三国会談:2003年3月16日アソレスで開催された似非サミットについて
(1)
英国首相ブレアーとスペイン首相アスナールと短時間面会したのちにブッシュが発表した声明は、イラクに対してではなく国連に対する最後通告であった。「明日は世界において真実の時である(ママ)」という言葉は、ほかの国々と国連に対して、戦争を是認するよう求める米国に従うべきであるという最後の主張を表している。すでに米国は、イラクが決議を遵守しているかしていないかについては全く注意も払っておらず、査察団が成功するか失敗するかについても、武装解除についても、実のところイラク自体についても、米国式「外交」なるものの方程式には入っていない。
(2)
アソレス会談の絶望的な色合いは、米英の立場がいかに孤立しているか[忠犬(犬には申し訳ありません)といえばスペインのアスナールのほか、日本の小泉、豪のハワード等ほんの僅か]、そしてそれを擁護するトニー・ブレアーの立場がいかに孤立しているかを示している。
(3)
米国の戦争を支持する決定を下すことのみが、「平和と治安を維持する唯一の効果的な方法」を表している[ここまで来ると本当に言語と論理の崩壊です]と宣言することにより、ブッシュ政権は外交を完全に放棄したことをあからさまにしている。そして、緊急事態でない戦争を選び取るために外交を放棄する権利は誰にもない。
(4)
声明の中で、ブッシュは、国連査察団にはまったく言及しなかった。このことは、アソレス会談は戦争サミットではなく「外交のラスト・チャンス」と主張しているにもかかわらず、UNMOVICとIAEAが達成してきたことをまったく真面目に考慮していないことを示しており、従ってまた、イラクの現在の協力改善がいかなる効果も生まないことを示している。さらに、イラクが13日にVXガス関係の破壊に関する新たな長い文書を査察団に提供したという事実についても言及されていない。
(5)
ブッシュは、米国は、イラクを「解放」したのちに「経済制裁を速やかに終わらせる」と述べた。つまり、現政権を転覆させたあとということである。この言葉もまた、米国がイラク武装解除に関する決議687号の実際の文言を遵守する意図はないことを示している。決議687号では、武装解除が完了したら経済封鎖が解かれることになっており、「政権変更」は経済封鎖とは何の関係もないのである。
(6)
シラクは、繰り返し、戦争を承認する決議には拒否権を発動すると述べている。フランスが提示するある程度長い期間のタイムテーブルという最低条件がかなえられた場合に、シラクが決議1441のような言葉遣い −武力行使を示唆しながらもそれを明示的には承認していない− をする別の決議を受け入れるかどうかは明らかではない[いずれにせよ1441では、査察の結果を受けた判断は国連安保理が行うことになっている。ブッシュやブレアが行うものではない]。
(7)
アスナールがもっぱらヨーロッパと米国の間の「大西洋間リンク」にだけこだわっていたことは、この戦争をめぐるアソレスでの議論の多くが、イラクがどれだけ危険であるか[米国が遙かに危険なのは明らか]ではなく、もっぱら米国が何を求めているかに関心を抱いていたことを反映している。
(8)
英国の提案(6項目提案)が真面目なものでないことは、これに対するブリックスの反応が示している。ブリックスは、もし武装解除に10日間(英国提案の制限)しか認められないのであれば、決議1441号に対してイラクが達成できるのは「名ばかりの履行」でしかないだろうと述べているのである。
(9)
外交に最後のチャンスを与えるというブッシュとブレアの言葉が真面目なものであったとすると、国連本部の緊急週末セッションでこの3国は会談していたであろう。ほかの政府とともに、コフィ・アナンとともに、アラブ連盟などの中東地域の組織の代表とともに。
(10)
米英の立場とほかのあらゆる国の立場には、決議1441の「重大な帰結」という言葉が実際に自動的な戦争容認を意味しているかどうかをめぐって、明らかな違いがある。ワシントンとロンドンは、戦争容認を意味していると言い、ほかのすべての国は意味していないという[17日忠犬小泉はこれまでの見解を180度転覆して1441決議だけで武力行使は正当化されるという嘘を公言した]。けれども、いずれにせよ、決定権を持つ主体は、1441決議の最終項目の最終行に「国連安保理はこの問題に引きつつき関わる」と明示されているように、安保理なのである。国連の外交用語で、これは、該当の問題は国連安保理の権威と管轄のもとに置かれるということを意味しており、どの加盟国も理事国も、その権限を一方的に乗っ取ることはできない。
(11)
今このとき(3月16日午後遅く)の時点で「もっともありそうな」シナリオを予測するのは難しい。17日月曜日の3時から安保理会議がある予定で、一応、米英西提案を何らかのかたちで票決することになっている。この提案は3月17日までにイラクの履行を求めるかわりに別の日付、恐らくは27日を指定するよう修正されたものになるかも知れない。17日に安保理に提出される「決議」案が、ぶつけ本番の投票用であるかどうかは確かではない。議題にのせられる決議案が元の案とは異なり、フランスとドイツ(それゆえロシアと中国および態度を決めていない6カ国)の合意を一定程度反映したものである可能性すらある。16日夜の時点で、ブリックスは、18日火曜日に安保理に対して最新報告を提出する予定であると述べている。彼がそのときまでに翻訳される大量破壊兵器物質破壊に関する新たな文書を入手すると予期しているのかどうかはわからない。「サミット」終了から17日午後の安保理会議までの20時間ほどの間に、腕をひねりあげたり足を折ったりといった米国の圧力は確実に強まるだろう。あまりありそうにないが、米国が最終票決を再調整された履行期限(27日あるいはほかの日)まで避けることも不可能ではない。あまりありそうにないが、フランスが望むと述べたような「より理性的」なタイムテーブルをもった米英の提案 −暗黙の自動的武力行使承認を認める文言が入ってるかも知れない− にフランスが同意することも不可能ではない。あまり明らかでないのは、ブッシュ政権が受け入れようとするような妥協が何か存在するのかという点である。最もありそうなのは、ブッシュ自身がとにかく戦争を望むというものである。
別のシナリオ:(12)
米国が安保理決議案を投票なしに撤回するか、安保理で否決されるかしたときには、米国は、必要ならば英国なしでさえ戦争を行う準備ができている。けれども、こうしたときには、この戦争が不法で国連憲章に違反しているということがいっそう明らかに誤りようもないものとなる。
(13)
その場合に、国連総会で一つ以上の国(恐らく非同盟諸国の一部、たとえば南アフリカとマレーシアが一緒に)平和のための終結を道議するに十分な状況である。これは、安保理が機能しない場合に、通常は安保理で扱われる平和と治安の問題を国連総会が取り上げるものである。平和のための終結の決議は(たとえば憲法権センターの草案などを参照)、米国の戦争を非難し、それを平和と安全への脅威とみなし、即時の国連交渉を求め、米国の戦争が国連決議を強制的に守らせているといういかなる主張も明白に却下し、米国の軍隊と戦闘機と爆弾を即時に撤退するよう求めることになる。
(14)
もう一つありうる状況は、ブッシュが彼の称する公式の72時間前までの警告(パウエルは16日にすでに査察官が撤退準備完了しているべきだと示唆した − ブリックスがかみついたこの発言は、メディアにとって取り上げるに値しなかったものらしい)を発したときに、UNMOVICおよび/またはIAEAがイラクからの撤退を拒否する可能性もある。もしブリックスとコフィ・アナンが査察官撤退の命令を発することを拒否したり、あるいは、査察官は安保理に対して活動しているのだからブリックスもアナンも撤退命令を出すことはできないと述べたり、あるいは現場の査察官たちが、武装解除の仕事が進められているうちは自分の任務を放棄しないと述べたらどうなるであろうか。そうした対応は、武装解除という世界的な使命は軽々しく理解されているものでなく、ある加盟国1国による不法で承認されていない戦争は任務が進められているときにそれを放棄する根拠にはならないことを示すものであり、また、査察を停止できるのは国連だけであり、査察停止の決断は不法な戦争の脅しにより行われてはいけないことを示すものであろう。ブッシュ政権は、150から200名の査察団がイラクを巡回している中で戦争を開始するだろうか。開始するという答えはむろんありそうである。そして国連をはじめとする犠牲者推定を考えるならば、査察官が残ることは自らの石により行われる絶望的なギャンブルの一種であるかも知れず、それは、極めて多くの命が危険にさらされているだけに、予想外の正当性を帯びることになろう。
訳していて、ちょっと拡散してポイントの絞りきれない文章ですが、「平和のための結集」は、安保理が機能しない場合[むろんこの場合は小泉首相が言うようにフランス等の妨害ではなく米英の国際法違反により、ですが]総会が安保理の肩代わりをする機能で、uniting.free.frにそれを求める署名があります。
それにしても、いくつもの国連決議を平然と無視しそれに違反し、不法占領と殺害を繰り返し、つい17日にも米国の平和活動家をガザでブルドーザでひき殺したイスラエルに対して全面支援を米国が与えている状況を考えても、世界の不正はここまで来たかという感じです(あるいはここまで戻ったかでしょうか)。
小泉首相、川口外相、原口大使など、日本政府は、昨年から決議1441は武力行使を容認するものではないと繰り返してきながら、この度米国が新決議なしでも攻撃を行うと宣言したのにあわせ、手のひらを返したように、今度は「過去の決議で武力行使は正当化される」と主張[これが「主張」と呼べるなら、ですが]しています。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保存しようと決意した」とか、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」とか日本国憲法には書いてあるはずですが。。。小泉首相のfax番号は03-3581-3883、国連代表部原口大使は010-1-212-751-1966です(マイライン登録をしていない場合は、最初の010が001とか0041とかになるはず)。抗議の声を届けましょう。