ブッシュ政権がイラクの「大量破壊兵器」---ブッシュが侵略正当化に用いた最大の口実---を発見できなかったことにますます多くの注目が集まっている中で、議会とメディア[ブッシュに嬉々として追従しおべっかつかいを買って出た]は、諜報機関が収集した情報を誇張したり操作したりしたのではないかという疑問を問い始めている。こうした背景で、米軍のイラク占領に対する武装抵抗が、日毎、ますます致死的になってきている。
この2週間、バグダッドの北の諸都市を中心とする、ゲリラ部隊による攻撃により少なくとも10名の米兵が死亡し25名が負傷し、アパッチ・ヘリ1台が撃墜された。抵抗部隊による米軍への襲撃---ワシントンはこれをサダム・フセインに忠誠を誓うバアス党員の残党とかアルカイーダに共感を寄せるテロリストの行為と述べている---は、ほぼ毎日起きている。これに対し、米国は紛争地帯に数千人の兵士を送り込み、攻撃的に武器を探す家宅捜索をすることで応えている。これによし、自国の占領に対してますます怒りを強めている多くの反サダム市民たちを、さらに怒らせる結果となっている。先月、ファルージャ市で米軍兵士が18名の非武装で抗議した市民を殺したこともまた、敵意を募らせ、報復の叫びを引き起こしている。
ペンタゴンが5月1日に戦争終結を宣言して以来、全体では、50人以上の米軍兵士がイラクで殺された。多くは敵によるものである[イラクの人々は何千人も米英軍に殺されている]。「行間を読む」のスコット・ハリスが、『中東レポート』編集者のクリス・トーンシングにインタビューをした。トーンシングは、イラクで増大している武装抵抗を分析し、ゲリラによる襲撃回数が増大していることで、紛争が長引く可能性を分析している。
クリス・トーンシング:抵抗をしている人々は誰か?それについて確実な回答は持ち合わせていません。けれども、信頼できるイラク情報源からの目撃報告によると、以前の共和国防衛隊のメンバーの一部がおり、また、ファルジャで米軍が非武装の抗議行動者たちを殺害した大衆デモの一部に、元治安サービスの一部がいたと考える理由があります。けれども、非武装のデモに参加したり米兵への武装攻撃を行なっているイラク人が全員元バアス党員であるとか、サダムの元支持者である可能性は極めてありそうにないと思います。
バグダッド北東部の大多数がスンニ派の地域で我々が目にしていることは、米軍がこの地域で活動しているここは、サダム・フセイン支持の社会基盤であったところだということです。それは、必ずしも、人々が彼のイデオロギーに賛同しているとか彼を擁護しているということではなく、この人々は不釣り合いに優遇されてきたことを意味しています。政府が提供するサービスに関しても、雇用機会についても、社会的な昇進にしても。そして、これらの人々は、戦後イラクで他の人々に自分の地位を明け渡してしまい地位を失うことを恐れています。とりわけ、占領当局と連絡を取っているように思われるシーア派の人々に対して。さらに、抵抗の一部は、単純に、イラクの民族主義の感覚から来ていると思います。イラクの人々は、サダム・フセイン政権が崩壊し、サダムが生きていたとしてももうイラクを支配していないことを喜んでいたかも知れませんが、自分の国を無期限に外国に占領されることは喜んでいません。特に、占領部隊が、武器を取り上げあらゆる反対と抵抗の表出に対して、高圧的な手段を行なっているときには、なおさらです。確実に、より高圧的な手段をとればとるほど---誰も中にいないと信じる理由なしに家宅捜索を行うなど---米軍兵士への脅威も高まります。
こうした手段は、パレスチナ人がイスラエルによる不法占領軍に対して抱いている憤りと同様の憤りをイラクの人が米軍に対して持つことを促します。占領に対する汎イラク的憤りで、それは米国占領に対する純粋な社会的インティファーダに今後なっていく可能性があります。それが起きていると言うには早すぎると思いますが。そうした事態が展開するには長い時間がかかるでしょうが、米国がイラク人自身による統治と基本的安全及び人々への基本的礼儀において前進しないならば特に、それが起きる可能性があります。これら全てにわたって、現在は劣悪であり、泥沼とでも呼べる状況になる可能性はとても高いと思います。
スコット・ハリス:ブッシュ政権は、この数週間、イラクで米軍に対して武装抵抗を行なっている人々をテロリストと呼んだり、アルカイーダのシンパと呼んだりしていますが、それは常軌を逸しているように見えます。とりわけ、サダム・フセインの政府とオサマ・ビン・ラディン、アルカイーダに関係があるという証拠は何もない状況で。ブッシュ政権がこうして抵抗に対して戦うイラクの米軍部隊を拡大していることは、米国市民に、米国によるイラク占領を巡る将来の戦闘を対テロ戦争として正当化しようとしているのだという可能性はありますか。
クリス・トーンシング:それはあり得ることです。そして、あなたの質問の前提に同意します。私たちは、戦争中からこれを見てきました。侵略軍に対するほとんど全ての抵抗行為は「死の部隊」とか「テロリズム」とかレッテルを貼られてきたのです。こうした極めて扇情的なラベルは、恐らく現地の現実を歪めたことでしょう。ポール・ブレーマー(イラクの米国人新総督)は、イラクでの米軍駐留を「占領」と呼んではばかりません。我々は、侵略前に、繰り返し繰り返し、「我々は占領者としてイラクを訪れるのではない。我々は解放者として行くのだ」と聞かされたにもかかわらず、です。こうした全てのレトリックはとたんに記憶の穴に投げ捨てられましたが、イラクの人々の記憶は消すことが出来ません。
米国政府がオサマ・ビン・ラディンやら神のみが知っている他の誰だかやらと関係しているかもしれない「外国の戦士」にかくも大きな焦点を当てている理由は、それによってスンニの戦闘派について語ったり、シリアを非難する見通しを保持したり、シーア派に対するイランの影響を語ったり、イラクの不安定状態をイラクの人々のせいだとかイランの策動として非難したりすることができるような可能性を保つためのように思います。そして、それによって今やっているよりもはるかに大きな介入をイランに対して行う口実---恐らく多くの口実の一つでしょうが---を得ることができます。その点から、イラクの不安は逆説的にも---つまりそれが、今でも恐らくはブッシュ政権の中東政策を運営しているであろうネオコンの戦略的見解の失敗の証拠として理解しなくてはならないにもかかわらず---、我々はまだ仕事を終えていない、第一段階だけではなくてネオコンの見解を全段階展開しなくてはならない、という証拠に使われることになります。この、極めて不吉な可能性が、存在します。
何のビジョンもなく、イラク派兵を進めようとする日本政府も、全てを他人のせいにして侵略・攻撃を広域化させかねない米国政府も、変です。それに対応するかのように、パレスチナ人の虐殺を日々進めるイスラエルも、アチェでの虐殺を進めるインドネシアも(それを実質的に容認・支持する日本政府も)。
エドワード・サイード『裏切られた民主主義』(みすず書房)とインドネシア民主化支援ネットワーク『失敗のインドネシア』(コモンズ)を読みました。いずれも、お奨めです。イスラエルを支援する企業の一覧ページを発見しました。