合州国大統領が拷問を承認した

ブライアン・ドミニック&ジェシカ・アズリー
2004年12月23日
ZNet原文

拷問は、「内政問題だ」とか一過的なものだとしてそれを無視しようとする人々も、非人間化する。そのような無関心は人間の共感や思いやりの泉を枯渇させ、人類家族の全員に関する世界コミュニティとの社会契約を破ることになる。文明と自由は、無関心な態度をあたりまえとする人々により育まれたのではないし、そうした人々によって維持されることもない。
フレッド・モリス
フロリダ教会評議会議長


アブグレイブをはじめ、イラクで米国が運営している拘留所で使われている、極めて好ましくない拷問技術のいくつかを許可する特別命令を合州国大統領が出していたことが、FBI内部の電子メールで繰り返しこの命令が参照されていることから、示唆されている。この電子メールは、20日(月)に市民権活動家たちにより暴かれた一連の新たなFBI文書の一つである。文書には、イラクの拘留施設で犯されたとされる拷問と強姦に対する調査を開始することについてのものも含まれている。

くだんの電子メールは、全米市民権連合(ACLU)が入手したもので、アブグレイブ収容所での虐待スキャンダルとホワイトハウスを直接結びつける第一級の証拠である。この電子メールを書いた人物----人物の名前は削除されているが標題は「バグダード----現地司令官について」とある----は、米軍要員に異例の尋問技術を使うことを認めたとメールの著者が言う大統領令(行政命令)に、10度にわたってはっきり言及している。

大統領令は大統領が発布する----公開の場合も機密扱いの場合もある----もので、既存の法制を無効にしたり補完したりする特別法ないしは特別指令となる。ホワイトハウスは、大統領が尋問技術をめぐる大統領令を発布したかどうかについて、肯定も否定もしていない。

電子メール中で言及されている、大統領令により承認されFBIのエージェントたちが目撃した特別な尋問技術の中には、眠りを剥奪すること、被拘留者の頭にフードを被せること、感覚を麻痺させるために大音量の音楽を用いること、被拘留者を裸にすること、いわゆる「ストレス姿勢」のまま立たせ続けること、訓練した犬を使うこと、などが含まれている。脅迫に用いられた恐ろしい手段の一つとして、監獄で軍用犬を使って囚人を恐怖に陥れることがある。これについては、アブグレイブ内部で撮られた写真でも示されていた。

メールによるやりとりが行われたのは、2004年5月22日----収容所での拷問と侮辱が世界のメディアに現れてから数週間後----のことで、こうした技術を分類し報告するにあたってFBIがどういった用語を用いるべきか、FBIの立場を明確にしようとした職員の間で交わされたものである。電子メールを書いた人物は、繰り返し、それらの尋問技術が、少なくとも一時的には、くだんのミステリアスな大統領令により承認されたものであると書いている。この人物はまた、ペンタゴンは、拷問が公になって以来、それらの技術のうちのほとんどについて、それを行使する場合には、指令系統から個別の承認を得る必要があるという制限を方針に加えたとも書いている。

メールには「前述のように、先週、大統領令に基づく軍の標準的な行動手続きに改変が加えられた」とある。「大統領令によって承認された尋問技術のすべては今も選択肢として残されているが、そのうちいくつかを行使する場合には、上級レベルの承認が与えられなくてはならなくなったと聞いた」、と。メールの著者は、続けて、尋問技術のいくつか----「ストレス姿勢」、犬を使うこと、「睡眠管理」、フード、「裸にすること(ただし医療診断の場合を除く)」、大音量音楽----は、個別に承認されない限り使ってはいけないと書いてある軍の電子メールを目にしたと語っている。

この著者は、大統領令が認める技術について----法技術的には合法だから----「虐待」という言葉を使うべきかどうか迷っている。電子メールはさらに、FBIが別の見解を出さない限り、FBIとしては「これらの技術を使うことについて『虐待』という言葉は用いないことになる。というのも、我々は、これらの尋問技術に対する承認が関係者から得られていたかどうかについて知る立場にはないからである」と書いている。

メールの著者は、「身体的な殴打、性的に侮辱したり触ったりすること」は明らかに「虐待」を構成すると考えており、それらは、繰り返し言及されている大統領令が認める範囲にはないと示唆している。

この電子メールによると、アブグレイブに勤務していたFBI要員は、被拘留者への尋問の際、大統領令が認めた行為を含む方法が行使されたことを目撃しているが、それに参加してはいないという。この発言は、全米市民権連合(ACLU)をはじめとするグループが訴訟をともなう情報公開法請求を通して入手した別の書類に書かれたこととも合致している。

「ニュースタンダード」紙が報じたように、10月に公開された文書からは、FBIのエージェントたちが、今回の電子メールに書かれているような虐待、そしてさらに多くの重大な行為を目撃していたことがわかっている。

20日に暴かれた電子メールは、虐待と拷問を承認した大統領令が、大統領執務室から出たものであると述べている最初の公式文書である。

ACLUがこれらの文書を公開したあとで、ホワイトハウスとペンタゴンそしてFBI関係者は記者団に対し、この電子メールの著者は誤解しており、くだんの命令は大統領令ではなく国防省指令であると述べた。話し手は全員、匿名を希望した。

ホワイトハウスは、ブッシュ大統領が尋問技術を特定した大統領令を発布したことについて、これまでのところ、公式に否定はしていないようである。ただし、大統領令は公開もされていない。ACLUと関連組織は、アブグレイブやアフガニスタン、キューバのグアンタナモ湾の収容所における被拘留者の扱いをめぐる文書の公開を求める活動を行なっており、ACLUが20日に発表した声明では、ホワイトハウスに対して「そのような大統領令が存在したかどうか肯定するか否定するかはっきりするよう」求めてきたと述べている。

2004年6月、合州国大統領は、尋問に関して自分が承認したのは、米軍要員は「米国法に従い、また国際的な条約の義務に反しない」行動を取るべきだということだけであると言い張った。

しかしながら、このFBI職員が電子メールで指摘しているように、尋問技術は、大統領が大統領令を発してそれらが合法であると承認するならば、米国法のもとでは合法なものとされるのである。

虐待スキャンダルが表沙汰になって2週間後に、ブッシュ大統領が被拘留者を扱う特定の方法を承認したことがあるかどうかと率直に問われたとき、ホワイトハウスの報道官スコット・マクレランは次のように答えている:「グアンタナモ湾やイラクで軍が実行する可能性のある尋問技術に関しては、軍の決定事項であり、我々はそれらの技術が、大統領が定めた政策に合致するものであると考えている」。

大統領と大統領の法律顧問は、繰り返し、米国政府は拷問を許容することも拷問を犯すこともないと述べてきた。しかしながら、ブッシュ政権による拷問の定義は狭い。そのことは、ホワイトハウス顧問アルベルト・ゴンサレスが6月22日に行なった記者会見でも表明されている。そのとき彼は拷問を、「特に重大な身体的・肉体的危害や苦痛を与える目的をもつ」行為に限定しているのである。

ホワイトハウスの声明をそのまま受け取るならば、市民権活動家や国際法によって拷問と規定される行為----FBIの電子メールにあげられているような行為----をブッシュ大統領が承認したという可能性は少なからず残される。

国連拷問禁止条約は----米国議会はこれを批准している----「拷問」をこれよりもはるかに広義に定義しており、それには「拷問とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず、人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人もしくは第三者から情報もしくは自白を得ること」が含まれる。

今回あらたに公開された文書にはまた、イラクで拘留された人々に対する虐待をめぐる刑事犯罪調査の開始をめぐるものもある。

文書の一つは、米軍犯罪調査部門が、「アブグレイブ刑務所の男性囚に対して犯されたとされる拷問に関する」調査を開始すると述べたメモである。調査担当官の名前も部隊名も削除されており、この事件を特定するために必要な情報も書かれていない。

もう一つの文書は、イラクに駐在していたFBIエージェント2名が、イラク人被拘留者に対して行われたとされる拷問に関して軍の調査官からインタビューを受ける予定であるとFBI総務局のバレン・カプロニに告げているものである。電子メールのメッセージを書いているのはFBI対テロ部門のゲーリー・ボールドで、彼はその中で、名前は削除されているある被拘留者に対する、軍の書類扱いに疑問があることを指摘している。彼はまた、FBIの特殊エージェントがそのイラク人を拘束した軍事警察部隊と一緒にいて、さらなる尋問のためにアブグレイブに送られる前に、このイラク人を目撃していたとする書類に署名したと書いている。

電子メールでは、このイラク人捕虜は苦情申し立ての中でFBIについて言及はしていないが、困ったほど詳細に自分が受けた扱いを述べていると書いている。「彼らは私を拷問し、スコーピオンと呼ばれる手段で私に手錠をし、冷たい水を私にかけた」。この電子メールは、イラク人の苦情をこのように引用している。「彼らは朝から翌朝まで私を拷問し、私はひどい拷問のために倒れた。そのとき私は鉄条網の上に倒れたのだが、彼らは私の足を持って引きずったため、私は負傷した。さらに彼らは私の腹を殴った」。


FBIのメールについては、英語ですが、こちらにアップされています(REDACTEDは削除の意)。

国際法上「拷問」と定義される行為を合州国大統領が承認していたことについて、最近FBIの書類が公開されたため、ますますはっきりしてきました。それ以前から、拷問を「合法とする」メモ等は流出していましたが。これらについては、拷問についておよび戦争犯罪と拷問をご覧下さい。

日本では、反戦ビラ撒きの無罪判決に対し、検察が控訴することを決定したとのことです。まとまった情報は、立川反戦ビラ弾圧救援会および反戦ビラ弾圧救援会・福岡をご覧下さい。

また、1月20日(木)18:00〜19:30、ブッシュ大統領就任式の日に東京で抗議行動が予定されています。以下の通り:
日時・1月20日(木)18:00〜19:30
集合・虎ノ門JTビル前
呼びかけ・WORLD PEACE NOW
お問合せ:03−3221−4668
http://www.worldpeacenow.jp/

辺野古について、P-navi infoに新たな情報があります。また、米軍のファルージャ侵略について、時系列でまとめたページがありました。ご覧下さい。
益岡賢 2004年12月26日

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