九七年十月十一日、アジア連帯講座は付近に大使館が多い恵比寿駅前で、董建華香港行政長官の来日に際して、香港の民主化の後退を許さない街頭宣伝を行った。董建華は、返還後百日が経過した香港が返還前と何ら変わりなく、「安定性」を維持していることを示すためアメリカをはじめ各地を訪問している。日本訪問は十月十五日から三日間の日程である。 しかし表面的な「安定」とは裏腹に、民主化の後退は進んでいる。九月二十八日には、親中派議員で固められている臨時立法評議会が、九八年五月二十四日に行われる返還後最初の立法評議会(国会)選挙方法を定めた法律を可決したが、これは民主派にとって不利なものとなっている。 他にも、返還直前に可決された労働組合の団交権を定めた法律などが、返還後間もなく「凍結」された。また香港の裁判所は、大陸からの「不法」越境児童の居留権に対して、その「不法」を理由に認めず、多くの子供が今後香港の社会生活や社会保障の枠外で無権利のまま生活していかなくなるかもしれない。また資本の中国本土移転により失業率が上昇しているなかで、女性、高齢者の再就職が非常に困難な状況になっている。 その一方で香港政庁は、中国本土の労働者を含む外国人労働者の受け入れを拡大せよという財界の要求をほぼそのまま受け入れようとしている。董建華自身が返還式典で「解決に向けて全力をかける」と誓った住宅難問題も全く解決の方向性が見えていないのが現状だ。 アジア連帯講座の仲間はマイクで中国の市場化にも触れ、国有企業の解体は労働者の就業権・社会保障の解体と一体であり、それに乗じて世界・日本の企業が中国市場に進出していることを指摘、その軍事的バックボーンとしての日米新安保体制があることを訴えた。 また現在沖縄・名護の声を全く無視して計画されている海上ヘリポート基地にも触れた。「沖縄の声を全く無視した形で決められた新ガイドラインは、戦時体制作りの一環であり、沖縄・名護に建設が予定されている海上ヘリポート基地は、それをさらに進めることになります。沖縄に基地は必要なのでしょうか、沖縄・アジアの民衆に銃口を向ける日米安保が本当に必要なのでしょうか」と呼びかけた。(H) |