さて、再び野生の海洋ほ乳類が捕獲されようとしています。既に、この計画のためにロシア沖でオルカ〔シャチ)が捕獲されようとして、幸いこれは失敗しましたが、明日にでも、また捕獲されかねません。
昨年、和歌山県太地町で捕獲され、国内外の批判にもかかわらず水族館に買い取られた5頭のシャチのうち、わずか4カ月で2頭が死亡した直後なのに、また同じ悲劇を繰り返すのでしょうか?
この計画とは、2001年の新館完成を目指して、名古屋港水族館が国内外から野生を含め、オルカ(シャチ:4〜6頭)やハンドウイルカ(15〜16頭)、さらにシロイルカ(ベルーガ:4〜6頭)を捕獲または購入するというものです。この計画全体に関しては、総額200
億円という大金が費やされますが、次の点で適切でないと考え、計画の事業者に対して、その中止あるいは変更をお願いする署名を集めることになりましたので、皆様にもご協力をいただければ幸いです。
名古屋港水族館の新館計画における問題点
1)野生のイルカ・クジラの生態研究が進んだ結果、シャチやイルカなど広い大海を群れで回遊するような動物の生態は、水族館での飼育とかけ離れていることが分かってきました。その結果、欧米ではイルカやクジラの人工的な飼育に反対する考え方が広まり、イルカやクジラを飼わない水族館が増えつつあります。今回の計画は、このような時代の動きに逆行するものです。
2)昨年の太地のシャチ捕獲事件は、国内外の大きな批判を浴び、日本沿岸でのシャチの捕獲は当分行われない可能性が高くなりました。4〜6頭ものシャチを海外から購入するとすれば、輸送費なども含めて総額でおよそ10億円以上の大金がかかります。野生では50年以上と言われているシャチの寿命は、捕獲後、飼育下では平均で5〜6年しかありません。飼育に経験のない名古屋港水族館で、果して何年シャチたちが生き延びられるでしょうか。
3)水族館は「教育的施設」といわれています。しかし、シャチやイルカを本来の住処である海から切り離して展示することは、本当の意味での教育とはいえません。また、家族で暮らす動物を、無理やり捕まえて人間の娯楽のために使うのは、弱い立場のものに対しては力ずくで何をしても構わないという非教育的なことです。
4)水族館の今日的な役割は、できるだけ本来の自然を人々に伝えることです。藤前干潟の保護などを通じた伊勢湾の生態系の保全やその調査、座礁したイルカやクジラの保護とリリースなど、市民の望む水族館の新しい役割は他にもあります。また、このような先験的な方法は、世界にも名高い内田館長だからこそできることです。そうした地球環境を考え、未来に受け継ぐことのできるプロジェクトに、計画を変更すべきです。
|