レーガンはニカラグアの人々を虐殺した

ミゲル・デスコト神父
米国のコミュニティ・ラジオの番組デモクラシー・ナウ!に語ったもの
CounterPunch原文
2004年6月10日


編集者注:ミゲル・デスコト神父はニカラグアの首都マナグアのカトリック聖職者で、1980年代サンディニスタ政権で外相を務めた。このとき、米国はサンディニスタに反対するコントラ「死の部隊」を武装し支援していた。ロナルド・レーガンはコントラのことを「彼らは我々の強大であり、自由の戦士であり、我々には彼らを助ける責任がある。彼らは道徳的に、米国建国の父たちと同格だ」。以下のテキストは、米国の全国ネットを持つコミュニティTV/ラジオ番組デモクラシー・ナウ!からの抜粋である。


マナグア・ニカラグア

最初に、レーガンは今や死亡したことを言わなくてはなりません。そして、私としては、それが彼にとって唯一のよいことだったと言いたいと思います。むろん、レーガン大統領の死を悼む多くの米国市民の感情に鈍感なわけではありません。けれども、彼が私の国の人々の虐殺に責任を負っていることに、5万人ものニカラグア人の死をもたらしたことについて神が無限の慈悲と寛容で彼を許すよう祈ると同時に、私たちは、彼が偽りの「自由と民主主義」の名のもとに犯した犯罪を忘れることはできませんし、忘れるべきではありません。

恐らく他のどの大統領よりも、レーガンは世界中に、米国は偽物で大うそつきだということを確信させることに成功しました。民主的でない、というだけでなく、実際の所、米国は人々の自決権に対する最大の敵だったのです。レーガンは「偉大なるコミュニケータ」として知られていました。これは、偉大なコミュニケータというのが偉大な嘘つきだということを信じている人にとってのみ真実だと私は考えています。たしかに、彼はその意味では偉大なコミュニケータでした。少しも眉をひそめることなく、かつてないほどの大嘘をつくことができたのです。我々がユダヤ人を虐待し存在もしていないシナゴーグを焼き払っているとレーガンが言うのを聞いて、私は、彼が本当に悪魔に支配されているのではないかと信じさせられたほどです。率直に言って、当時のレーガンも今のブッシュも、実際に、「明白なる運命」という悪魔に取り憑かれていると考えています。

むろん、こう言っている今も、私は、「アメリカ新世紀プロジェクト」の面々がレーガンの死が大きな痛手と考えていることははっきり知っています。レーガンそしてその精神の継承者であるジョージ・W・ブッシュが故に、今日の世界の安全と治安はかつてないほどまでにひどく悪化しました。実際、レーガンは国際的な無法者でした。レーガンが米国の大統領になったのは、ニカラグアでソモサ---米国が事実上半世紀にわたってニカラグアに押しつけていた独裁者です---が、サンディニスタ民族解放戦線を中心としたニカラグアの民族主義者により追放された直後でした。レーガンは、ニカラグアを再征服しなくてはならないと考えたのです。彼はニカラグアを失ったとしてカーターを非難しました。あたかも、ニカラグアがニカラグアの人々以外の所有物ででもあったかのように。そのときから、レーガンが作り出し、悪化させ、資金提供し、指示した戦争---コントラ戦争---が始まったのです。コントラ戦争について、彼は人々に嘘をつき続けました。そうして米国人が世界中で最も無知な存在へとなるよう仕向けていたのです。私は無知といったのであって、知的でない、と言ったのではありません。けれども、米国が外国でやっていることについて世界中で最も無知なのは、米国人なのです。

人々は見ようとさえしません---もしそうしていたら、反乱を起こすことになるでしょう。そうして、彼は人々に嘘をつきました。ちょうど、ブッシュが今日、人々に嘘をついているように。そして、米国はあらゆる法、人間、神の上にあるという考えを推し進めています。ニカラグアは米国を、レーガン政権の米国を、世界法廷[国際司法裁判所]に提訴しました。当時私はニカラグアの外相でした。私が責任を持ってそれにあたったのです。そこで米国は最も厳しい判決を受けました。世界の司法の歴史の中で、最も厳しい非難を受けたのです。1920年代前半から、米国は、他国と比べて自らの道徳的卓越性に対する一つの証明は、米国が国際法を遵守し世界法廷に従うことだと主張してきたにもかかわらず、実際に米国がニカラグアでしていることをめぐって世界法廷に提訴され、批判判決を受けたとき、米国は判決に従うことを拒否しました。そして、米国は、今でも、200億ドルから300億ドルの負債をニカラグアに対して負っているのです。これは、私たちが政権の座を去ったときにレーガンの戦争がニカラグアに与えた170億ドル相当のダメージに対する賠償です。この額は、国連ラテンアメリカ経済委員会、ハワード大学、オックスフォード大学、パリ大学の研究チームなどが中心となってまとめたダメージの推定で、とても控えめな推定です。世界法廷は、米国にダメージの賠償を払うよう命じたのです。ブッシュはそれについて私と話をしたがりさえしませんでした。私は次のように言いました:「世界法廷の判決に米国が従うよう、会談を持ちましょう」と。彼は、2通の手紙で、私に、話すことは何もない、と言ってきました。

レーガンは、今この番組で私の言葉を聞いている人々が想像も出来ないほど巨大なダメージをニカラグアに与えたのです。レーガンがニカラグアに対して行なった犯罪的で殺人的な介入の影響は、今後も50年以上続くでしょう。

デモクラシー・ナウ!は全国ネットのラジオ/TV番組で、220局以上で報道されている。


レーガンは、エイズについても何ら手を施さず「ゲイに加えられた天罰」として放置してきた人物でもあります。毎日新聞に、黒岩徹・東洋英和女学院大教授による「米国:レーガン元大統領をしのぶ 天性のユーモアで魅了」という記事がありました。天性のユーモアとして、次のようなエピソードが紹介されています。
一方で、ユーモアを愛する人柄も愛された。「居眠りが多い」とメディアが報じ、「政治的能力を失っているのでは」と疑問が投げかけられた時、彼は共和党集会で、愛きょうたっぷりに言った。「ところでみなさん、眠いでしょう。一緒に居眠りしましょう」。会場は大爆笑。「居眠り問題」も、いつの間にか消えてしまった。
単に、オヤジのセクハラ発言に下品な共犯関係を持って笑うノリにしか見えません(ホントにおもしろか? これがユーモアか? 自らのユーモアに誇りを持つエゲレス人は怒らないのか?)。『荘子』に「痔を舐む」というエピソードがありますが、それを思い出しました。

関連する記事として、反戦翻訳団さんのアブ・グライブから中南米へ:合州国による虐待模様の地図が拡がってゆくも、ぜひお読み下さい。米軍の「拷問訓練所」、スクール・オブ・ジ・アメリカズをウォッチしている団体「SOAW」からの記事。また、やはり反戦翻訳団さんの政府のために、私は無実の人たちを殺したも、米軍兵士の告白で、考えさせられます。

ラテンアメリカ関係では、もう一つ。ペルー先住民が強制された不妊手術の実態という記事を見つけました。日本人として「亡命」中で「テロとの戦い」についての著書もありペルー当局から身柄引き渡しを求められていながら曾野綾子などが匿っているアルベルト・フジモリ元ペルー大統領の時代のこと。インドネシア占領下の東ティモールでも、発ガン性の高いデボプロペラという避妊薬が学校で強制的に投与されていました。民族抹殺政策の一環です。

なお、4月19日沖縄県名護市東海岸の辺野古で、おばぁやおじぃの座り込みが始まったとの連絡を受けました。辺野古に住む92歳の島袋ヨシさんは、昨年からボーリング調査が始まれば、自分は波の上に座ると言っておられました。さる5月26日ヨシさんは那覇防衛施設局の職員たちに「戦前戦後、何もないときも海のものを食べ、子どもや孫を成長させてきた。この海を埋立てて何の利益があるのか」と抗議しています。

沖縄全島から3000人の兵士がイラクに送られています。辺野古にあるキャンプ・シュワブは海兵隊の新兵の基地(3000人)ですが、この基地19歳以上の1700人がファルージャを含むイラクに送られています。イラク戦争とともに演習が激しくなっています。昨年11月訪れたとき、おばぁたちが爆発音に恐れを強めているとの話を聞いていました。

辺野古沖の基地は、普天間基地の単なる代替施設ではありません。強化され、新鋭化されるとのことです(辺野古弾薬庫からの弾薬の陸路輸送が海上輸送に合理化され、最新鋭のヘリが投入されるとのこと)。日本政府は住民や自然保護団体の要求に耳を貸そうとはまったくしていません。那覇防衛施設局が4月19日に着手したボーリング調査は、護岸工事のためなので環境影響評価(アセスメント)法の適用を受けないというごまかしのもとに強行しようとしているそうです。

4月19日からの座り込みは、瞞着政治と沖縄差別と強権的軍事支配と自然破壊に対する効果的な異議申し立てです。

詳細は、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団をご覧下さい。
2004年6月10日

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