オバマ大統領のイラク演説に対する
退役兵と現役兵の回答

Veterans and Service Members Respond to President Obama's Iraq speech

 米で反戦運動の新たな動きが始まっています。こうした動きはLIPのサイトなどでも紹介されています。
 アフガニスタン、イラクへと派兵された退役兵たちが、その目で見て、体験した真実から反戦の声を上げ始めたのです。そうした運動は、イラクやアフガニスタンなどでの占領と植民地化に反対し、侵略戦争により被害を受けた現地の人々への追悼や謝罪、補償を要求し、そうした要求を自らの待遇改善と結びつけて要求する、極めて先進的なものです。

 更に、それは金融危機や恐慌のもとで、国家予算を大企業や富裕層等の救済ではなく、貧困層・労働者・大衆への救済のために使うことを要求して、反戦運動と人民大衆の生活を守る闘いの要求へと前進しています。

 そうした運動のひとつであるANSWER「退役兵と現役兵タスクフォース」の宣言を紹介します。
 
(翻訳・見出しはピース・ニュース)

 オバマ演説は何を約束したか


 米の退役兵と現役兵士そして労働者にとって、オバマ大統領のイラク演説は、来るべき4年間を垣間見る待望のものであった。

 イラクで闘った我々であろうと、そこで友人や家族を失った人であろうと、あるいはペンタゴンに年間1兆ドル以上を注ぎ込むことによる経済的影響を被った人であろうと、米国ではほとんどの人がイラク戦争のために生活に影響を受けており、心から本当の変革を望んでいるのだ。

 しかしながらオバマ大統領の演説は、以前から植民地化されている世界の我が同胞はもちろんのこと、米の軍人と彼らの家族、労働者に対しても苦難がこれからも続くということを約束するものでしかなかった。



3月21日のペンタゴンへ向けたのデモ行進
(VSMTFのホームページより)
 イラクからの撤退はまやかし

 「非戦闘」部隊−その使命が戦闘であることは明白だが−を将来は五万人までに削減することは、単にブッシュ政権がもともと想定していた計画へ戻ることでしかない。

 演説は将来これらの軍隊を撤退させる何の確固とした約束もなく、イラクの近隣諸国に対して、同国が米軍国主義の拠点であり続けると警告するものであった。イランとシリアへの脅迫は継続し、アフガニスタンとパキスタンへの暴力は増加している。

 イラクとアフガニスタンでの犯罪的な占領に反対して闘ってきた退役兵と軍人として、我々はオバマの演説に感銘しなかっただけでなく、オバマがイラク戦争を称賛したことに対し怒りを覚えたのである。

 オバマの演説には、この侵略戦争で虐殺された百万人以上の無実のイラク人に対する一言の言及もないばかりか、占領下で耐えているイラク民衆の苦難への言及さえなかった。

 退役兵と軍人に対する侮辱

 睡眠障害や異常に興奮した不眠症のような心的外傷後ストレス障害の破壊的な症状の一部についてオバマは指摘したが、無実のイラク人を殺し、拷問にかけ、威嚇するために派兵されているという罪の意識を背負って生きるトラウマを理解することはできなかった。

 明らかに退役兵と軍人に迎合しようとして、オバマが単純に「よくやった」と我々をほめたということは我々に対する侮辱である。我々がイラク人を気に掛けないと考えるのは我々の人間性に対する否定である。




3月19日 ワシントンDCの退役軍人局に掲げられた
「退役兵は戦争と占領に反対する」という横断幕

(VSMTFのホームページより)
 イラク占領の狙いは植民地化

 そしてまた、戦争に対する一言の批判もなかった。オバマは単に、人々をサダムフセインから解放し彼らに自由と独立をもたらすというブッシュ政権の一連のイラク侵略政策を継続したにすぎない。

 軍人が占領の植民地的な本質を理解する知性を持っていないとするオバマの考え方もまた侮辱である。我々は大量破壊兵器を発見するという口実のもとにイラクへ侵攻したが、結局はイラクの油田を確保するために、一直線に進軍しただけである。

 我々はイラク人に自由をもたらすという口実で都市を占領したが、やったことといえば残虐な警察国家を押し付けただけである。占領の本当の理由と正当化についてのオバマの説明は、我々が直に見てきたことと全く相反する。そしてそれはオバマの言う「チェンジ」(変革)が現実とはかけ離れているということを示している。

 勝ち取られた待遇改善 - 草の根運動による反撃の結果

 しかしながら我々はあえて、軍人の給与と手当、退役軍人局の基金の増額についての約束については歓迎する。

 しかしこれらのものは退役兵と軍人に対する単なる贈り物ではない。退役兵とその協力者が組織した数年がかりの草の根運動の反撃の結果なのである。

 彼らはこの闘争の成果により、最高の称賛と祝福を受けるに値する。

 そしてまた、退役兵と軍人が力強い勢力であること、これらの給与、手当て、退役軍人局基金の増額が退役兵と軍人を寄せ付けまいとする傾向の中でかちとられたものであること、を認めなければならない。

 給与と手当の増額が前向きの成果であるが、彼らは真空地帯に存在しているわけではなく、全体の予算との関係の中で考えられなければならない。退役兵は単に退役兵であるわけではなく−我々は労働者であり、学生であり、教師であり、子供をかかえる親なのだ。

 ウオール街の利益のための戦争に反対しよう

 オバマにより提案された新たなペンタゴンの予算は歴史上最も莫大なものである―ブッシュ政権の予算をさえ少なく見せるほど。オバマはまた、歳入赤字を半分に減らすと宣言した。ペンタゴンに湯水のように注ぎ込み歳入赤字を半分に減らすのに使われる金は、社会保障、教育、雇用から剥ぎ取られるということだ。

 これは、すでに不釣り合いに経済的困窮、失業、ホームレスを余儀なくされている退役兵の共同体にとって、更なる打撃である。我々は全ての人民が―退役兵だけでなく―住宅と仕事、医療と教育へのフリーアクセスの絶対的な権利を持つと信じている。勝利を勝ち取ったが、闘争はまだ始まったばかりだ。

 オバマ大統領は演説でイラクの支配戦略が変わったと簡単に説明した。しかしその目的は変わっていない。オバマは今後少なくとも3年間、軍人が殺し殺されるためにイラクに派遣され続けることを約束した。

 米の軍人たちはその地域のどこかでウオール街の更なる利益のために大砲の餌食として使われ続けるのだ。そして全ての労働者人民の必要のために使われるべき巨大な資源が違法な戦争のために使われるのだ。