『調布発!サッカーで福島の子どもたちに元気を』

プロジェクトの記録と報告(2011年7月28日~7月30日)

 このプロジェクトにご協力いただいたすべての皆様にお礼を申し上げます。福島県須賀川市の岩瀬FCの子どもたちは、3日間のスケジュールを終えて、30日の午後6時にホームの須賀川市岩瀬支所に到着しました。全員元気に家路についたそうです。 この報告書は実行委員会の一員である藤川(みさと屋/原水爆禁止調布市民会議)が作成した私的なものです。このプロジェクトは、東日本大震災への支援活動を続けてきた調布の市民団体の中で、大急ぎで別立ての予算で立ち上げました。当初は市内の慈善団体からの寄付の30万円ほどの予算と調布市の共催によって移動手段のすべてを調布市のバスの運行で賄う予定でした。しかし直前になってスケジュールがバスの運行規定に抵触することがわかりました。調布市のバスで迎えに行くと須賀川到着が昼過ぎになり、調布着は夕方になってしまいます。それでは合宿の1日めが移動で終わるだけでなく、子どもたちを放射線量が高い環境で待たせることになります。それを避けようと考えた藤川が別途にカンパを集めることを提案して福島県の民間バスをチャーターしました。この報告書は、往路のバスをチャーターすることに関する藤川の要請に応じてカンパをしてくださった方々に対するもの(会計報告は後述)です。プロジェクト全体の会計報告は後日提出されます。 調布市では6月29日の市議会に於いて市民の陳情による文部科学大臣に対する「20ミリシーベルト基準の撤回を求める意見書」が全会一致で採択されました(別紙にて添付)。そして調布市に共催をしていただいて、今回のプロジェクトが実現しました。このような取り組みが今後も続けられるように、また他の自治体にも広がっていくことを願って、この報告書で子どもたちの表情を皆様にお伝えすることができれば幸いです。(28日)

 皆様の協力で実現した初日のスケジュールは小平市のFC東京の練習グランドでスタートしました。翌日が北九州への遠征日のトップチームと会えるのはこの日しかなかったのです。福島県には Jリーグのチームがないので、子どもたちはこの機会をたいへん楽しみにしていました。いっしょにゴールを運んでいるのは、昨年まで19年現役選手だった藤山竜仁コーチです。

 

 

FC東京は主力選手たちを子どもたちと会わせてくれ ました。みんなの前に現れたのは練習を終えた日本代表の今野泰幸選手と元代表の羽生直剛選手です。ふたりは照れながらも、小学生サッカー選手だった頃のマインドについて熱く語ってくれました。今野選手は仙台出身なので特に気持ちを込めて接してくれて、子どもたちのユニフォームに「東北人魂」とサインしました。他にもジェイド・ ノース選手など5人が子どもたちの質問に答えてくれました。サインの後で、今野選手がひと りディフェンスに立って全員がシュートを打つ練習をするという幸せな時 を過ごしました。サッカー教室は中身の濃い2時間にも及び、岩瀬FCの 子どもたちはプロのピッチと指導をたいへん喜びました。

下の写真は先生をつとめてくれた藤山竜仁コーチとの記念写真です。彼はFC東京の古参選手でプロ中のプロです。1対8のミニゲームをしながらの熱血指導でした

  

今野泰幸選手との記念写真は宝物です。この顔はみんなが知っていました。

 

 

 この報告書を書いている藤川を知らない方も今回は多いのですが、 有機野菜店とレストランの経営者です。一日めの夕食は食事の時間 が取れないのでお弁当にせざるをえなかったのですが、保養なのだ からせめて手作りのお弁当をということで、私の店『みさと屋・野 菜食堂』がお弁当を引き受けました。雑穀入りご飯とバランスを考 えてひじきとかぼちゃサラダ、インゲンと人参の胡麻和えです。栄養のバランスがいいといっても子どもたちに食べてもらわなければ ならず、地鶏の唐揚げと野菜コロッケを作りました。この鶏肉はた いへん高価なのでお弁当としては赤字(笑)なのですが、みんな喜ん で食べてくれました。宿泊は調布市西部地域福祉センターです。 (29日)

 

 

 

 2日めは調布市飛田給の関東村グランドで開会式に続いて調布市少年サッカー協会の選抜チームとの試合を行いました。開会式には長友貴樹市長が登場しました。市長はいきなりメガホンのアラームを鳴らして子どもたちの笑いを誘って和ませました。

 

 

交流試合の初日の結果です。調布市サイドは選抜チームで臨み、試合は20分のミニゲームを5年生と6年生の対戦で2度ずつ行う練習試合の形式で行いました。
 岩瀬FC 対  調布選抜チーム
(福島県須賀川市) (調布市少年サッカー協会)
1) 2   −   0     6年生  
2) 0   −   3     5年生
3) 4   −   3     6年生
4) 0   −   3     5年生
対戦では2勝2負の引き分け、得点では、6対9で調布選抜の勝利となりました。

 8時30分キックオフ、オレンジ色のユニフォームが岩瀬FCです。キックオフの模様とキャプテンのインタビューはNHKの昼のニュースで流されました。「ユーチューブ 岩瀬FC 調布」で検索すると見ることができます。

午前中に4試合をこなした子どもたちは調布市のバスで 深大寺に移動、本堂に招待されてボランティアの皆さんの手による手打ち蕎麦とおにぎりをご馳走になりました。そこに登場したのは深大寺のご住職。なんと子どもたちと同じ須賀川市のご出身だそうです。実家のお寺が震災で被害を受けたこと、東京から多くの鳶職の人たちがボランティアで修理に駆けつけてくれたことなどを熱く語られました。その後、子どもたちはご本尊の前に案内されて合掌しました。

 

 

 

 

 

午後からは市民プールで 泳ぎました。子どもたちはこれを待ちわびていたそうです。今年初めてのプールだそうです。伊藤監督は「小学校のプールなんか洗ってもいない」といっていました。もちろん放射線の影響です。子どもたちは夕方までプールで歓声を上げていました。夕食は国領神社の境内でBBQ大会です。青年会議所のみなさんが用意してくれました。昼間にサッカーで対戦した調布の子どもたちも参加、席をごちゃ混ぜにして交流食事会となりました。それぞれのテーブルで七輪で焼肉を楽しん だ頃に突然の雨で焼肉パーティは撤収を余儀なくされ、子どもたちは 社務所のホールに移動して、ここでも福島の子と調布の子が入り混じ ってのゲーム大会となりました。しばらく楽しんだ頃に外のテントで 焼きあがった焼そばが運ばれて、食事も終了となりました。福島の子どもたちはバスで深大寺温泉「ゆかり」に移動、このお風 呂のご協力をいただいて入浴させていただきました。 (30日)

 

 

交流試合の2日目の結果です。
試合は20分のミニゲームを5年生と6年生の対戦で2度ずつ行う練習試合の形式で行いました。
  岩瀬FC   対   調布選抜チーム
(福島県須賀川市)  (調布市少年サッカー協会)
1)    0   −   2     
2)    2   −   0     
3)    2   −   2     
4)    2   −   2     
対戦では1勝1敗2引き分け、得失点でも6対6でドローとなりました。

 朝から雨模様でしたが、福島では会津地方に 遠征して行う公 式戦も少しの雨でも放射線の影響で中止になるので、子どもたちは雨の中でもプレーができることを喜んでい ました。ケガもなく2日間、8試合を終えることができました。昼食は調布市の市民ボランティアのみなさんの協力を得て作 っていただいたカレーを食べました。ご飯はみさと屋が雑穀入りご飯を炊きました。

 

 

 

 

下の写真を見ていただきたいのです。岩瀬 FCのホーム、市営グランドの様子です。放射線量が高いので表土を削りやっと0.3μsv/h になったそうですが、それでも高いです。表土は近くの山に穴を掘って埋めたそうです。盛り土は穴を掘った残土です。危険な削った表土は近くにあります。表土を削ったグランドを少し離れると、そこはたいへんな放射線量でした。見にくいかもしれませんが、測定器は、3.58μsv/h、を示しています。伊藤監督は「事故直後は何も知らされなかったので普通 に外で練習をしていたが、その間にかなり被曝させら れたのではないか、汚染を知ってからは一切外では練習していない」といっています。岩瀬FCは会津地方に遠征する公式戦以外は体育館での練習を余儀なくされています。ここは東京電力福島第一原発から60キ ロ離れています。事故の影響は福島県の中通り一帯に広がっていることを考えると、多くの福島の子どもた ちが、サッカーチームが、不便な暮らしや屋内での練習を強いられていることが想像されます。調布市議会が採択した文部科学省に対する意見書に は「子どもたちの未来の健康を保障するためには、全 国民でこの困難を共有しなければならない」と書いて あります。ささやかではありますが、今回のような取り組みを続けていくことが求められていると思います。

 

 

カンパの会計報告
この度は急なお願いにもかかわらずカンパをお寄せくださってありがとうございました。30人の方からいただいたお金は、合計165000円となりました。この中から福島県の矢吹交通の観光バスを往路用にチャーターするために10万円を支出しました。
 残る65000円は、調布市の仲間たち、そして共催の調布市がこのプロジェクトを今後も続けていくために記録を残すことに使わせていただきたいと思います。この記録は映像として岩瀬FCの子どもたちにもプレゼントしたいと思います。それでもお金が残りましたら、今回のプロジェクト全体の会計に組み入れて、東北支援の義援金として使わせていただきます。藤川。

 

『調布発!サッカーで福島のこどもたちに元気を』プロジェクト
主催=同プロジェクト実行委員会(実行委員長・水戸和幸)
共催=調布市協力=ハーメルンプロジェクト(郡山市) /福島県サッカー協会キッズ委員会(福島市) /FC東京/調布市サッカー協会、/調布市少年サッカー連盟、/厄除元三大師 深大寺、/東京調布ロータリークラブ、/東京調布むらさきロータリー クラブ、/国際ソロプチミスト東京-調布、/国際ソロプチミスト東京-調布ローレル、/(社福)調布市社会福祉協議会、/(社)調布市体育協会、/(社)調布青年会議所、/(社)むさし府中青年会議所、/深大寺そば打ち倶楽部、/深大寺温泉「ゆかり」/日本たばこ産業株式会社、/(株)山田屋本店、/東京ガス(株)、/モランボン株式会社、/(株)さくらコマース、/丸仙青果(株)、/にゅうむら医院、/白井米店、/(株)浜食、/月兎ソース(株)、/(株)味彩ワールド、/みさと屋・野菜食堂(misatoya.net)、/(株)東京スタジアム/ 「調布から、東日本復興支援プロジェクト」メンバー有志、/多くの市民、

閉会のセレモニーが終わって解散した後、バスに乗る 福島の子たちに対して、調布の子たちから自然に「がん ばれ」という声が上がって、握手の手が伸びました。見 ていてびっくりしました。大人が準備したセレモニーで はなく、子どもたちが勝手に起こした行動でした。調布 では福島から避難してきた子どもがいじめに遭って転校 せざるをえなくなったという悲しい出来事がありました。 ですから、このサッカー少年たちの行動は涙がでるほどうれしい一瞬でした。少しでも前を向いた未来を信じて もいいと思えた瞬間でした。         (この報告書は、http://www.misatoya.net に掲載いたします)