オオカミの化石発見


今年の最初に流した情報ですが、会報に載せないままでしたので、こちらに掲載します。
情報自体が化石なほど古くなってしまいました。すみません。・・・A


170万年前のオオカミ?
日本最古のイヌ属化石

 東京都昭島市の多摩川の河床で、約百七十万年前の地層から日本最古のイヌ属の骨格化石が見つかり、発見者の長野県飯田市美術博物館の学芸員、小泉明裕さん(38)が十五日発表した。これまで国内最古とされていたイヌ属の化石から約百五十万年もさかのぼることから、研究者らは「現存する大陸型の大型オオカミの先祖の可能性もある」としている。小泉さんは三十日、早稲田大で開かれる日本古生物学会で発表する。

飯田の男性東京で発見 150万年さかのぼる
 小泉さんによると、発見地点は多摩川の河床に露出する「上総層群」で、化石は頭骨の一部、左下のあごの骨や、上腕骨など一頭分の前半身の骨計三十四点。
 上腕骨の関節上部に、イヌの仲間に特徴的な直径約五ミリから十ミリの穴があることなどからイヌ属と推測。下あごの化石からオオカミに似た大型のものであることが分かった。
 さらに長谷川善和・横浜国立大名誉教授の鑑定で、「日本最古のイヌ属」との結論に達した。日本の鮮新世−前期更新世(約五百万−七十五万年前)ではゾウやシカの化石がほとんどで、陸生の肉食動物の化石としても初の発見という。
 化石は、下あごの第一大きゅう歯の長さが約三十ミリと、絶滅したニホンオオカミより一回り大きいのが特徴。カナダやユーラシア大陸北部に生息するイヌ属最大のタイリクオオカミや、日本各地で化石が発見されている大型の「化石オオカミ」に近い大きさだった。
 これまで日本で最古のイヌ属とされていたのは、一九七〇年代に静岡県引佐郡引佐町の谷下地区で発見された化石オオカミ。約十万年から二十万年前の地層から発掘された。
 小泉さんは「今回の化石の時代は、日本列島と中国大陸が、くっついたり離れたりしていた。同時代の化石が中国やイタリアなどでも発見されており、それらとの比較で、日本への動物の移入過程を考える手掛かりになる」としている。
 今後、現生種とつながりがあるのか、絶滅した新種なのかを含めて調査する。
 小泉さんは化石の研究者。一九九一年にも、神奈川県愛川町の二百五十万年前の地層から、日本最古のサルの化石を発見している。
 長谷川善和・横浜国立大名誉教授の話 動物の大きさは気候や場所などによって変わる。大陸や日本で同じ大きさのオオカミが百数十万年前にも存在したことは、非常に興味深い。


                               中日新聞  社会面 2000/01/16より