NPO Q&A
■NPOに関する基本的な疑問について考えてみるコーナーです。
中村陽一さん(NPO推進フォーラム/都留文科大学助教授)に監修をしていただきました。
非営利ってなに?
Q――先日、友人から「NPOは非営利組織ということだけど、職員がいて給料を支払っているんだから、営利なんじゃないの?」と聞かれたんですが。
A――もっとも誤解されやすいところですが、そもそも「非営利」というのは、ここでは利益の配当をしないということなんです。例えば株式会社などでは、株主が会社に資金を投資して、会社はその信託を受けて事業活動を展開し、利益を株主に配当することになっていますが、それとは異なり非営利ということは、利益の配当をぜずに、組織のもっている社会的・公共的な目的に再投資する組織という意味です。
ですから給料をもらっている職員がいてもそれはその団体の経費であって配当ではないと考えることができます。Q――でもそうすると、不況下の中小企業などは、ぜんぜん配当ができない、ボーナスも出せないということはあると思いますが、それは非営利ということになるんでしょうか?
A――いえいえ、そうは言えません。もちろん利益を仲間内で分けてしまっては非営利とは言えません。つまり使命(ミッション=目的)の違いということで整理するとわかりやすいと思います。
どんな零細企業でも基本的には事業活動を通じて利益をあげることを目的としていますね。これに対して、NPOはそれぞれの団体がもっている社会的・公共的使命(ミッション)を実現していくことが最終目的です。Q――では例えば、行政なんかは非営利団体と言えるのでしょうか。
A――そうです。既存の社会福祉法人やあるいは生協や労働組合なども非営利団体と考えられます。ワーカーズコレクティブなども、この意味では非営利団体ということになります。
Q――なるほど。すると省庁や自治体の外郭団体なんかも非営利団体ということになりますね。そういう団体の職員や理事が結構いい給料もらっていたりすると、なんか納得がいきませんが。
A――中央省庁の外郭団体の理事などが不当に高い給与や退職金を手にしているのも、その団体の経理をはじめ、さまざまな情報が表に出てこないからともいえますね。
非営利組織であるにもかかわらず、一部には、目的を忘れて役員報酬をどうやったら得られるかということしか考えていなくて、社会的には所轄の官庁に「公益にかなっている」というお墨付きをいただいて、それですましている団体がある。また、社会福祉法人や医療法人が患者や居住者を虐待したりする事件がおきるのも、やはりチェックしていくしくみがないからだと思います。
非営利団体だから給料が安いのは当然という考えには賛成できませんが、社会的に不当な金額を得ているということであれば批判されて当然ですね。NPO法(特定非営利活動促進法)では団体の情報公開を義務づけていますが、その団体の予算がどのように使われているかが、社会的に評価されることが必要だという考え方にもとづいています。
結局その団体が「非営利」なのかどうか、「公益」にかなっているかどうかは、情報がオープンにされて、団体の外側からきちっとチェックでて、そのうえで寄付したり活動に参加する市民の側一人一人が判断できるということになります。Q――よく「非営利組織の活動は無報酬でやるべきで報酬をもらってやるべきではない」という意見を聞きますがこれについてはどう考えればいいのでしょうか?
A――「非営利の活動はあくまで無報酬で行うべきだ」というのも一つの考え方でしょう。でも、有償でやるか無償でやるかは、そもそもその団体の目的に対してどういう形態で活動するのが最も効果的なのかということとして考えればいいのではないでしょうか。
たとえば、介護サービスひとつをとっても、行政の行っているサービスから、社会福祉法人のおこなうもの、企業の行うもの、市民活動として提供されるものなどさまざまです。
このうち市民活動として行われているサービス提供のうち無報酬で行われているものを一般的にボランティアと呼び、サービスの利用者から金銭などを受け取って運営しているものを有償事業、あるいは市民事業と呼んでいるわけです。そのどちらが正しいあり方かというよりも、どういう形で運営するのが最もその目的を達成しやすいかということなのだと思います。
たとえばサービスをきちっと提供していくことを考えた場合、ある程度の報酬を介護者(サービスの提供者)にわたすことによって、介護者を多く集めることができ、結果、全体として安定したサービスを供給することができるとすれば、これはサービスの利用者にとってもプラスになりますよね。また利用者と介護者の関係を金銭を介在させることによって、対等な関係としてきちっと位置づけることができる、という話もよく耳にします。Q――サービスの提供者は無償のボランティアでその団体の職員は報酬をもらっている場合もありますが。
A――組織の形態や、事業の内容によっては、無償のボランティアの人たちの活動を支えるための仕事が必ずしも無償労働でできない場合があります。要は、有償と無償の活動をうまく使い分けていくことで、活動を発展させていくことが大切なのではないでしょうか。