イラクにいる我らが傭兵
ジェレミー・スカヒル
2007年1月25日
CounterPunch原文
火曜日、ブッシュ大統領が演台で一般教書演説をぶっているとき、アメリカ合衆国の5家族が、聞き慣れたニュースを受け取っていた。家族の一員がイラクで殺された、というものである。けれども、このとき殺されたのは、ニュース報道で言われていたように「民間人」ではない。といって、米軍兵士でもない。彼らは、ノースカロライナに本社を置く秘密主義の民間軍事企業ブラックウォーターUSAにより、高度な訓練を受けてイラクに派遣された傭兵である。
この会社が新聞の見出しを飾ったのは、2004年、スンニ派の拠点ファルージャで、同社傭兵の4人が待伏せ攻撃を受けて焼かれ、二人は黒こげになって、橋から数時間にわたって遺体をつり下げられたときであった。この出来事は、戦争の転回点となり、それから米軍は繰り返しファルージャを包囲して攻撃し、一方、イラク人レジスタンスにも火がついた。占領下で、この状況が今日まで続いている。
今またブラックウォーター社がニュースとなったことは、戦争がどれだけ民営化されたかを思い起こさせる契機ともなっている。火曜日(23日)、バグダードで最も暴力の激しい地域で、ブラックウォーター社のヘリコプターが一台、撃墜された。この墜落で死亡した男たちは、ブラックウォーター社が米国国務省と3億ドルで契約した外交官向け治安維持活動を行っていた。この契約は、もともと、2003年、同社がイラクの統治者L・ポール・ブレマー3世を護衛するために無入札で得たものである。現在イラクに駐留するザルマイ・カリルザド----彼もまたブラックウォーター社の護衛を受けている----は、彼らの遺体を見にモルグに行ったと語り、彼らは「戦時交戦」状況で死亡したと述べた。
ブッシュは、一般教書演説の中で、ヘリコプターの墜落については一言も言及しなかったが、戦争の民営化を、自分の対イラク政策の中心----さらなる兵士の必要性----に関わる問題として語った。ブッシュ大統領は、向こう5年間で戦地勤務兵士の数を約9万2000人増やすことを認めるよう議会に求めた。彼はそれから、米国の災害対応/再建/戦争機構を大きく展開する鍵となる、「市民予備部隊」創設の予定に言及する中で、口を滑らせた。
「そのような部隊は、軍の予備兵部隊と同様の役割を果たすことになるだろう。それにより、アメリカが必要とするときに、決定的に重要な技術を持った民間人を雇って海外の作戦に従事させることが可能となるため、軍兵士たちが抱える任務の重圧を減らすことができるだろう」とブッシュは宣言した。実際のところ、現米国政府は、まさに軍事問題に関するこのような革命を、アメリカ合衆国の人々に隠して、また議会にもほとんど相談せずに、進めているのである。ブッシュとそのお仲間たちは、納税者の資金を使って、アウトソーシングされた演習施設を運営している----イラクはそれが作りだした怪物フランケンシュタインである。
既に契約私企業の傭兵はイラクで二番目に大きい「部隊」となっている。最近の調査によると、イラクには約10万人の契約要員がおり、そのうち4万8000人が傭兵としての任についていると政府説明責任局は述べている。これらの傭兵はほとんどまったく監視も実効的な法的拘束もなしに活動しており、占領の射程をそれと述べずに広げている。契約要員の多くは、1日1000ドル近くを稼いでおり、戦地勤務の兵士よりもはるかに稼ぎは大きい。さらに、契約要員が死んでも公式犠牲者数には考慮されないため、これらの部隊は政治的にも好都合である。
ブッシュ大統領が提案した市民予備部隊を思いついたのはブッシュだけではない。その民間バージョンは、2年前から、エリック・プリンス----秘密主義の保守派超億万長者でブラックウォーターUSAを所有し、永年にわたって傭兵を合法的な兵力として見直すよう求めるキャンペーンの笛吹役を務めてきた----により提案されていた。2005年の早い時期に、大統領の巨大な資金源であるプリンスとその仲間たちは、軍関係の会議の場で、正規の軍を補完するために「契約要員旅団」を設けるという考えを売り込んでいた。「[ペンタゴン内には]軍の通常規模を拡大し続けることに対する困惑がある」とプリンスは述べていた。政府関係者たちは「3万人の増員を望んでおり、そのために36億ドルから40億ドルを要すると語っている。さて、私の計算では、それは兵士一人あたり13万5000ドルである」。彼はさらに続けて、「我々は確実にそれより安くあげることができる」と述べた。
プリンスは単に抽象的に考えてるだけの人物ではなかった。彼は自分の軍隊を有しているのである。ブラックウォーター社は1996年、「政府のアウトソーシングが見込まれる中、その需要を満たすため」の民間軍事訓練キャンプとして始まった。こんにちでは、同社の契約対象は、軍や諜報組織の中枢から、ホワイトハウスの上層部にまで及ぶ。同社は地球規模の「対テロ戦争」のためのエリート・ペンタゴン・ガードとして自らの地位を確立し、世界最大の民間軍事基地と、出動待機体制にある航空機20機の部隊と2万人の兵士を擁している。
イラクやアフガニスタンからハリケーンで破壊されたニューオーリンズの街、そしてカリフォルニアの災害に対応するためのアーノルド・シュワルツネガー知事との会見に至るまで、ブラックウォーター社は今や防衛・本土安全保障作戦版のFedExとなりつつある。新十字軍を唱え、ブッシュ大統領の財源となっている人物が運営する一民間企業にそのような力が集中する状況は、1961年にアイゼンハワー大統領が警告した「軍産複合体」を体現するものである。
アメリカ合衆国の戦争機械をさらに民営化し、市民予備部隊といった名前で粉飾して裏口から軍を拡大しようとすることにより、アメリカ合衆国の民主主義の未来にはさらに破壊的な一撃が加えられるだろう。
ジェレミー・スカヒルはネーション・インスティチュートのパフィン財団ライティング・フェローで、近刊予定の『Blackwater: The Rise of the World s Most Powerful Mercenary Army]』の著者。メアドは、jeremy[atatat]democracynow.org。
■憲法改正手続き法案
何がなんでも9条を変えるための「改憲手続き法案」という解説ページがあります。
恣意的な性格、デタラメさがよくわかる解説になっています。
背景と動向については、許すな!憲法改悪・市民連絡会ホームページをご覧下さい。
■石原都知事三選反対賛同署名ページ
「東京の教育を破壊してきた石原知事の三選NO!署名」への賛同署名ページがあります。
石原都知事といえば、都政私物化の実状がきっこの日記などで明らかにされています。
■参議院選挙
夏に参議院選挙が迫っています。現与党自民党は、この選挙で、佐藤信秋元国土交通省事務次官を比例区候補に選びました。佐藤信秋氏は、耐震偽造問題の責任をうやむやにするために奔走した人物とのことで、そのご褒美に比例区候補にしてもらったらしきことが、「きっこのブログ」さんに掲載されている、イーホームズ株式会社藤田社長が1月26日に出した緊急メッセージから伺えます。
やはり耐震偽造でニュースになっているアパグループについても、きっこのブログがわかりやすく書いています。
何とか汚職の一端に食い込んで、オコボレをもらおうと計画していたり、たいくつな日常生活に疲れたため、これから子どもたちをお国のために戦場に送って人殺しをさせ、また自身の命も落とさせて、それに泪するという自己満足に浸りたいと考えていたりするのでなければ、この夏の参院選で現在の与党に投票しないほうがよいように思えます。
■イラク関係
イラク人医師2人を迎えての講演会が2月5日に東京で行われます。
日時:2007年2月4日(日)
午後5時30分開場/午後6時 開演
場所:文京区民センター(文京区本郷4-15-14)
2階2A会議室/都営地下鉄 春日駅A2出口すぐ上
営団地下鉄 後楽園駅徒歩3分
JR水道橋駅徒歩13分)
参加費:500円
■誰が、何を決めるのか?
改悪教育基本法の一つの大きなポイントは、「誰が、何を決めるのか」という点に関わっています。改悪法では、未来の世代の人々を自分たちの道具としか考えないような人たちが、自分たちのために、未来の世代の人々の意見を聞く可能性を押しつぶして、「教育」のあり方を決める、というかたちになっていました。
釜パト活動日誌に掲載されているSさんの弁明書という文章も、同じ問題を鋭く提起しています。