ     安部官房長記者会見。「正当防衛」。
12月23日 1:00   漂流者全員を見失う。  

 海保巡視船の3回にわたる船体銃撃、出火・鎮火、再度の海保巡視船からの銃撃のあと「不審船」側が発砲しました。これを機に再度銃撃、撃沈させました。どちらが「正当防衛」といえるでしょうか。海保巡視船が「正当防衛」というのは全く正当性を欠いています。

 「不審船」撃沈後、15名の乗組員が海中に漂流したと報道されています。本当でしょうか。20ミリ機関砲による数百発(威嚇射撃と船体射撃合せて590発)にも及ぶ銃撃は、乗組員を殺害、負傷させていた可能性は十分ありえます。「威嚇射撃」で殺したとなれば問題となることが明らかであり、救助せずそのまま放置した可能性も十分考えられます。そうでなかったとしても、22時13分から全員が見えなくなる1時まで、2時間47分もの間、海保巡視船、航空機は一切の救助行為を行わず見殺しにしたということになります。

 このこともいかに挑発的、好戦的で非人道的な戦闘行動であったかを物語っています。


■ またしても、マスコミの異常な情報操作。
■「異常な事件」、「武装船」、「ロケット砲」、「正当防衛」等々。
■恐怖感、危機感、不信感、北朝鮮への差別・偏見を煽り、政府・官邸・海保・防衛庁の国際法逸脱、国内法逸脱の戦争挑発行為、殺人・見殺しを全く問題にしない。


 今回の事件に対し、マスメディアは「報復戦争」=アフガンへの侵略戦争のときと同様に異常な情報操作を行っています。政府・海上保安庁の「正当防衛」論をそのまま宣伝し一切の批判的な見解や論説を挙げていません。「正当防衛を根拠にした射撃はやむを得ない」、「異様な事件」、「武装した難民がやってくることもあるかもしれない」などとして、今回の事態を支持するだけでなく、より強い対応を要求している始末です。

 こうした日本のマスメディアの異常さは、韓国紙における今回の報道と比べれば極めて明らかです。

 朝鮮日報は「日本の『過剰』と『傲慢』」と題して、今回の措置が「正当防衛」ではなく先に攻撃を仕掛けた「過剰反応」であり、日本の経済水域でもない中国の経済水域で、しかも十分に拿捕が可能であったにもかかわらず撃沈したことを指摘しています。そして、「今回の日本当局が取った措置が日本の右傾化に対する懸念を増幅している」ことを警告しています。

         ◆朝鮮日報記事はこちらからhttp://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2001/12/24/20011224000023.html

 中央日報も日本の「過剰な反応」に警戒し、今回の措置が東北アジアにおける安全保障の環境にたいする影響を危機感をもって論評しています。

         ◆中央日報記事はこちらからhttp://japanese.joins.com/php/article.php?sv=jnews&src=pol&cont=pol0&aid=20011224224129200

 私達は、今、日本のマスメディアが極めて体制翼賛的で右傾化する日本の状況を一方で大きくささえていることに注意し、それを批判して行く必要があります。


■「不審船」事件により危機感をあおり、有事立法制定、領域外での武器使用基準緩和など、一層の戦争準備が進められようとしています。
■改憲に道を開き、再び戦前の侵略戦争国家の道へつながる有事立法に反対していきましょう。

 野党が、今回の問題についてきちんと批判をしていないことも問題です。野党・マスコミがまったく批判をしないことをいいことに、小泉政権、政府・与党は危険な戦争国家への道を更に進めようとしています

 先に攻撃したのは明らかに海保であるにもかかわらず「事実上、けがをしないと応戦できない法体系は問題だ」などとして、海保の「領域外での武器使用基準緩和」、自衛隊の「海上警備行動」の法整備、そして有事立法制定が準備されています。

 年頭の記者会見で、小泉首相は今国会での有事立法制定を表明しました。この中で特に危険なことは、この有事立法を適用する事態を、これまでのような「日本が直接攻撃を受けた場合」から「テロ攻撃」を想定した事態までに拡張しようとしている点です。

 米ブッシュ政権は、「テロ撲滅」を錦の御旗にして、アフガン政権を崩壊させ、更にソマリア、スーダン、イエメン、フィリピン、イラク、北朝鮮などに戦争を広げようとしています。

 米に追随して戦争国家の道を目指す小泉政権は、有事立法の実施を「テロ攻撃」、「テロ対策」にまで拡大し、有事立法を利用して米の行う戦争に一層緊密に協力しようとしていることは明らかです。

 戦後50年以上にわたり守られてきた憲法の平和主義を否定し、日本が米とともに侵略戦争に突き進む危険性が強まっています。憲法改悪に道を開き、日本を再び侵略戦争国家へと導く、危険な有事立法に反対しましょう。