性差別と暴力をなくすために
私たちになにができるのか
2005年7月19日 アジア連帯講座 公開講座
講師 角田由紀子さん(弁護士)


 
七月一九日、東京文京区の文京区民センターでアジ連公開講座が開催された。
テーマは「性差別と暴力」。 セクシャルハラスメントによる被害者の救済など、女性の権利に関する問題について第一線で活躍している弁護士・角田由紀子さんを招いた講演会が実現した。
 アジ連の仲間たちは角田さんの同名の著書「性差別と暴力」の自主学習を続けてきた。そのひとつの集約点として今回、本講座を企画し た。
 まず司会が、昨年からのアジ連内部でのフェミニズム学習の経過を紹介。その後さっそく講演(別掲)に移った。角田さんは、「日本の司法界はまだ男性中心で、かつ戦前の封建的家父長的な古い考え方を引きずっている」と指摘した。それはさまざまな裁判の経過にも散見される。
 たとえば女性が強かん事件の被害者として「認定」されるためには、「被害者資格(要件)」を満たす必要がある。これは性暴力犯罪に限って必ず持ち出される。女性の「上品さ」や「貞操観念」を基準としている。被害者は法廷でこの「資格」について、本人や周辺の言動など、過去にさかのぼって細かく厳しく審査される。「加害への激しい抵抗や逃亡」、そして被害後には「淑女たる沈黙」が求められる。
 こうしたステレオタイプ化された被害者像との比較で、証言の信用性が検討される。裁かれるのは加害者である男性ではなく、被害を受けた女性なのだ。
 ポルノグラフィーが与える女性虐待の価値観は、若者や少年たちの性暴力犯罪を誘発している。ビデオを手本にした犯罪が横行している。
 労働現場における賃金差別の慣行は、女性への蔑視を、観念を超えた説得力をもって男性に植えつけている。経済的な差別は、女性の男性への依存を固定化し、それがDVを生む温床にもなっている。女性への性暴力は、こうしたさまざまな要因が絡み合って生み出されていく。角田さんは限られた時間のなかで、ていねいに解説された。
 講演の後、質疑応答が行なわれた。参加者からは、「性差別」という言葉の持つ重さについて。それに対する男性の拒絶反応について。職場での性差別的な仕事の実態について、などの質問が出された。
 角田さんからは「言葉と表現」の重要性が強調された。性差別的である行為や言動が、それを表現する言葉の不適切さによって、覆い隠されたり誤解されてしまう。
 たとえば「従軍慰安婦」と「日本軍性奴隷」。「小児への性暴力」と「小児性愛」や「性の嗜好性」。「夫婦間暴力」は、そのほとんどが相互の行為としての「間」ではなく、男性から女性への一方的なものであること。「通信傍受法」は「盗聴法」であることなどなど。角田さんは「憲法9条改悪」や、24条の男女平等規定の改悪にも触れ、改憲派の家父長制、家族主義の強化の意図を批判した。
 多忙と激務のスケジュールの合間を縫って、遠路はるばる来場された。参加者は実に貴重なお話を聞くことができた。私たちは角田さんの提起を受けてさらに持続的に謙虚に学び、実践することによって、みずからを、そしてこの社会を少しでも動かしていきたいと思う。(S)