10.7 公開講座
10月7日、東京の文京区民センターでアジア連帯講座主催の「〈沖縄経験〉 民衆の安全保障へ」が開かれ、30人が参加した。講師は派兵チェック編集委員会の天野恵一さん。 この間の沖縄反基地闘争連帯運動や従軍慰安婦を支える運動を通じて、女性たちのイニシアチブによる「民衆の安全保障」という思想が、さまざまな運動のなかで国際的な反響を多分に取り入れながら提起されてきた。ごく簡単に言ってしまえば軍事力を背景にした国家による安全保障ではなく(それは女性や子どもを守らない)、非武装・非軍事による国境を超えた民衆のつながりによって生活・医療・教育・労働などを保障していくというものだ。 アジア連帯講座では、6月に『〈沖縄経験〉 民衆の安全保障へ』(社会評論社)を出版し、6月29日から7月2日まで沖縄・浦添で開催された「民衆の安全保障沖縄国際フォーラム」に参加した天野恵一さんを招いて「民衆の安全保障」という思想について討論を行った。 天野さんはベトナム反戦運動の時代に自覚的に運動に参加した経歴から語り、「ヴェトナムと中国の社会主義国家間戦争や、日本の新左翼における内ゲバや企業テロという事件を通じて、戦争の一方への荷担というスタンスを考え直した」とその時代を天野さんなりに総括した。 80年代後半から90年代にかけ、社会党の変節、総評の解体から連合の結成など社会が右へシフトしていったが、91年に起きた湾岸戦争を大きな転機としてそれまでの「護憲派」といわれてきた知識人が次々と「9条」を放棄していくのを目の当たりにし、改めて9条の読みなおしとそれを支え、実現しようとしてきた運動と戦争加害・被害体験を積極的に目指すべき社会へ取り込んでいく必要を感じていく。また湾岸戦争では「荷担する対象がなく、荷担なき反戦であったが、それは自らの地盤で反戦理論を作り上げていかなければならないという、積極的な面があった」と振り返る。 95年、米兵による少女レイプ事件で沖縄は怒りに包まれた。そこには「行動する女たちの会」など女性を先頭に「軍隊は民衆を守らない」という思想があった。天野さんは「PKO反対闘争からストレートに沖縄の闘いにコミットできたのも、このような思想が伝わってきたから」「いまも全国各地で続いている反基地・反戦運動も非軍事の理念から沖縄の闘いにストレートに連帯できている」と説明した。 天野さんは「民衆の安全保障とは、国家の軍事力へのはっきりした批判を組みこんだ概念」と説明した。最後にシモーヌヴェーユの「反革命(戦争・国家)を使って革命はできない」という考えもあることを紹介して質疑に移る。 質疑では直接的衝突や管制塔占拠闘争などが繰り広げられた三里塚闘争への評価、毛沢東式の銃口から革命は生まれる論への批判、国家の弾圧機構を政治的に解体することが無血暴力革命である、侵略した日本軍へ軍事的反撃を展開した中国民衆の闘い、組織内における差別・暴力事件の経験などについて意見が交換された。 天野さんとは、ベトナム革命の評価、国家や軍隊に対する捉え方などいくつかの点で見解を根本的に異にするものはありつつも、具体的かつ現実的な運動や「民衆の安全保障」といわれる思想をつむいでいくなかで、「暴力」や「非軍事」についての認識を相互に学んでいく必要がある。「民衆の安全保障」への道はまだ始まったばかりである。(H) |