日本ビジュアル・ジャーナリスト協会JVJA 2003年度報告会
「イラクとパレスチナー2つの占領ー」
イラク戦争は多数のイラク市民の犠牲者を出しただけでなく、新たな占領という構図を作り出した。連日、反米攻撃が続き、混乱の一途をたどっている。一方、パレスチナでは停戦合意が破綻し、さらなる占領が進んでいる。2つの占領地、イラク、パレスチナから最新の映像をまじえて報告する。 |
2003年12月6日(土曜日)午後7時〜9時半 会場:中野ZERO小ホール/東京
日本ビジュアル・ジャーナリスト協会HPhttp://www.jvja.net/ |
ー上記報告会を聞いてきたので概要報告しますー2003/12/16記 |
外務省職員2人(イラクで米占領軍CPAの指揮下にいた)の葬儀が、まるで「靖国」に「英霊」を祭るかのごとくに行われていた同じ東京の空の下、東京の下町中野でこの報告会は行われました。
一方は、何の大義もない米の戦争を支持し2人の死を利用して戦争をいっそう推し進めようとする勢力であり、一方はその戦争の為に虫けらのように扱われ殺される民衆をとらえこの戦争を食止めようとする力の集まりであったように思えました。
イラクへの自衛隊派兵閣議決定強行が迫りくる最中、自衛隊派兵地イラク・サマワの取材から帰られたばかりの説得力ある現地報告。戦後初めて、戦地への自衛隊派兵が決定されんとする2日前、まさに戦争前夜といっていい状況の中での報告会であったといえます。
500人の会場は満席でした。非常に熱心に聞き見入り、真剣さが感じられたのは、こういった政治情勢下にあったからでしょう。
報告会の司会進行役は、JVJA世話人代表の広河隆一氏がされ、若い人たちが沢山サポーターとして動いていたことが印象的でした。
最初に6人のJVJA会員によるスライドショーがありました。
小林正典氏(世界のスラム)、佐藤文則氏(ハイチ)、桃井和馬氏(環境汚染)、山本宗輔氏(フィリピン)、
林克明氏(チェチェン)、亀井亮氏(パレスチナ)、映像は全部で約21枚。
アラブ系の哀愁を帯びた音楽が流れる中、音楽以外の解説はなく、映像は、白黒。
白黒であることがかえって、視覚という感覚器から直接、胸=心の深いところに染み込んでいく、、、
世界が苦しみに満ちていると感じた。
次に映像をバックにした5人のJVJA会員の報告が行われました。
綿井氏、豊田氏は、集会当日イラクより帰ったばかり。土井氏、古居氏は、集会前日パレスチナの取材から帰ったばかり。といった、最新報告でした。
豊田直巳氏 が、 「イラク報道に欠けていたもの」、綿井健陽氏 が、 「イラク最新報告」というテーマで、イラク・サマワの最新状況を報告された。両氏の現地報告は、イラクへの自衛隊派兵の大儀「復興支援」がイラクの現実を無視したものであることを証明するものであり、むしろ自衛隊派兵が静かな町を戦場にしてしまう可能性を示唆するものでした。
さらに綿井氏は、劣化ウラン弾で穴のあいた戦車とガイガーカウンターの映像をみせるなどして被爆についての報告もされた。
イラクバクダットに滞在されている森住卓氏からは、イラク・サマワで劣化ウラン弾を見つけたというスクープメールと映像が届き広河氏によって紹介された。
土井敏邦氏 は、 「米軍による住民銃撃 -2つの占領-」というテーマで、米軍によるイラク占領支配、イスラエルによるパレスチナ占領の現状について報告された。米占領軍がイラクの無抵抗な子供でさえ背後から射殺するさまなどが報告された。こういった実態をTV新聞で報道すれば米占領軍を支援する自衛隊の派兵など絶対に許してはならないと誰しもが感じることでしょう。それゆえ、戦争をしたい権力者は真実の映像をひた隠しにしたり捻じ曲げることをするのだと私は感じました。
パレスチナについては、 広河隆一氏 が「ヨルダン川西岸の分離フェンス」というテーマで、古居みずえ氏 が「パレスチナの子どもたち」というテーマで報告されました。
広河氏は、イスラエルの建設する「壁」が凄いスピードで造られていくさまを映像に写し出した。イスラエルが「壁」建設の為にパレスチナ人の住んでいる家や生活の糧であるオリーブの木を何十本もブルドーザーでねこぞぎ壊していく映像等々。もし、自分がこのパレスチナ人であったら、とわが身に置き換え胸が苦しくなる映像の連続であった。「壁」は、パレスチナ人を閉じ込め、時には一網打尽に射撃を加える刑務所であると強く感じた。古居氏は、一家族の日常生活を通じてこの「壁」の非人間性をリアルにえぐりだしていました。
最後に会場からの質問に報告者が答えました。
各氏の報告内容は、大手メディアの活字・映像では触れることの出来ない貴重なものであり、このHP上で数回に分けて報告したい。しかし、映像をバックにした報告を活字のみでまとめるために十分つたわらないところが生じる可能性がありますこの点はご容赦ください。
劣化ウラン弾を被弾したサマワの高射砲の映像とガイガーカウンターも映されておりメモリが4.560となっていた。
*この高射砲の写真は12日発売のフライデーにすでに掲載されてます。
綿井健陽氏 「イラク最新報告」―イラク・サマワの報告 |
*綿井氏の報告は、この報告会の2日後12/8にはニュースステーションで報道されている。
11/16イラク入りし報告当日もどったばかりで、編集したばかりのイラク・サマワのオリジナルビデオ映像をバックに報告がされた。
イラク・サマワ市内中心の映像
たくさんのイラクの人々がビデオの前にやってきて綿井氏の質問に口々に答える。
「日本人は歓迎する」「しかし私たちは軍隊はいりません」「軍隊は必要ありません」「水や電気がないんです」「軍隊はいりません」「子ども達は武器を怖がるかもしれません。銃やピストルはここには必要ありません」「日本の支援がくる事自体は非常に歓迎です」「水や電気がほしいのです」
市内のアーケードの横断幕の映像
横断幕の上のアラビア文字は「ようこそ日本のみなさん」。ところが下は日本語で「ようこそ自衛隊」となっている。これは、報告終了後会場から「なぜ日本語で『ようこそ自衛隊』がかかれたのか?」という質問をうけて、綿井氏が「イラクの人が日本語でも書いてくれと頼んだところ日本のフリージャナリストが『ようこそ自衛隊』と書いた」と書いた人の実名を語った。
サマワではこの3日間電気がきていない
電気がないとポンプが動かず水も上に上げられない。変電設備は犬小屋になってしまった。
夜の明かりにはアルコールランプを使って生活している。
ここの住人は「軍隊と日本の企業がくると聞いています」「企業が道路や建物を再建してくれると 聞きました」と話す。ここでは、企業がくるということに過剰な期待と幻想がある。
しかしこれは、フセイン政権時代からの老朽問題である。
サマワの病院の映像
産婦人科小児科病院に白血病疑いの1才2ヶ月の子供が入院していた。2ヶ月間40度の熱が続いている。サマワ市内の病院では治療できず、バクダッドやバスラに患者を送っている。
劣化ウランの被害で3〜4人/月この産婦人科小児科病院に運ばれてくるが治療できず移送している。
もっとも、普通の病気でも薬やCTもなく治療ができていないと、医師は語る。
*豊田氏はこの報告会3日後12/9に東京新聞朝刊紙上で「カメラが見たイラク・サマワの今」と題した記事を書かれています。同日の午後5時〜7時の4チャンネル・日本放送の「プラス1」、午後11時10分からの「きょうの出来事」でも報告がされていたようです。
自衛隊が持ちこむ給水の浄化装置には劣化ウランの除去はできない
6、7月イラクにいた時、自衛隊の派遣を前提として来ていた与党調査団とバクダッドで会った。
「どうするんですか」というと、「給水の支援をする」とを言っていた。自民党の国会議員に「自衛隊が持ちこむ給水の浄化装置は劣化ウランの除去ができるのですか」と聞いたら、「いやそんな能力はない」と答えた。
イラクサマワはサダムフセイン政権下でかなり開発が遅れているところ
自衛隊が行かなくても浄水場はきちっと動いておりフランスのNGOの援助もある
☆戦争で破壊されたわけではなくて、サダムフセイン政権下でかなり開発が遅れていて、30年前の水道設備、あるいは50年前の水道設備を使わなければならないということでの老朽化が現状。
☆ただし、浄水場のほうはきちっと動いており、電気がないとポンプがとまるということで浄水場がとまることはありますが、立派な浄水場が出来ていた。ただ、サマワの周辺地域、町を訪れると、広大な田舎と砂漠が広がっており、この地域に全部水道パイプを拓くということが財政的にできていない。日本のド田舎と思っていただければいいかと思う。
☆浄水については、早速自衛隊が行かなくてもアフタット(?)というフランスの技術援助のNGOが給水車を20台か50台(もう一回翻訳で確認しないといけないのですがと限定つきで発言)そういう数でもって定期的に浄水された水を村村にこの7月から運んでいる。ただし、残念ながらフランスの技術開発NGOが12月で給水のプロジェクトを終えざるを得ない。理由はお金がないということ。
☆ということで、自衛隊が行かなくても現実にNGOで出来るということをいいたかった。
☆それどころじゃなく、NGOとして入っていたICRC国際赤十字がこの間の米軍事支配、占領のなかで逆に撤退せざるを得ない状況にまで追い込まれているということ指摘しておく。
4月8日に初めて、劣化ウラン弾が使われる現場を目撃した!
A10という対地攻撃が、東京・霞ヶ関のようなところに劣化ウラン弾をばら撒いた!
☆12年前の湾岸戦争の被害者を取材するため、去年3回ほどイラクに行った。
今年はまさかこういう風になるとは思わない中で去年は取材したわけだが、それでもすさまじい被害者が出ていた。
☆今年3月バクダットに行った。4月8日に初めて、劣化ウラン弾が使われる現場を目撃した。
A10という対地攻撃が、東京で言えば霞ヶ関にあたるようなところに劣化ウラン弾をばら撒いていた。
☆劣化ウラン弾だとどうして分かるんだということだが、現場に行って確かめたところ、東京あたりの30倍くらいのガンマー線が検出さた。湾岸戦争では南部の砂漠地帯で主に使われたというように聞く。今回の戦争では、東京で言えば住宅地で劣化ウラン弾使われたような状況についは、今後どう被害が出るのかという懸念がある。
劣化ウランにやられたかどうか見るのは割合簡単
☆ 自衛隊がサマワに行く街道のあたりやバクダットのあたりに11月27日の夜入った。
☆森住さんの写真見ても、劣化ウランにやられたかどうか見るのは割合簡単だ。
森住さんの写真で高射砲が写っていた。壊れていなかった。壊れていないのになんか焼け焦げているようなのがあったり、穴が開いてたりするというのが特徴だと思う。つまり、大きな爆弾によってやられたような爆発はしていないのでそのままの形で残っている。劣化ウラン弾にも最近いろんな種類が出て、森住さんの報告にあったようにアパッチとかA10攻撃とか機関銃弾、大きな機関銃弾で撃ったものは、機関銃ですから穴があいているだけで爆発はしていない。ものすごい大きな発火はするが爆発はしていないので、戦車、高射砲などがそのままの形で残っている。
壊れていないので、変だなと思って見てみると穴が開いていたりする。そして、放射線を測って確認する。こういった作業を、今年のバクダット陥落以降、6月〜7月の間してきた。
ラマデイ、ファルージャ、バクダットから西に100キロあたりでも、いくつもの破壊された戦車から、東京の平均の場所によっては1000倍の放射線がでていました
☆6、7月の取材では、米兵が死んだり、米兵によってイラク市民も殺されたりしているラマデイ、ファルージャ、バクダットから西、100キロあたりでもいくつもの破壊された戦車があり、東京の平均の場所によっては1000倍の放射線がでていた。
劣化ウラン弾に被弾した戦車・装甲車の部品が廃品で出回っている
☆こういったものが今回の取材では一部片付けられていた。
いいことかなと思ったんですが、米軍が片付けたともいいきれないものがある。壊れたイラク軍の戦車なり装甲車というのはそのまま廃品ででまわる。銅線や、タイヤ、ベアリング、アルミなどは、高く売れると廃品として回収しお金にするというようなことがある。しかも、回収する人たちは、劣化ウランかどうか分からないで持っていく。
自動車の多い幹線道路上で劣化ウラン弾にやられた戦車をみつけた。
☆バクダットの南60キロほどサマワに行く途中、自動車の多い幹線道路で劣化ウラン弾にやられた戦車をみた。穴が開くはずがない硬い鉄の戦車だが一個所穴が開いていたことから、劣化ウラン弾にやられてのに間違いないと思っった。そこは、バクダットが東京として、サマワが静岡県の御殿場あたりなのでちょうど横浜あたりのところだ。東京あたりで0.1ミリシーベルトですが、ここは、19シーベルト。もっと上がっているところも有った。
☆硬い鉄の戦車に穴が開いているビデオ映像:穴にガイガーカウンターを近づける映像と「300倍いっている」「ここは1000倍ですね」といった声が流れる。
☆劣化ウランで被弾した戦車には何度も雨が降っています。劣化ウランは水溶性なので酸化ウランとなって水に溶けて地下水に入っていってしまう。ビデオ映像(一面畑の映像)をさし、こういった水たまりからも当然放射線は出る。
空からではなく地上軍が機関銃で劣化ウラン弾をつかった形跡
ー劣化ウラン弾にやられた戦車の穴の位置と大きさから推測ー
☆バクダッドの南方、東京で言えば鎌田あたり、バクダッドゲートという南の入り口に、バクダット市内周辺から集めてきた軍の廃品の墓場、ごみ捨て場がある。装甲車戦車、軍用トラック、高射砲。ここに捨てられた装甲車に小さな穴があった。これまで見た戦車のような大きな穴ではなく側面に開いている。これは、劣化ウラン弾が、空からアパッチとかA10攻撃機だけで使われているのではなく、戦車かなにか地上軍が使った機関銃にも使われていたのではないかと思う。A10攻撃は30ミリ機関砲だが、この装甲車の穴はもっと小さく、15ミリとか10ミリではないかと思われる。
☆たった1発で、劣化ウランに被弾した戦車の中の温度は2000度とか3000度に一瞬にしてなり、中の人は全員死ぬ。兵器としては安くて有効だということで米軍は多用した。
バクダッドの病院ー南部バスラの白血病、癌が、湾岸戦争前に比べて10倍ー
☆南部バスラの白血病、癌が、湾岸戦争前に比べて10倍になったという数字を雑誌に書きTVでも報告してきた。ところがそれをもって”豊田はサダム政権のプロパガンダに使われているではないか”というような話が聞こえてきていた。ところが、今年の戦後の取材(サダム政権下でも取材したバクダッドの病院)で、医師たちはサダム政権下と同じ数字を挙げた。今回の取材においてもやはり医師たちは、白血病、癌患者の多発を言って」いた。よって、去年新聞やTVで上げた数字は訂正する必要はないと思う。
最後に一言、自衛隊の派遣はする必要がなくて、すでにNGOがやっている
むしろ行くことでNGOの活動が出来なくなる
☆最後に一言、自衛隊の派遣はする必要がなくて、すでにNGOがやっている。
むしろ、自衛隊が行くことによってNGOの活動も出来なくなる。現実に今も日本の市民から預かったお金で先ほどの病院を含めて白血病の治療薬が細々と配られています。そう行った活動もむしろ出来なくなるでしょう。
次回は 土井敏邦 氏の 「米軍による住民銃撃 -2つの占領-」を報告します
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