宗派セクト的暴力が、異宗派間の夫婦を離婚に追い込んでいる
2006年11月9日
IRIN
Electronic Iraq 原文
ファルージャ2004年4月ブログとの同時掲載です。
宗派間での暴力がエスカレートしているため、イラクでは、イスラム教スンニ派とシーア派の結婚が脅かされている(IRIN)。
バグダード発。38歳のヒバ・サミが、18年前、自らの意志で夫と結婚したとき、自らの意志に反して夫と別れさせられることになるとは考えだにしなかった。
「夫を愛しています。けれども、家族が夫と無理矢理別れさせたのです。私たちはシーア派で、夫がスンニ派だから。私の家族は、彼ら[夫の家族]のことをゲリラだというのです。夫と暮らすのは、神への冒涜だと」とサミは言う。
「私たちには子どもが4人います。毎日、子どもたちは父親がいないため寂しがって泣くのです。子どもたちが理由を尋ねると、家族は、お前達の父親は裏切り者だから、近づかないようにしなくてはならないと言います」と彼女は続ける。
この問題を扱っている地元NGOイラク平和協会(PIA)によると、ゲリラや民兵、あるいは標的にされることを恐れる家族から、無理矢理離婚を余儀なくされる宗派間カップルが何百もいるという。
「幸せに暮らしていた家族が、今や、宗派間暴力の犠牲者となっています」とPIAの心理学者で報道担当でもあるアフメド・ファリッドは言う。「子どもたちは、両親が離婚するのを無理矢理目にさせられるのです。しかも、個人的な問題があるからではなく、イラクの現状で宗派間の結婚は受け入れられないと誰かが考えるためです」。
強制的な離婚は、子どもたちに重大な心理的問題を引き起こす可能性があり、さらに、洗脳されて宗派間の暴力を受け入れるようにしてしまう可能性がある、とファリッドは語る。
「両親が離婚したために自殺しようとした子どももいます。彼は、両親の離婚をくい止めようとしたのです」とファリッドはIRINに話した。
PIAは宗派間カップルの離婚を親戚たちを説得することでくい止めようとしているため、ゲリラや民兵から多くの脅迫を受けているという。
2003年以前、宗派の違いはイラクではまったく問題にならなかった。スンニ派とシーア派、スンニ派クルド人とスンニ派・シーア派アラブ人の結婚は、サダム・フセイン元大統領時代にはよくあることだった。
2003年に米軍が中心となってイラクを侵略したのち、フセイン政権下で強い差別を受けてきた多数派のシーア派住民が、支配的な政治勢力として自己主張を始め、宗派間の分断が出現し始めた。
今年2月、イラク北部の都市サマラでスンニ派がシーア派の神聖な廟を爆破したのち、宗派間の暴力は大きくエスカレートした。
離婚を担当するイラクの法廷は、この4カ月間で、離婚の数は急増していると述べている。そのほとんどは宗派を超えて結婚したカップルだが、法廷は、その離婚が周囲から強制されたものかどうかについては知り得ないという。
この問題について、宗教指導者達の間で意見が分かれている。安全のために、宗派間カップルに離婚を促す指導者たちもいる。「[シーア派]女性は、ゲリラ活動に関わっているかも知れないスンニ派男性と暮らしていると身の危険にさらされる。彼女たちの身を守るためには離婚するのが最もよい」とサドル・シティの宗教指導者シャイフ・アリ・ムバラクは言う。
アーダミーヤ地区の宗教指導者シャイフ・ムハマド・ラビアは、仲良く暮らしているのであれば、宗派間カップルは離婚すべきではないと言う。
政府は、結婚している650万組のうち、200万組は、アラブ人スンニ派とアラブ人シーア派のカップルであると推定している。
2006年4月、IRINは、宗派間カップルが、イラク平和同盟(UPI)という名の協会を結成したことを報じた。けれども、UPIの創設メンバーを含む3組の宗派間カップルが殺されたのち、会員達は協会の解散を余儀なくされた。
「私たちは、イラクでこの問題を扱う唯一の協会でした。[今となっては]選択肢はたった二つしか残されていません。イラクに止まって離婚するか、隣国に逃げ出すかです」。UPIの会員だったアブ・ラサーはこう語った。
このニュースは国連人道ニュース・情報サービスIRINから届けられるが、必ずしも国連やその機関の見解を反映するものではない。IRINの文書はすべて無料で再ポスト・再プリントできる。使用条件については、IRINのコピーライト・ページを参照のこと。IRINは、国連人道問題調整局のプロジェクトである。
最近、政府・与党や政府・与党よりの評論家たちが語ることの中に、いろいろ奇妙な点が目につきます。
たとえば、政府・与党よりの「識者」の少なからぬ人々が、「家族の価値」を強調しています。片親だけの家族は「不完全」だとか、少子化を家族の価値でくい止めようとか。
その一方で、「愛国心」の強調、そして防衛庁の「防衛省」化を進めています。
「愛国心」+「戦争できる国」(=「美しい国へ」)。
第二次世界大戦までの時期にも強調されていたこの二つによって、多くの家族が離ればなれになり、子どもを失い、つれあいを失い、親を失いました。
「愛国心」+「戦争できる国」は、その点で、「家族」を崩壊させるものであり、「家族の価値」と、本来真っ向から対立するものです。
イラクでも、「宗派」間の対立から家族が引き裂かれるようになったのは、アメリカ合衆国によるイラク侵略のあとです。日本が憲法に違反して一生懸命に手助けしている、不法な侵略のあと。
もしも日本政府がそれほどまでに「家族の価値」を大切に思うのであれば、この記事で紹介したような事態をもたらした不法侵略に賛成しそれに加担しているというのは、奇妙なことです。
もう一つは、一方で雇用の「流動化」と称するものを促進し、労働者の権利を掘り崩しながら、他方で若手の非正規雇用者(フリーター)を「けしからん」というような意見。
こんなねじれたお話がのうのうと流布し、多くのメディアも批判的視点なしに単に政府発表をその場その場で紹介するだけになっている状況は、危機的です。
いつか将来のある時点で、私たちよりあとの世代の若い人々が、私たちに問うかも知れません。
「どうしてこうなったのか」と。
そのとき、私たちが「政府が嘘をついたからだ」と答えることができるでしょうか?
「あれほど明らかなでたらめに、気づかなかったはずはないじゃないか」
こうした疑問が返ってくるでしょう。
「私たちは、何が起きているか知らなかったのだ」。ナチス敗北後のドイツで、普通の市民の多くが、ユダヤ人虐殺・ロマ人虐殺についてこう語ったといいます。
アメリカ合衆国では、一つのジョークのようにこの言葉がナチス下の市民をあざけるために使われたのですが、そのアメリカ合衆国市民の多くは、イラクで自分たちの国の軍隊が何をしているか、知らないままです。
というわけで・・・・・・
■教育基本法「改悪」を阻止する運動が正念場を迎えています。
教育基本法の改悪をとめよう! 全国連絡会さんなどを中心とする様々な動きによって、衆院での採択を半ば諦めながら認めるような立場をとっていた民主党がシャキっとしてきました。
今は、一人一人の声が本当に大きな力を持つときです。次のように、色々なかたちで反対の声を表明することができます。
●教育基本法の改悪をとめよう! 11・12全国集会
日時:2006年11月12日(日)
13時 開場
13時半 開演
15時半 デモパレード出発(銀座へ)
場所:東京・日比谷野外音楽堂
参加費:無料(カンパのお願いあり)
詳しくは、教育基本法の改悪をとめよう! 11・12全国集会案内ページをご覧下さい。
●関係議員にFAXや電話で声を届ける
教育基本法に関する特別委員会 委員会名簿を参考に、電話・FAXあるいはメールで声を届けることができます。
●メールで声を届ける
憲法・教育基本法改悪反対 抗議・要請メール送信フォームがあります。管理人の方々の多大なる労力でできたものです。ぜひ活用して下さい。
●『君が代不起立』完成試写会
とき 11月22日(水)午後6時30分開演
ところ 中野ゼロ視聴覚ホール(東京・中野駅南口7分)
参加費 500円(カンパ協力者は無料)
制作者・出演者のあいさつあり
主催 ビデオプレス TEL03.3530.8588
●九州・福岡近辺の方々へ
「平和をあきらめない人々のネットワーク・福岡」のblogがあります。
それでは、教育基本法「改正」案の何がいけないのか?
それについては、現在の「改正」案が通るとどうなるか、わかりやすく漫画で解説したものが、「教育は誰のものか 愛国心編」、そして、「教育は誰のものか2 格差教育編」として公開されています。
「愛国心編」は、今日、ご紹介した、イラクの記事とも、少し関係する話題が登場しています。
■サンタクルス虐殺から15年
2006年11月12日は、東ティモール・サンタクルス墓地虐殺から15年目の日です。
15年前のこの日、インドネシアの不法占領下に置かれた東ティモールで、学生を中心とした平和的なデモに対し、インドネシア軍が無差別発砲。300人近い人々を殺しました。
さらに、負傷して病院に運ばれた人々の中にも、殺された人々が多数いました。
サンタクルス虐殺は、現地にいた外国のジャーナリストが撮影し、何とかその映像を東ティモールから持ち出したため、国際的なニュースになりましたが、東ティモールでは、それまでも同様の虐殺が、インドネシア軍によって繰り返されていました。
それから15年。東ティモールはインドネシアの不法占領から解放されましたが(多くのメディアが「インドネシアからの独立」と言う言葉を使いますが、それは国際法的にまったく根拠のない表現です。東ティモールがインドネシアの一部であったことは、国際法上一度もないのですから)、サンタクルス虐殺を始め、20万人もの人々を死に至らしめたインドネシア軍の責任者は、まったく処罰されていません。