沈黙の中の殺りく

カナダB.C.(ブリティッシュ・コロンビア)州で、灰色オオカミに対する戦争がなさけ容赦なく展 開されている。この地球上に、まだ生き残っているオオカミたちの最大のグループが住むこの 土地で,B.C.州政府が、今もなおオオカミ絶滅製作を続けていることは、驚くべきことである。
 ユーコン準州で、1980年代に行われた空からのオオカミ殺しのようなやり方は、ここではもう行 われていない。そのような殺し方に対して、多くの人が反対したからである。しかし、B.C.州は 無制限のハンティング、わな猟と、政府によって許可され広範囲に行われている毒殺作戦という形をとりオオカミ殺しを実行している。

 政府によれば、B.C.の灰色オオカミの数は2500〜11000の間だということであるが、毎年平均して620頭のオオカミが射殺され、200頭がわなにかけられ、370頭が毒殺されている。この数を合計すると一年間に1190頭のオオカミが殺されているということになる。もしも、オオカミの 生息数を低く見積もった2500という数がほぼ正確であるとするなら、毎年生息数の半数を殺しているということになる。オオカミは今大変なトラブルに陥っている。

 B.C.州でのハンティングとわな猟についての規制について書かれたハンドブックには、大型の獲物生物として、クロクマ、カリブー、クーガー、シカ、エルク、グリズリームース、マウンテン・ゴート、マウンテン・シープ、それにオオカミがあげられている。これらの生物を殺すには、それぞれの種類について、特別の免許をとり、殺したものについてはすべて野生生物局の支局に報告することになっているが、オオカミについてはこうした手続きは無しで済まされる。B.C.州 野生生物局の野生生物専門家マーク・ピンロットによれば「オオカミ殺しのために、金を払って免許をもらわなければならないことになれば、牧場主やハンターがオオカミを殺すことをじゃますることになる。オオカミは多すぎて家畜やハンティングの獲物にとって有害である」と言った。 野生生物局は、銃を持つ人は手当たり次第にオオカミを撃っても良いとの態度を明らかにしているのである。
 
 B.C.州政府にとって、オオカミを手当たり次第に撃ち殺すことを奨励するだけではまだまだ足りないようだ。州政府は、州土全体の三分の一の面積のすみずみに至るまで、毒餌をまいてまわることを止めようとしない。コンパウンド1080という毒薬が広く使われ、人目につかないやり方でオオカミの数が減らされている。メキシコと合衆国では使用禁止になったコンパウンド1080は、牧畜業者にとってはすぐに入手出来る。家畜がオオカミやコヨーテのために迷惑を受けていると報告するだけでいいのである。報告をうけると、生物局は害獣の駆除として毒餌をまくのである。牧場主からの苦情が一件あるたびに、オオカミの群を全滅させるのに十分な量の毒がまかれる。ユーコン準州政府が、オオカミ殺しを「カリブーの頭数を元に戻す計画」と呼んで、その本質を隠そうとするのにならって、B.C.州政府は「問題捕食獣コントロール」と呼んで偽装している。
 コンパウンド1080は劇毒物である。これはあらゆる生命体をおかし、中でも犬族にとって強い効き目を持つ。わずか0.48mgで体重75kgの人が殺せるし、この四分の一の量で子供を殺せる。政府は、毎年0.48mgの125倍の量(約60mg)のコンパウンド1080を使うことが許されている。800頭の犬族を殺せる量である。(毒死した死体を食べて死ぬものは、数に入れないとして)毒が体内に入ると、心臓がやられ、中枢神経が次々とおかされ、激しい全身けいれんが長く続き、苦しみ抜いて死に至る。
 コンパウンド1080は、ターゲットにされたもの以外の生物にも害を与えている。直接毒餌を食べたものもあり、毒殺された死体を食べて毒にあたったものもある。1080による殺害例として報告されている中で、平均して30%はターゲット以外の生物である。
毒殺のかわりに、家畜用番犬や電流を流したワイヤーを使い適当な家畜管理を行うなど、すぐにでも出来ることはある。なぜ、自然界に対してこのようにひどい攻撃をしかけるのだろうか。
  B.C.州によって、音もなく進められているオオカミに対する殺戮を止めさせなけ ればならない。オオカミと、あらゆる野生のもものために。

                フレンズ・オブ・ザ・ウルフ:デニス・アルビー