第一の敵 |
映画上映とトーク ウカマウを読み直す ;『第一の敵』に見られるエスニシティーと暴力 ●1974年に作られたボリビアのウカマウ集団の映画『第一の敵』は、南米のインディオスをめぐる、さまざまな形態の暴力が描き出されているが、そのシンプルなストーリーにあって、ウカマウの映像が持つ膨らみゆえに、今なお、さまざまな問題を提起する映画となっている。この映画が直接下敷きにしているのは、ボリビアのアンデス高地から密林地帯に転戦して1967年に殺されたチェ・ゲバラであるが、この映画を少しだけスライドさせると、背筋が寒くなるような暴力で知られるペルーのゲリラ、センデロ・ルミノソと重なってしまう。またさらに、少しだけスライドさせると、1994年、NAFTA(北米自由貿易協定)が発効した日に、メキシコのチアパス州で、サパティスタ民族解放軍(EZLN)が起こした武装蜂起とも重なり合う。このような膨らみを持つのは、ウカマウの映像の持つ質によるものと思われるが、こういうものを重ね合わせるときには、暴力という言葉のみでくくるよりは、ウカマウの映像が内在させていたエスニシティーという眼差しが重要になってくるのではないだろうか。センデロ・ルミノソが拠点としていたペルーのアヤクーチョというところも、サパティスタが蜂起したメキシコのチアパスも、今暴力が蔓延している世界が忘れた「世界の片隅」であった! 世界の片隅から、今、世界を眼差す。(濱村) |