四月十七日、アジア連帯講座・春の企画と題して「教えられなかった戦争・沖縄編」ビデオ上映会を文京区民センターで行った。ここ何カ月か各地で映画上映会がたびたび催されている「教えられなかった戦争・沖縄編」だが、評判にたがわず、幅広く基地に関する問題を考えさせる映画だ。 映画の内容は、琉球王朝の時代、明治政府による「日本」への沖縄併合の時代から現在に至る沖縄の歴史と九十五歳になってなお、反基地の闘いを続ける阿波根昌鴻さんの生涯をオーバーラップさせながら淡々と続けられている。 迫真のドキュメンタリーというより、沖縄から平和を考えるための教科書といったおもむきが強かったのは意外だったが、それでも、当たり前のことだが、随所に基地の重圧に決して屈しないであろう沖縄の人々の強烈なメッセージが発せられている。 阿波根さんの、常に卑屈にならず、悲壮にもならないユニークな行動ぶりにも勇気づけられるが、僕が映画の中で一番好きな場面は、それまで米軍基地から自分たちの土地を守る闘いをしてきた沖縄の人々がベトナム反戦のために立ち上がる場面だ。その場面のバックには、大工哲弘が歌う「インターナショナル」が流れているのだが、まだ自分が生まれる前のデモの映像を見ながら、そこには手ひどい抑圧を受けてもなお、別の抑圧を受ける人のために立ち上がれる喜び、楽しさが満ちあふれているように思えた。 映画は九七年の海上ヘリ基地建設計画が持ち上がった時期までを扱っていて、ラストは沖縄の風景の中にたたずむ沖縄の反戦地主の姿が次々と登場して感慨深い。見終わって、重いものを突きつけられたという感じが残らないので、沖縄についてそれほど関心を持たない人が見るにはうってつけの映画かもしれない。 さて、今回のビデオ上映会、参加者は多くなかったが、なかなか楽しかった。なかに「『教えられなかった戦争・フィリピン編』が面白かったので来てみた」という大学生の男女がいた。今回の上映会についての感想はあまり聞けなかったが、男性の方は「フィリピン編」の企業侵略に対する切り口の鋭さに影響を受けたらしく、彼は大学四年を迎えたがいま「素直に就職活動をする気にはなれない」と言っていた。また会えるかもしれない。 そして一番嬉しかったのは、区民センターで働くおばちゃんが、映画の後半をドアの後ろで見ていたらしく、最後に機材を片付ける時にしきりに「ああいう映画は見なくちゃダメよ」と言ってくれたことだった。ちょうど都知事選の後だったので、「石原さんも見なくちゃダメね」と言っていた。石原新都知事はおばちゃんの言葉にしたがってこの映画を見てから、数々の差別発言を撤回しろ! アジア連帯講座はこれから五月にその「教えられなかった戦争・フィリピン編」の上映会、六月にパレスチナに関する講演・上映会を予定している。ぜひ、多くの皆さんの参加を。 (谷 清)
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