以下の「SACO合意に異議あり」は琉球新報に4日間連載したものですが、
掲載文とは少々文章が違います。真喜志好一
メインタイトル SACO合意に異議あり…中間報告
琉球新報99年11月24日
サブタイトル 整理縮小を逆手に基地機能を強化
「SACO合意の真相を説明できない日米両政府」
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稲嶺知事は、日米合同委員会(SACO)合意の推進、すなわち基地の県内
移設の推進が、基地の整理縮小につながると信じているようだ。はたして縮小
につながるのだろうか。縮小につながるのだという判断材料になる情報は公開
されてきたのだろうか。
これらの情報を持たないまま、沖縄の舵取りをしている知事が受け入れを表
明した。日本政府の筋書きにしたがったその表明を、ただちに撤回してもらい
たいものだ。
我部政明琉大教授らによって、つい最近「一九六〇年の核持ち込み文書」が
発見されたように、今度の基地移設問題にも、隠された事実があるのではない
だろうか。
普天間飛行場などを移設条件付きで返す、というSACO合意は、わずか五
ヶ月で中間報告を出した。このように短期間で基地の移設計画がまとまるもの
だろうか。
沖縄の基地「整理・縮小」の求めを逆手にとって、実はかねてから計画され
ていたアメリカ軍の機能強化策を実行に移しているのではないか。まずここに
疑問をもった。
そこで、この夏から学者や友人らと「SACO合意を究明する県民会議」を
開いて文書さがしをしてきた。文書が見つかるたびに、米軍の息の長い基地強
化計画を知っておどろき、隠し続けていることにあきれた。まだまだ資料さが
しの途中ではあるが、沖縄のこれからの進路を誤らせないために、私たちの「中
間報告」として記しておきたい。
SACO合意の整理
SACO合意で返還される軍用地を、三グループに分けると理解しやすい。
第一のグループ…四〇年以上も経過して古くなった海軍病院と住宅を近くの
基地内に新築したあと、不要になって返還するというキャンプ桑江とキャンプ
瑞慶覧。そして施設全体が時代遅れになって、現在では使っていないアンテナ
群を、別の場所にハイテク化して完成したあとで返すという「象のオリ」と瀬
名波通信所である。
第二のグループ…「沖縄県民の要求」だからと説明されている那覇軍港と普
天間飛行場。
第三のグループ…返還する理由がわかりにくいのが北部訓練場、安波訓練場、
ギンバル訓練場の三カ所だ。
そこでまず、第二グループのうち、那覇軍港の移設が、実は米軍の長期計画
であること、海兵隊がキャンプシュワブに新たなヘリパッドを欲しがっていた
ことを米軍の文書から解き明かし、つぎに第三グループの北部訓練場などの返
還のナゾを考えてみることにする。
出版されている沖縄の米軍基地関係の本を読み、その中で引用されているア
メリカ軍の文書を手がかりに作業をはじめた。
これまでに手に入った文書だけでも、アメリカ軍が周到に準備してきた基地
の強化計画が読みとれる。
日本政府の回答拒否
明らかにされていない日米のやりとりを知るために、小渕総理とクリントン
大統領宛に、私たちは公開質問状を準備した。
内容は、SACO合意に盛り込まれた返還基地について、個別の基地ごとに
「日本、アメリカ、どちらの国が先に、どのような理由で返還を提案したのか」
などの十一項目である。基地問題の交渉経過を知るのは沖縄人の権利だ。
クリントン大統領への質問状については、在沖アメリカ領事館が受け取りを
拒否したままだ。
九月二八日、小渕総理への質問状を受け取った外務省沖縄事務所は三〇日後
の回答を約束した。ところが、たびたびの催促にもかかわらず、まだ総理から
の回答はない。
質問を受け取らない、回答しない、あるいは回答できない、それらが何を意
味しているのか、明らかなことだと思う。
真喜志好一(SACO合意を究明する県民会議会員)
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