カナ:再びの虐殺

ラフール・マハジャン
2006年7月31日
EmpireNotes原文

小さなレバノンの町、カナ。その住人は、ブッシュ大統領が最も愛する政治哲学者がかつて水をワインに変えた地であると主張している。イスラエルは、このカナに、説明のつかない憎しみを抱いているらしい。

10年前、シモン・ペレスの「リベラルな」イスラエル労働党政府が(「寛容な」エフード・バラクが国防大臣だった)、カナで国連が設置した住宅群に砲撃を加え、106人を殺した。そこには、ペレスが「怒りのぶどう」作戦という爆撃作戦が生み出した50万人ものレバノン人難民のうち数百人が避難していた。イスラエル政府は、それを事故だったと主張したが、アムネスティ・インターナショナルの調査はその爆撃を意図的なものであると結論し、国連のために調査を行ったオランダ人将校も同じ結論を下している。

今回、標的となったのは、アパートの建物で、そこには、「方向転換」作戦が生み出した約100万人の難民のうち60人が暮らしていた。56人の人々----そのうち34人は子どもだった----が殺された。これにより、レバノン人の公式死者数は700人近くになった。イスラエルは、今回もまた、それが事故だったと主張し、近くにあるヒズボラーのロケット・ランチャーを狙っただけだと主張している。

この主張を前に、過去3週間まどろんでいたみなさん、そして、過去にイスラエルがレバノンに対して行った爆撃のあいだまどろんでいたみなさんも、ひと思案するかもしれない。これに関連して、7月25日、ヒヤムの国連ポストをイスラエルが砲撃し、国連オブザーバ4人を殺した事件の状況を指摘しておくとよいかも知れない。6時間にわたって、イスラエルの砲弾が10度、国連ポスト近くに着弾し、そのたびに、国連オブザーバはイスラエル軍に電話をして、イスラエル軍は砲撃を止めると約束していた。それにもかかわらず、なぜかしら、イスラエルは、それを事故だと主張している。

したがって、ここで、イスラエルの崇高なる道徳性とヒズボラのテロリズムとをはっきりと区別したがる人々に、ちょっとした問題が持ち上がることになる。イスラエルは、国連ポストを意図的に攻撃したか----すなわちオブザーバの安全は無視して近隣地域に砲撃を加え続けたか----、あるいは、砲撃があまり正確でなかったか、そのどちらかである。同様に、今回のカナ虐殺では、可能な議論は、イスラエル軍の爆撃がまたも不正確だったということである。その場合、ヒズボラのロケット攻撃----誰もがそれが不正確だと知っている----はテロリズムで、イスラエルが不正確な爆撃と砲弾を使うことは道徳的戦争だと言えるのは、いったいいかなる理由でだろうか? 結局のところ、結果を見るならば、ヒズボラが殺した人々の3分の2は兵士であるのに対し、イスラエルが殺した人々の約90%は民間人なのである。

たぶん、仮にすべてのコメンタリーや分析がかくもばかばかしいまで偏向していないながら、兵器の精度だけが大切な問題だなどとは誰も言わないだろう。もう一つ、重要な事実は、イスラエルが投下する爆弾は、ヒズボラがランダムに撃つ小さなカチューシャ・ロケットよりもはるかに強力だという点である。500ポンド爆弾一発の爆発半径は4分の1マイルに及ぶ。アパートの側に一時的に置かれた移動式ロケット・ランチャーに対して、これほど大規模な武器を用いることが、どうして正当化できるだろうか?

イスラエルの道徳的優越性という馬鹿げた主張を支えるもう一つの主張として、ヒズボラが民間人を人間の盾として使っているというものがある。アメリカ合衆国が民間人を殺すときにはいつも、繰り返し繰り返し聞かされる言葉である。1991年の湾岸戦争のとき、アメリヤ防空壕にアメリカ合衆国軍がおぞましい爆撃を加え、約400人の女性と子どもを殺したときもやはり同じだった。こうして、攻撃の非難を敵に向けようとする。

『USニュース&レポート』のミッチ・プロテロが書いているように、真実は、ヒズボラは民間人を人間の盾に使っているどころか、民間人が被害を受けないように務めている。たとえばハマスやファタハなどと違い、ヒズボラの軍事部門のメンバーは、軍事作戦を行っているときは、自分たちを支持している民間人とさえ、接触しないようにしているのである。

ヒズボラが人間の盾を使っているという主張が、単に、ヒズボラが作戦をサハラ砂漠に飛んでいってそこから戦うのではなく町や村で行っているという意味ならば、たしかにその通りだが、そう言うのは無意味である。イスラエルの地上部隊が侵攻したとき----今回の戦争で何度かやったように----、兵士たちは民間人の家にも駐留する。これはイラクのアメリカ合衆国軍と同様である。イスラエル軍兵士やアメリカ合衆国軍兵士は、ヒズボラが直面している兵器よりもはるかに威力の小さな兵器に直面しているだけなのに、屋根のない地上に駐留を続けることはない。そうした中で、たまに良心に言い訳をするように、民間人を無理矢理そこから避難させ、たとえば100万人の難民を創り出して、何カ月も十分なシェルターも食料も水も医薬品もない状態に追いやり、家に帰ってきても絶え間なく加えられた砲撃で家が破壊されているという状況ならば、それでもなお自分たちが民間人を標的としてはいないなどと、どうして言えるだろう?

子どもたちをハイテク兵器で虐殺する者たちだけが暴力を振るっているわけではない。事実と理性とを前にしながら、暴力を正当化するために珍妙な議論を組み立てる者たちもまた、暴力を振るっている。真実と、人間性に対する暴力を。


ラフール・マハジャンは『ファルージャ2004年4月』の著者の一人。イスラエルによるパレスチナ・レバノン攻撃については、P-navi infoで継続的に情報が更新されています。ぜひご覧下さい。

■緊急!イスラエル大使館前ビジル

2006年8月1日(火) 午後7時開始
STOP! レバノン空爆
キャンドル・ライトを灯して、犠牲者への追悼とイスラエル政府への抗議を!

*呼びかけ団体

アムネスティ・インターナショナル日本/(特活)アーユス仏教国際協力ネットワーク/(特活)パレスチナ子どものキャンペーン/日本キリスト教協議会(NCC)/ピースボート

*市民の犠牲に、私たちは沈黙しない。
イスラエルによる空爆の犠牲は増え続け、すでに死者は700人を超え、そのほとんどが民間人です。30日にはレバノン南部カナで、市民が避難していた建物をイスラエル軍が空爆し、報道によると37人の子どもを含む少なくとも57人が死亡しました。私たちは、武器を持たない市民を標的とした攻撃を強く非難します。緊急の呼びかけではありますが、ぜひ8日1日(火)、イスラエル大使館前に集まってください。

*日時:8月1日 午後7時〜8時
*場所:イスラエル大使館前
 千代田区二番町3 (最寄り駅:地下鉄 麹町駅)
*内容: 空爆による市民の犠牲者のためのビジル
*キャンドル・ライトなどによるサイレント抗議
 呼びかけ団体からのアピールなど
*主催者からのお願い
 *直接、イスラエル大使館に午後7時までにお集まりください。
  イスラエル大使館:千代田区二番町3
  (最寄り駅:地下鉄・麹町駅)
*ペンライト、キャンドルなどをご用意ください。(主催者側でも少し用意します)
*平和的な抗議アクションです。
*デモ申請をしていない緊急行動です。ノボリ・ゼッケンなど掲示して歩行すると「示威行為」と警察から見なされ止められる可能性がありますので、避けてくださいますようお願いします。

■レバノン市民を救うための請願書

nofrillsさんのブログに、日本語の説明と署名のしかたが書いてあります。

■劣化ウラン弾等

劣化ウラン兵器禁止を求める国際大会が8月3日から6日、広島市で開催されます。

また、8月6日放送予定の「NHKスペシャル」は、調査報告・劣化ウラン弾 〜軍関係者の告発〜です。

■教育基本法改悪について

大内裕和さん・高橋哲哉さんを囲んであらためて教育基本法問題を問い直す、「教育基本法・対話交流集会」があります。

日 時:8月19日(土) 
    13時半〜16時半
会 場:文京区民センター 3A
   (東京メトロ「春日」駅より3分) 
内 容:大内さん+高橋さんの新著をもとに
    学習会と参加者交流会
参加費:無料
問合せ:教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会
    TEL&FAX03-3812-5510
    メールinfo@kyokiren.net

9月下旬からはじまる臨時国会では、教育基本法「改正」法案が審議されます。

この問題をめぐって全国各地を飛び回ってきた大内さん・高橋さんの共著、『教育基本法「改正」を問う』(白澤社)をもとに、参加者のみなさんと意見交換をしながら、これからの社会について考え、一緒に動きだしたい、と私たちは考えいます。

さまざまな形で運動をすすめてこられたみなさん、集会などに参加されたことのないみなさん、教育基本法問題に関心のあるすべてのみなさんのご参加を、お待ちします。

*どなたでも参加できます
益岡賢 2006年8月1日 

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