「対テロ戦争」の核心には「テロ」の馬鹿げた定義がある
2006年1月30日
ジェームズ・ボバード
「自由の未来基金」原文
最近、米国の外交政策が批判された出来事があった。この出来事は、「対テロ戦争」のパラドクスを洞察するよう我々を導くものだった。2006年1月24日、東ティモールの受容真実和解委員会が、1975年のインドネシアによる東ティモール侵略の際、米国政府が侵略を支援したと批判したのである。侵略後の20年ほどの間に、インドネシアの侵入の結果、25万人もの東ティモール人住民が死亡した。同委員会は、「インドネシアの侵略と占領には」米国の「政治的・軍事的支援が必須のものだった」と述べている。
インドネシアによる東ティモールの侵略と占領は、20世紀後半に起きた最も残忍な行為の一つだった。侵略の前日に、米国大統領ジェラルド・フォードと国務長官ヘンリー・キッシンジャーがジャカルタでインドネシアのスハルト大統領と会談し、侵略を承認した。米国政府関係者が心配していたのは、どうやら、侵略の惨劇が始まる前に大統領と国務長官が米国に帰国することができるかどうかだったらしい。キッシンジャーはスハルトに、次のように語っている。「我々はあなたの問題そして迅速な行動の必要性を理解する。けれども、我々が帰国した後でことが行われるならばなおよいとだけ言っておきたい」。キッシンジャーは、努めてマクベス夫人をまねるかのように、スハルトに対し「何をするにしても速やかな成功が重要です」と言っている。
インドネシアは、東ティモールを爆撃しレジスタンスを粉砕するために米国の兵器を用いた。インドネシア軍は、1999年、ついに東ティモールから撤退したが、撤退する前の最後の日々に、今一度、東ティモールを焼き払い殺人の饗宴を行なった。
米国が後押しした東ティモール侵略により、この30年間に国際テロリストにより殺された人よりももっと多くの人々が殺された。米国国務省によると、1980年から2005年の間に、世界中で起きた国際テロ事件で殺された人の数は2万5000人よりも少ない。
ブッシュ政権は、「対テロ戦争」の中で、テロリストを支援し幇助するものは誰であれテロリストとして有罪であると強調している。この基準に従うならば、アメリカ合州国政府は、インドネシアが東ティモールの人々にテロを加えることを助けた罪で有罪となる。米国が後押しした攻撃の犠牲となった東ティモールの人々は、テロ攻撃で犠牲となった米国の人々の1%にもはるか満たない注目しか受けていない。
現在、アメリカ合州国政府は、自国民にテロ攻撃を行っている多くの政権に資金援助を提供し武器を与えている。コロンビア、インドネシア、ウズベキスタン、トルクメニスタンなどである。『世界政策研究所』のフリダ・ベリガンは、米国国務省の『2002年人権状況各国報告書』には「現在米国の軍事訓練や武器の提供を受けていて、「ひどい」あるいは「きわめてひどい」人権記録を有している国が52カ国もリスト」されていると指摘している。
2002年、ブッシュ大統領は「世界をテロから解放することが我々の使命だ」と宣言した。けれども、テロについて、馬鹿げたと言わないにしても、浅慮の定義を受け入れない限り、ブッシュのこんな言葉が意味を持つことはない。
アメリカ合州国政府は、以前から、政府機関は定義上テロリストではあり得ないと主張してきた。FBIによるテロリズムの定義は「政治社会的目的を進めようとして、政府や市民やその他の相手を脅したり強制したりするために人やものに不法な武力や暴力を用いること」である。政府の行動はほとんど常に「合法的」----少なくとも政府自身はそれを犯罪とは見なさない----なので、米国の定義によると諸政府がテロリストと判断されることはほとんどないのである。
これよりはるかにまっとうな定義が、イスラエルの国家安全保障会議議長ウジ・ダヤン少将により与えられている。彼は、2001年12月に行った演説の中で、テロリストを「どんな動機であれ、体系的に民間人を害するあらゆる組織」としている。この定義は、政治的お墨付きや公式の承認がない行為に限らず、どんな種類のテロリズムもカバーする。
政府が体系的に市民を攻撃するならば、その政府は、飛行機やバスやカフェを爆破する非政府の結社と同じように有罪である。この基準に従えば、インドネシアによる東ティモール侵略は、2002年10月に数百人の民間人を殺したバリ島ナイトクラブの爆撃と同じように、テロリストの行為である。
「対テロ戦争」はすなわち自由のための戦争であるというブッシュ政権の主張の鍵となっているのは米国によるテロリズムの定義である。テロリズムの概念から「政府を除外する」ことがなければ、世界中のほとんどの場所で、テロリズムとの戦いは、自由を守ることとはほとんどあるいはまったく関係がないことがわかる。テロリズムのまっとうな定義に従えば、ブッシュの「自由を愛する連合」に参加している多くの政府が、自分たちが防止する以上のテロリズムを自分たち自身で行っている罪で有罪なのである。
テロリズムの概念から「政府行為」を除外することは、殺人の規定から「大量殺人例外規定」を設けるようなものである。私的な市民が行えばテロリズムと見なされるあらゆる行為について、それを行うのが政府であってもテロリズムと見なされるべきである。アメリカ合州国は、自国市民にテロを加える政府を支援し資金提供することで、世界から悪を追放するというブッシュの約束が茶番でしかなくなることを知らなくてはならない。
ジェームズ・ボバールは、 Attention Deficit Democracy [2006]、 The Bush Betrayal [2004]、 Lost Rights [1994]、 Terrorism and Tyranny: Trampling Freedom, Justice and Peace to Rid the World of Evil (Palgrave-Macmillan, September 2003) の著者で、「自由の未来財団」の政策顧問。
■ストップ再処理!シンポジウム
青森県六ヶ所村にある核燃料再処理工場は、原発から出る使用済み核燃料を再処理して核兵器の原料にもなるプルトニウムを生み出すものです。現在 日本ではプルトニウムは利用のめどが立っていませんが「リサイクル」という名目で生産を進めるため、工場の試験運転が今年2月にも始められようとしています。
この試験運転は、排出される放射能による人体・農産物など環境への被害だけでなく、無駄なプルトニウム生産への巨額の税金の支出にもつながり、次世代へも影響を与えるきわめて大きな問題です。
今回グリーンピース・ジャパンは、専門家の方々や六ヶ所村の方などをお招きし事実を明らかにするとともに、解決へ向けてどうしていくべきかを考えるシンポジウムを開催します。ぜひ、ご参加ください。
○スピーカー(予定):
青木陽子氏(カフェグローブ)
エドウィン・ライマン氏(憂慮する科学者同盟(UCS)、米国)
古川路明氏(名古屋大学名誉教授・放射化学)
大林ミカ氏(環境エネルギー政策研究所)
菊川慶子氏(六ヶ所村 花とハーブの里)
星川淳(グリーンピース・ジャパン)
○日時:2006年2月19日(日)13:30〜
16:00(13:00開場)
○場所:東京ウィメンズプラザ B1ホール(定員240名)
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-67
TEL:03-5467-1711
JR山手線・東急東横線・京王井の頭線:渋谷駅下車徒歩12分
地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線:表参道駅下車徒歩 7分
地図 こちら
○資料代:1000円(グリーンピース・ジャパン サポーターは500円)
お申込み・お問合わせ:件名を「六ヶ所シンポジウム参加希望」としていただき、お名前、ご所属、電話番号、電子メールアドレスを、担当中島まで電子メールにて、お問合せ/お申し込みください。電話でもお申し込みいただけます。
メール送付先:nuclear@greenpeace.or.jp
電話番号:03-5338-9808
また、ウェブサイトからもお申し込みいただけます。
http://www.greenpeace.or.jp/event/e20060219/view
■大阪市による野宿者強制追放について
これについて、「失業と野宿を考える実行委員会」が抗議声明を出しました。賛同・カンパ
を募集中とのこと。詳しくは、靱公園・大阪城公園での行政代執行による野宿者強制排除に対する抗議声明をご覧下さい。また、弁護団声明も。
■憲法講座のご案内
第10回市民憲法講座/憲法と天皇制〜現代天皇制のゆくえ
講師:渡辺 治(一橋大学教授)
日時:2月25日(土)6時半〜
場所:文京区民センター
参加費:800円
主催:許すな!憲法改悪・市民連絡会(TEL:03−3221−4668)
市民にテロを加える政府への全面的な脱皮をはかりつつあるのが現在の日本の状況。上記集会はどれもその点から関係したテーマと考えることができます。