イスラエルのガザ攻撃をめぐる嘘トップ・ファイブ
ジェレミー・R・ハモンド
2009年1月3日
PalestineChronicle原文


嘘1:イスラエルが標的としているのは法律上正当な軍事拠点だけであり、罪のない人々の命は守ろうとしている。イスラエルが民間人を標的としたことはない。

ガザ地区は、世界でも最も人口密度の高い地域である。国際法に従うならば、文民のあいだに戦闘員が存在しているからといって、文民が保護される権利を失うわけではない。したがって、実のところ、戦闘員を標的としているとの名目で文民を攻撃する行為はすべて、 戦争犯罪である。

さらに、イスラエルが合法的な標的であると主張する対象はハマスのメンバーであり、イスラエルはハマスをテロ組織と呼んでいる。ハマスはイスラエル領内にロケットを打ち込んでいる。それらのロケットは極めて不正確であるため、ハマスがイスラエル内の軍事標的を攻撃しようとしていたとしても、実際には無差別の攻撃になる。ガザから発射されたロケットがイスラエルの文民を殺した場合も、戦争犯罪となる。

ハマスには軍事部門もあるが、完全に軍事組織であるわけではなく、政治組織である。ハマスのメンバーは、パレスチナの人々が民主的に選出した、人々の代表である。選挙で選ばれたこれら指導者のうち、数十人が拉致され、告訴されないまま、イスラエルの監獄に拘束されている。ハマスの幹部ニザル・ラヤンのように暗殺の標的とされた人もいる。ラヤンを殺すためにイスラエルは人々が暮らすアパートを標的とした。イスラエルの攻撃により、ラヤンだけでなく妻の2人と子ども4人、さらに他の6人が殺された。国際法のもとでこのような攻撃を正当化することはできない。これは戦争犯罪である。

イスラエルは住居のほかにも、モスクや刑務所、警察署、大学などの、国際法のもとで保護が定められている場所を爆撃した。

さらに、イスラエルはこの間ずっとガザを包囲封鎖しており、人道上必須となる物品も最低限しかガザに運び込むことを認めなかった。イスラエルは文民を爆撃し殺している。負傷者はさらに多く、医療措置を受けることができない。発電機を使って作動している病院も、燃料がほとんどまったくなくなっている。医者には、けが人を治療するために必要な機器や医薬品がない。これらの人々もまた、ハマスや正当な軍事標的ではなく、文民全体を懲らしめようというイスラエルの政策の犠牲者である。

嘘2:ハマスが停戦に違反した。イスラエルの爆撃はパレスチナ側からのロケット弾に対する対抗措置であり、ロケット攻撃を終わらせるためのものである。

そもそもイスラエルは停戦を守ってこなかった。当初からイスラエルはガザ領内に「特別治安地帯」を宣言し、この地帯に立ち入ったパレスチナ人に発砲すると宣言した。言い換えると、イスラエルは、農民をはじめ、自分自身の土地に行こうとする人々をイスラエル兵士は撃つと宣言していたわけだが、これは、停戦に違反するだけでなく国際法にも違反している。

イスラエルによるパレスチナ人への発砲が起きていた----実際にそのいくつかでパレスチナ人が負傷していた----にもかかわらず、ハマスは、停戦が発効した6月19日から、11月4日にイスラエルがガザを空襲しパレスチナ人5人を殺して数人を負傷させたときまでは、停戦を守ってきた。

イスラエルによる停戦違反に対し、予想通り、ガザの武闘派は報復としてイスラエルにロケットを発砲した。12月末にロケット弾の発砲が増加したことを口実に使って、イスラエルは爆撃を続けたが、ロケット弾の発砲自体がそもそもイスラエルの攻撃に対する対抗措置だった。

停戦への違反を含むイスラエルの行為が、予期されたとおり、イスラエルの人々に対するロケット攻撃をエスカレートさせる結果となったのである。

嘘3:ハマスは人間の盾を使っているが、これは戦争犯罪である。

ハマスが人間の盾を使った証拠はない。実際のところ、既に述べたように、ガザ地区は小さな地域で人口が密集している。イスラエルはニザル・ラヤン暗殺----その際彼の家族も殺された----のように、無差別の攻撃手段を採ってきた。イスラエルがプロパガンダの中で「人間の盾」と言っているのは、実際には殺されたラヤンの子どものような犠牲者である。こうした状況では、ハマスが人間の盾を使っているのではなく、イスラエルがジュネーブ条約をはじめとする関連する国際法に違反して戦争犯罪を犯しているのである。

嘘4:アラブ諸国は、攻撃を正当とするイスラエルの主張を理解しているので、イスラエルを非難してこなかった。

アラブ諸国の人々はイスラエルの行為に対しても、イスラエルの攻撃を非難もせず、暴力を止める手だても取らない自国政府に対しても、憤慨している。簡単に言うと、これらのアラブ諸国では、政府は人々を代表していない。アラブ諸国の人々は、イスラエルの行為に対してだけでなく、自国政府の無為、イスラエルの犯罪への無頓着と共謀に対して、大規模な抗議行動を起こしている。

さらに、アラブ諸国がパレスチナ人を支援するための行動に出ないのは、イスラエルの行為に同意しているからでなく、イスラエルを無条件に支持する米国にへつらっているからである。例えば、国境を開いてイスラエルの攻撃で負傷したパレスチナ人をエジプトの病院で治療させることを拒否したエジプトは、米国の援助に大きく依存しており、アラブ諸国の人々はこれを、ガザのパレスチナ人に対する究極の裏切りとみなしている。

パレスチナのマフムード・アッバース大統領も、ガザの人々の苦しみの原因はハマスにあるとハマスを非難したため、パレスチナ人に対する裏切り者と見なされている。パレスチナの人々は、これまでも、アッバースが民主的な選挙で選ばれたハマスを迂回してイスラエルおよび米国と共謀したことを裏切りと見なしている。この共謀の結果、ガザではハマスによる対抗クーデターが起き、ファタハ(アッバース率いるパレスチナ自治政府の軍事部門)がガザから追放された。アッバースの目標はハマスを弱体化させて自分の立場を強化することにあるようであるが、パレスチナ人をはじめとする中東のアラブ人のアッバースに対する怒りはとても強いので、彼がまともに統治できるとは考えにくい。

嘘5:イスラエルは標的地域からガザのパレスチナ人が避難することを望んでいたのだから、民間人の死に責任は負わない。

イスラエルは、ガザの住人にこれからの爆撃から避難するよう呼びかけるラジオ・メッセージと電話メッセージを送ったと主張する。けれども、ガザの人々には避難する場所はない。人々はガザに閉じ込められている。国境を越えて逃げられないようにしているのはまさにイスラエルである。生き延びるために必要な食料も水も燃料も手に入らないようにしているのはイスラエルである。けが人を治療して命を救うために必要な電力も最低限の医薬品もガザの病院から奪っているのはイスラエルである。その上で、イスラエルはガザを広範にわたり爆撃し、民生インフラをはじめとする国際法で保護された場所を爆撃している。ガザの内部に安全な場所はない。

ジェレミー・R・ハモンドは『フォーリン・ポリシー』(www.foreignpolicyjournal.com)誌の編集者。同誌は、米国の対外政策について、政府関係者や主流派私企業メディアが示す枠組みとは別の観点から、ニュースや批評、論説を提供するウェブサイトで、とりわけ「対テロ戦争」と中東事情に力を入れている。ハモンドは本記事以外にも多数のオンライン記事を執筆している。この記事はPalestineChronicle.comへの投稿。連絡先は、jeremy at mark here foreignpolicyjournal dot com.


デモクラシー・ナウ日本版にガザ関係の報道があります。

1月5日、「釜が崎有志の会」の呼びかけで、大阪の米国領事館前でガザ攻撃に対する抗議行動があったとのことです。大阪では、1月10日にも以下の行動が予定されています。

許すな!イスラエルのガザ侵攻 1.10緊急行動
~パレスチナ民衆を殺すな!~
日時:09年1月10日(土)午後2:00~
   2:45~デモ出発
場所:中之島公園女性像前集合
  (地下鉄淀屋橋下車)
主催:同実行委員会

その他、パレスチナ関係のニュースやイベントについては、パレスチナ情報センターをご覧ください。

各地の年末年始越年闘争は、「年越し派遣村」も含め、一段落のようですが、一方で総務省の坂本哲志政務官のように、年越し派遣村に対して「まじめに働こうという人たちが集まっているのか」という唖然とする発言をする人間も出ています(翌日謝罪しましたが)。働きたいけれど仕事がない頚を切られた、働いても生きていける収入が得られない、そんな状況に対し、その状況を作り上げるのに加担した人間たちは相変わらず、無頓着なようです。
益岡賢 2009年1月7日

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