ピース・ニュース学習会資料 |
テロ特措法の廃止! 給油新法反対!の運動に向けて |
この資料は2007.10.14 ピース・ニュース学習会で使用したものです |
1、 情勢 (ア) 6年ぶりに、悪法=テロ特措法が廃止・停止の見通し 9・11事件を契機に、ドサクサ紛れに突破された、憲法無視の侵略戦争参加法。それ以来一気に進んできたアフガン戦争参戦状態、イラク特措法、イラク戦争参戦、教育基本法改悪、憲法改悪準備法=国民投票法・・・とつづく日本の戦争国家化の流れを作り上げたこの悪法が、やっと終わりを迎える。 ここを基点に、日本の右傾化・戦争国家化の流れを、逆転し、押し戻すチャンスが訪れている。 (イ) 背景としての参院選・安倍の政権放り出し 「自民党の歴史的敗北」 背景 ・ 労働者・勤労者の生活を全く省みない政権運営 ・ その一方での、戦争国家化政策のための強引な国会運営(教育基本法改悪、憲法改悪国民投票法、教育三法改悪、米軍基地再編推進法、防衛省昇格法、イラク特措法延長、天下り正当化法、そして社保庁解体法等々) ・ 年金問題・政治と金の問題、それへの対応の不手際 逆転国会、民主は「生活が一番」 ・ 民主は、国民生活を守るという立場をとり、新自由主義的軍国主義的政権の修正を体現する立場で登場、躍進。 ・ 参院の運営しだいで、政府与党が提出する法案を阻止する力や、国政調査権行使、政府問責決議権行使の力を得た。 ・ ⇒従来の小泉・安倍政権のやり方は通用しなくなった。 ・ ⇒福田政権の、抱きつき戦法、逆質問戦法、参院抵抗戦術・・・ 自民の崩壊の危機を前に安倍退陣 ・政権の大混乱⇒テロ特措法の廃止は決定的に (ウ) 政府・与党は、新テロ特措法を国会に提出し、テロ特復活をめざす 政府与党は、17日にも新テロ特措法を閣議決定、国会に提出しようとしている。 アフガン侵略戦争参戦状況の停止を回復を図るため、戦争国家化の後退を押しどどめるため、テロ特措法復活をもくろんでいる。 「テロとの戦い」を維持、国際公約、国際貢献を口実として、海上給油活動の正当性を主張している。 そんな中で、今国会では、テロ特措法による海上給油が、イラク戦争へ転用されたことが追及され、政府・与党はこれに対して「誠実な」対応を余儀なくされている。 (エ) 小沢民主党はテロ特延長反対――しかし、別の形でのアフガン侵略戦争参戦を追求 「世界」11月号の小沢論文参照 小沢民主党は、テロ特措法・海上給油活動を「憲法違反」=集団的自衛権の行使として反対している。現時点で、政府与党が追求する新テロ特措法に組みせず、相容れない。 この点で、民主党内がぶれることのないように、小沢は論文発表した。 小沢の主張の根拠は、「国連決議が無い」 だから、小沢はISAF(国際治安支援部隊)への参加を追求している。 政府与党側は、ISAFの活動が戦闘地域で行われており、実際に戦闘を行っているとして、これこそ憲法違反だと主張している。 (オ) 対テロ戦争からの自衛隊の完全撤退を! 民主党過半数、これを利用した運動の課題 小沢の主張は、大変危険なものである。 アフガンでの戦闘行為にも直接関与しようという小沢の路線は、より危険な内容も含んでいる。 わたしたちは、「国連決議がない」、不法なイラク戦争転用があった、という民主党が政府を追及する論拠にのみ依拠して反対するというのではない。 対テロ戦争は、侵略戦争なのである。海上給油活動は、この侵略戦争への支援・参戦である。 海上給油にせよISAF参加にせよ国連決議があるにせよ、自衛隊の海外派兵は憲法が禁じる集団的自衛権の行使であり、武力による威嚇であり、武力行使に道を開くものである。 このことを世論に訴え、対テロ戦争からの自衛隊の撤退を主張し宣伝することが、わたしたちの第一の任務となる。 日本の戦争国家化の流れを逆転させるために、テロ特措法をここで完全に葬り去らなければならないのである。イラク特措法廃止、イラク撤兵へと突き進んでいくようにしなければならない。 一方、国会の院内闘争について 民主は「憲法違反」のテロ特措法反対を崩していない。この点で、民主の今の立場を、われわれが十分に利用していかなければならない。(小沢と利害が一致するが)民主党をぶれさせてはならない。 民主党は、国民の生活不安、戦争国家化不安を受けて躍進している。わたしたち運動の側が、民主党に圧力をかけて国民のサイドのこのような利害を推し進める勢力として国会で振舞うように促していかなければならない。 2.テロ特措法成立と自衛隊派遣の経緯 まず、テロ特措法自体が、異常な成立過程によって出来上がり、その内容も憲法や国際法に違反するものであることを振り返っておきたい。 (ア) 9・11からの経過 2001年9月11日 911事件発生 2001年9月12日 国連安保理決議1368 2001年9月20日 米国が、アフガニスタンのタリバン政権に対して、オサマ・ビンラディンらの引き渡しを要求 2001年10月7日 米英軍、アフガニスタンへの攻撃を開始 2001年11月2日 テロ特措法成立(2年間の時限立法)。初の戦時における自衛隊海外派兵 2003年10月 2年間の延長 2005年10月 1年間の延長 2006年10月 1年間の延長 2007年11月1日 期限切れを向える (イ) テロ特措法の制定(国会論戦の形骸化) 911直後から、この事件に乗じて、憲法解釈の変更や、有事法制、日米軍事一体化を一気に推し進めようとする勢力が勢いづいた。 9月12日 政府与党内から、「有事法制」の議論を加速せよとか、集団的自衛権の行使が出来るよう政府解釈を変更せよなど、様々な議論が噴出 9月15日 アーミテージ国務副長官による「ショー・ザ・フラッグ」発言 9月19日 小泉の独断専行―記者会見で戦争参加を発表「我が国の措置について」 9月25日 日米首脳会談(ワシントン)で小泉首相が集団的自衛権の行使を宣言 「アメリカの報復行動に同盟国の一員として、最大級の支援と協力を惜しまない」 10月5日 「テロ特措法関連3法案」の閣議決定、国会に提出 10月29日 同法成立。衆参両院での実質審議は、あわせてわずか10日間。国会審議は完全に形骸化してしまった。 (参考:PKO法で1年8ヶ月、周辺事態法では1年の審議をした。) (ウ) 基本計画の閣議決定 11月16日 テロ特措法に基づく自衛隊の活動の「基本計画」が閣議決定、即(20日)自衛隊の活動が実施された。 国権の最高機関たる国会の承認は、「事後承認」となり、実質的に政府の独断専行により戦争が開始されるという事態が発生した。 (エ)テロ特措法は憲法違反 @ その目的が、報復攻撃への協力である。(第1条) 報復戦争への自衛隊参加、軍事支援のための法律 =憲法が禁じる集団的自衛権行使そのもの A 地域的制約を外した海外派兵(第2条) 自衛隊の活動地域を、地域的に無限定とした。 ⇒もはや個別自衛権の枠内から完全に超えている (参考:日米安保は「極東」、周辺事態法でも「我が国周辺」という枠が付いている) しかも、自衛隊の活動は、米軍が定めた「コンバット・ゾーン」(戦闘地域)の中に入って実施されている。 B 自衛隊の活動は憲法が禁止する武力行使そのもの 「協力支援活動」「捜索救助活動」などは、武力攻撃と一体となった兵站活動の一環 それは、武力行使そのものである。 例えば、インド洋北部のアラビア海に派遣された海上自衛隊の補給艦は、空爆作戦に参加し、巡航ミサイルトマホークを発射する米イージス艦や駆逐艦船に直接給油している。 C 基本計画は閣議決定事項(第4条)、国会へは事後承認(第5条) 戦争への参戦が、国会抜きで決定される仕組みを作り上げた。 =国権の最高機関たる国会の否定、シビリアンコントロールの危機 D 「武器の使用」について、自衛隊の組織的軍事的行為としての武器使用を認めた。 自衛隊が戦闘状態に入ることを認めるもの。=憲法9条が禁止する「武力の行使又は武力による威嚇」にあたる。 E 国際法違反の戦争に日本が協力支援をするということは、国際条約遵守義務=憲法98条違反である。 3、アフガン戦争の本質=侵略戦争――テロとは何か この法律によって、現実に行われてきた活動が大問題である。それは、侵略戦争である。 さらに、この法律にも違反するイラク戦争への洋上給油が行われていた! ここで、アフガン戦争とは何であるのか、海上給油活動とは何であるのかを問題としたい。 (ア) Cアフガン戦争の本質=それは侵略戦争 米国のアフガニスタン侵攻に正当性はない 米国は、9・11に対する個別自衛権の行使としてアフガニスタンに侵攻した。 (=「不朽の自由作戦(OEF)」) 「9・11の実行犯がアルカイダである」「タリバンがオサマ・ビンラディンを匿っている」という米国の一方的認定で。(この認定自体が疑わしい。) テロの実行犯が国内にいるというだけで侵攻・攻撃を加えるというのは国際法上の根拠はない。しかも、アルカイダが実行犯であるのか、そもそもアルカイダとは何なのか、未だによくわからない。 仮にアルカイダという武装集団の犯罪があったとして、それでも、「犯罪」に対して自衛権を発動し、軍事力を行使することを、国際法は認めていない。 残虐極まりない破壊・殺戮行為 そして、米国を筆頭とする多国籍軍は、空爆の嵐、非人道的兵器の大量投入で ・ 数千、数万のアフガン人民を殺戮 ・ 主権国家であるタリバン政権を崩壊させた ・ 荒廃した国土を更に破壊し最貧国を戦争で打ちのめした のである。 日本はこのような戦争に、米・有志連合軍艦船や武装ヘリへの燃料供給によって加担したのである。(「海上阻止活動(OEF-MIO)」は、「不朽の自由作戦(OEF)」に組み込まれた作戦行動である。) (イ) 日本のインド洋での戦争加担の実態 政府発表の「自衛隊の活動状況及び実績」(8月23日)によると 2001年12月の活動開始から8月20日までに 17隻もの駆逐艦、護衛艦などの艦船がインド洋に常駐 11カ国の艦艇に計774回、約48万キロリットル(約220億円)の燃料を提供した。 国別に回数が最も多い補給先は米海軍の補給艦や駆逐艦などで、全体の半分近い350回、パキスタンの駆逐艦は2番目に多い139回 (ウ) 給油を受けた多国籍軍の艦船が公海上で何をやっているか 空爆 アフガン戦争開始当初、大量空爆の戦闘機出撃基地となり、巡航ミサイルトマホークの発射基地となった。 「臨検」活動 インド洋を航行する艦船に手当たり次第「無線照会」し、「不審船」とみなすや臨検を加え、乗組員を「テロリスト」名目で拘束する−−これが、「海上阻止活動」(OEF-MIO) 2001年9月以降 無線照会(航行する船舶に対して行き先などを尋ねる)が約137000回、 不審船に対する武装兵による臨検(強制乗船調査)は約11000回に登る 単純に平均すると実に一日100回近い無線照会、そして一日7〜8回もの臨検 それは、イラクで至る所に検問所を設け、無実の市民をテロリストとでっち上げて拘束するやり方と全く同じである。 インド洋における有志連合軍の軍事的プレゼンスは紛れもない武力による威嚇であり、戦争行為であり、地域の重大な脅威である。それへの自衛艦の派遣は重大な憲法違反である。 (エ) テロ特措法が対象とする「テロ」とは何なのか 米国や日本政府の言う「テロ」とは何か? それは、反米・反NATOの武装抵抗であり、民族解放的・民族独立的性格を帯びている。 「テロ」との戦いと称して、攻撃され、拘束され、抑圧され、人権侵害されている人々を見る必要がある。 どれだけの無実の市民が「アルカイダ」「テロリスト」とされ、9.11の容疑を着せられ、不当に逮捕・拘束されているのか。 そのうちその少なからぬ数の人々が「行方不明」になっている。 そもそも9.11の真相さえ明らかになっていない。アルカイダによる犯行が確認されていないし、アルカイダと旧タリバン政権との関係も不明である。またアルカイダとイラクとの関係は明確に否定されている。いったい、アルカイダとはなんなのか? アルカイダとテロリストを持ち出せば、何でも正当化されるということ自身が大問題である。 「テロ対策」「テロ防止」に名を借りた人権侵害、監視国家化、イスラム系市民の不当拘束、さらには公海上での臨検と戦争行為、これら不法行為を徹底して批判し、追及しなければならない。 (オ) テロ特にも違反して、イラク戦争支援 テロ特措法に基づいてインド洋に派遣された海上自衛隊の補給艦から、イラク戦争目的の艦船に補給がなされていた事実が暴露されている。 「第五艦隊」のホームページに、「イラクの自由作戦」で、「日本政府が、8,862万9,675ガロンの貢献」との記述があった。(江田けんじ衆議院議員の暴露) (このホームページは、すぐに閉鎖された。) 米空母キティホークへの間接給油が政府発表の4倍(「ピースデポ」による暴露) 沖縄に駐留する海兵隊をイラクに投入するために派遣された揚陸艦ジュノーへの給油(朝日新聞の暴露) テロ特措法は、言うまでもなくイラク戦争を想定していないし、イラク戦争は法律の目的外である。インド洋派遣の海上自衛隊のイラク戦争への支援は、テロ特措法の目的規定違反である。 国民の目の届かぬところで、法律違反の戦争参加をしてきたとは、完全に国民・国会を愚弄するものである。シビリアンコントロールの崩壊である。 この違法行為の責任を徹底して追及しなければならない。 (カ) 自衛隊の海外派兵を恒常化、既成事実化する手段 憲法が戦前の日本の侵略戦争を深刻に反省し規定した、「戦争放棄」、「武力行使」「武力による威嚇」の禁止への、対抗・反抗である。日本の戦争国家化そのもの。 さらには、絶好の侵略戦争実戦訓練となっている。 |