1864年11月29日に起きたサンド・クリークの大虐殺の直後、生き残った二人の姉妹がいた。
姉妹は同じ男と結婚して一人づつの娘があった。夫は虐殺で致命傷を負ってしまっていた。再
び兵隊がやってくる前に、姉妹は娘を連れ、それぞれバッファローの毛皮一枚だけを持って逃
げた。他のシャイアンのグループを探しに…
4人は大平原を何日も彷徨った。食べ物は、木に残っているわずかなchokecherryをつまんで
食べた。冬の寒さは厳しい。4人は丘の下に穴を掘り毛皮を敷き、その上で毛皮にくるまり寒さ
をしのいでいた。そんなある夜、一頭の大きなオオカミが彼女たちの前に現れる。オオカミは彼
女たちのいる目の前で眠った。
朝になって、彼女たちが歩くとオオカミも歩く。オオカミは彼女たちと共に移動をした。「もう何日
も食べていないの。何とかして下さい。」と姉が言うと、オオカミはどこかに行き姿を消してしまっ
た。しばらくして、口の周りを血だらけにしたオオカミが戻ってくる。オオカミの後をついていくと、
そこには倒したばかりのバファローが横たわっていた。そのバファローの周りを、誰も口をつけず
にオオカミの群がとりまいていた。女たちは、バファローの胃と脂をもらった。その夜、女たちが
オオカミのために香りのいい草(甘草)を敷いてあげると、オオカミはその上で眠った。
ある夜、二本足のモノが近づいて来る音があった。オオカミが、そのモノと戦う音がしたが、真っ
暗でなにもわからず、女たちは恐怖のあまり逃げ出してしまった。次の朝、オオカミは彼女たちに
追いついて、また行動を共にする。女たちは疲れていた。「自分の部族の所に案内して下さい」と
オオカミに頼んだ。と、オオカミは立ち上がり草原の向こうに消えた。しばらくして、オオカミは干し
肉をくわえて戻ってくる。オオカミの後をついていくと、シャイアンたちのティピー(テント)が見えた。
村に着くと、彼女たちは虐殺の生き残りとして大歓迎を受けた。彼女たちは、お礼として干し肉を
オオカミに差し上げ、言った「一生、オオカミへの恩を忘れないだけではなく、これからも自分たち
を助けてくれたオオカミのことを語り継ぐだろう」と。オオカミは自分の仲間の所へ戻っていった。
彼女たちが仲間の所へたどり着いた時、虐殺のあった日からすでに一ヶ月近く経っていました。
*サンド・クリークの虐殺
シビングトン大佐率いる騎兵隊がシャイアンの村を襲撃して、およそ600名のシャイアンを皆殺し
にしました。その大半は女と子供でした。無抵抗の女子供を殺戮し、暴行し、身体の一部を切り
取り、戦利品として帽子に飾ったりしたという、まさに狂気の惨状でした。
*シャイアン族のタシナ・ワンブリさんから、シャイアンに伝えられるオオカミの話しを伺いました。
タシナさんはオオカミに助けられた姉妹の妹の子供から直接この話しを聞いたそうです。
― 鈴木 敦子 ―