2000.12.9 アジア連帯講座 公開講座

先住民運動
その抵抗の歴史といま

講師  太田昌国さん




 12月9日、文京区民センターにおいて「先住民運動 その抵抗の歴史といま」と題して、ビデオ上映と太田昌国さんを招いた講演会が行われた。
 まず太田さんが翻訳を担当し、グアテマラ先住民の抵抗を描いた「風の記憶 先住民抵抗の500年」が上映された。この映像は1990年に起こったグアテマラ国軍による先住民虐殺をめぐって、先住民、先住民運動の支援者、軍人、政治家をそれぞれ取材し語らせ、恐怖政治に屈せずあらたな抵抗を開始する先住民の姿が描かれている。
 虐殺を指揮した軍人は「私は先住民の人々を愛している」などと言いながら「虐殺などでっちあげだ.行方不明の人々は、キューバかメキシコにいるのだ」と言ってはばからない。虐殺の真相を究明することが一つの抵抗なのである。「スペインの征服は歴史上、実に素晴らしいことだった」と語る政治家。上流階級のために毎年開催される「ミス・マヤ コンテスト」の様子。「私は先住民を保存する。彼らをディズニーランドで踊らせてグアテマラ文化を世界に紹介する」と語る大統領候補などが映し出され、グアテマラの6割を占める先住民たちがどのように尊厳を奪われ、抑圧されているかが伝わる内容だ。
 ビデオの次に、太田さんの講演が行なわれた。太田さんは講演でまず、オーストラリアで行われた先住民・アボリジニーと白人の和解を求める集会230万人が集まったことを紹介して「先住民をめぐるこのような動きは、8年前のコロンブス上陸(征服)500年をめぐる様々な取り組みにあった」と語った。
 「8年前、スペインやポルトガルではコロンブスの上陸・征服を肯定的に見る催しなどが開催される一方、先住民の間では、500年が自分たちにとってなんであり、どのような歴史過程をたどったのかを検証、あるいは告発するシンポジウム、集会、デモなどが活発に行われ、自分たちにとっては抵抗の500年であった、ということが一連の動きで社会的に明るみにされた」。
 また、太田さんは社会的にも自身もこのような問題を意識する大きなきっかけとしてベトナム戦争があったとして、ベトナムを通して日本人はアイヌや沖縄を侵略・併合した歴史を問い直す一つの契機を得、アメリカでも建国の歴史観の問いなおすを促進することになったことを紹介した。
 そして、現在精神文化の一つの「カウンターカルチャー」のように、「アメリカ・インディアンの古老の教え」などの本が書店に溢れていて、それも一つの意義があるが、「秘境」というものがもはや存在しないほどにくまなく支配する多国籍資本に対して抵抗する先住民のたたかいが、ここ10年活発に起こっており、それは「辺境」の地における運動などではなく、まさに多国籍企業の最先端の活動と、かれらの生活、生存権をめぐる闘いである、と述べ、そういう現代的な捉え方が必要であると太田さんは訴えた。
 質疑応答では、先住民を犠牲にした核政策の問題、武装も含めた抵抗の形態、侵略と賠償の問題について、議論がかわされた。(F)




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