アフガニスタンからアフリカまで
米国製「死の部隊」の復活
コン・ハリナン
CounterPunch原文


国連の当局者は、「国際諜報サービス」が、アフガニスタンの民間人を襲撃して殺害し、それから官僚機構という「貫通不可能な」壁の背後に実行犯を隠蔽していると告発している。

国連人権理事会のフィリップ・オールストンは、「重武装した外国人」が現地の民兵を率い、アフガニスタンの民間人を何十人と殺していると語った。連合軍は、今年1月以来、200人以上のアフガニスタン民間人を殺している。

彼は、米国やNATOの軍司令系統とは独立に行動するこうした襲撃を「容認できない」と語る。オールストンは、1月に、カンダハールで、こうした襲撃の一つで二人の兄弟が殺された事件に言及した。カンダハールはタリバンの勢力が強い地域である。

「情報に通じた政府関係者を含め多くの人が、[二人の]犠牲者はタリバンと何の関係もないことを認めていたし、二人の死を取り囲む状況も疑わしい」と彼は言う。

しかしながら、この殺人を調査しようとしたオールストンは妨害に直面した。「国際軍の司令官から何が起きたかについての見解をまったく得ることができなかっただけでなく、軍司令官は誰一人として、自分の司令下にいる兵士が関与していたことを認めさえしなかった」。フィナンシャル・タイムズ紙に彼はこう語った。

疑いは米国中央情報局(CIA)に向けられている。CIAは1990年代にオサマ・ビン=ラディンを拘束あるいは殺そうと、そうしたチームをアフガニスタンに送り込んでおり、2001年の侵略の際にも再び送り込んだ。

オールストンによると、この「影の部隊」は、二つの基地を拠点としている。カンダハール近くのゲッコ米軍キャンプと、ナンガルハル州の基地である。「重武装した外国人が、重武装したアフガニスタン人部隊を率いてうろつき、危険な襲撃を行い、非常に頻繁に殺人を犯して、誰一人その責任をとらない状況は絶対に認められない」と彼は最近の国連報告で述べている。

これによく似た事態が、イラクでも進んでいる可能性がある。ボブ・ウッドワードは、新著『内なる戦争』の中で、米軍が「過激派グループの鍵となる個人を見つけだし、標的として殺す」作戦を行っていると書いている。先月、米軍特殊部隊が、バグダードの北、サラフディン県の県知事の息子と甥を殺した。路上防塞の場で米軍兵士が発砲した状況----よくある事態である----とは異なり、二人は基本的に処刑されたと、事件を調べたイラクの調査団は語っている。

米軍報道官は、襲撃を実施したのは「アルカーイダ・イン・イラクの工作員の疑いがある人物」を捕らえるためでり、米軍兵士に対して「激憤」したときにその男性が負傷したのだと述べた。別の「テロリスト容疑者」も負傷し拘束された。「二人とも武装しており、敵対的な意図を露わにした」と、この報道官は言った。

けれども、ハメッド・アル=カイシ県知事の報道官によると、米軍兵士たちは朝3時に家に押し入り、17歳の息子が寝ているところを射殺したという。甥は、騒ぎを耳にして部屋に入ろうとしたところを、やはり射殺されたという。

この殺人は、6月にカルバラで起きた殺人と似ている。カルバラでは、現イラク首相ヌーリ・カマル・アル=マリキのいとこが殺された。いずれの場合も、襲撃についてイラク当局は何も知らされなかった。

問題は次の点である:イラクの米軍特殊部隊とアフガニスタンのCIA部隊は、秘密暗殺作戦を実行しているのだろうか? 世界中のほとんどの場所で、秘密暗殺を実行する集団は、「死の部隊」と呼ばれている。

***

傭兵たちは絶好調である。先月AP通信が、悪名高き傭兵企業ブラックウォーター・ワールドワイドが傭兵ビジネスから撤退すると報じたが、それは誤報だった。ブラックウォーター社の報道官は、記者が彼の意図を誤解したと述べた。実際、イラク戦争が徐々に落ち着いてくる中で、ブラックウォーターやトリプル・キャノピー、ディンコープといった企業は、さらに食い物にできる市場を探している。その多くは、アフリカにある。

保守派の軍事アナリスト、デヴィッド・アイゼンバーグが自分のコラム「戦争の犬たち」で指摘しているように、傭兵たちはある意味で自分たちの近いルーツに帰還している。「今日の私設治安企業の多くは、南アフリカに本社を置き、アンゴラとシエラレオネで戦闘に参加したエグゼクティブ・アウトカムズ社を祖先としている」とアイゼンバーグは言う。

エグゼクティブ・アウトカムズ社と南アフリカのアパルトヘイト軍は、アンゴラの長く悲惨な内戦----この内戦は、主として南アフリカのアパルトヘイト政権と米国が、ザイールと中華人民共和国の助けを借りて煽り立てたものだった ----で、アンゴラ兵とキューバ兵の前に壊走した。

けれども、この敗北は、エグゼクティブ・アウトカムズ社にとって大した挫折にはならなかった。ジャッカルを追い払うのは難しい。

冷戦の対立は成長市場を生みだし、レーガン政権が民営化への情熱を燃やしたこともあって、米国のミリタリー・プロフェッショナル・リソーシズ社(MPRI)やディンコープ社といった傭兵組織が、ラテンアメリカやバルカンの紛争に参加した。

民営化へ突き進んだ政権は、ロナルド・レーガンとジョージ・W・ブッシュ政権だと一般に信じられているが、『雇われスパイ:諜報アウトソーシングの秘密世界』でティム・ショロックが指摘するように、情報収集と戦闘に私企業を参入させたのは実はビル・クリントンだった。

ショロックによると、クリントンは「保守派のレーガンがやめたところを引き継いで」、任期が終わるまでに連邦政府の職36万を削減した。契約私企業への支払いは、1993年から44パーセント増加した。

右派のヘリテージ財団----ブッシュ現政権に強い影響力を有している----は、1996年のクリントン政権の予算を「これまで合衆国大統領が通した中でもっとも大胆な民営化政策」と言っている。

ブラックウォーターやディンコープ、MPRIやトリプル・キャノピーを雇うことのはっきりした利点の一つは、議会の監視をすり抜け、統一軍事裁判法のような厄介な障碍をかわし、戦争の費用を隠蔽できる点にある。

今や、これらの傭兵たちは古巣のアフリカに戻り、「平和維持部隊」を訓練している。問題は、今日の「平和維持部隊」が明日の殺し屋になりかねない点にある。米軍の戦略研究インスティチュートによる訓練プログラムの調査から、「この25年間にリベリアを略奪した武装グループすべての中核に」、米国が訓練した兵士たちがいたことがわかっている。

ディンコープが現在リベリア兵士を訓練している点について、この研究は、「武装エリートたちを創り出す」ことには確実に否定的な面があると警告している。米国が訓練予算を撤回したら、「リベリアは時限爆弾を抱えることになる。充分な訓練を受け武器を有する、高い給与と良好な兵役環境に慣れたエリート兵士の部隊、これをリベリア政府が単独で維持するのは不可能かも知れない」。

MPRIは、ベニン、エチオピア、ガーナ、ケニア、マリ、マラウィ、ナイジェリア、ルワンダそしてセネガルの軍を訓練している。ディンコープはダルフールとソマリアで兵士を訓練している。名目は、テロリズムとの戦いおよび治安の確保ということになっているが、米軍の介入----直接介入に加え、傭兵そして属国エチオピアを介した介入----は、ソマリアを完全に不安定化し、ダルフールに匹敵する危機を創り出した。

ダルフールの栄養失調率は13パーセントだが、ソマリアでは地域によって栄養失調率が19パーセントにのぼる。国連が「緊急水準」とみなしているのは15パーセントである。

「ソマリアの状況はアフリカ大陸最悪である」とソマリアの国連責任者、アフメドゥ・オウルド=アブダラーは語っている。

ソマリアの国連人道サービス代表エリック・ラロッシュによると、米国が後押しした侵略により追放された「イスラム法廷会議」のもとでの方が、状況ははるかに良かったという。「はるかに平穏で、我々の仕事ははるかに容易だった。イスラム主義者たちは仕事の邪魔をしなかった」と彼は言う。

ブラックウォーター社の傭兵は昨年、武器を持たないイラク人市民17人を射殺し、無闇に銃を撃ちたがるカウボーイとの悪名を馳せているにもかかわらず、ブラックウォーター社はスーダンでも活動を開始するらしい。女優でダルフールの活動家でもあるミア・ファローは最近同社の社主エリック・プリンスと会見し、西スーダンで同社が軍事的仕事に参入する件を議論した。

国防産業大学が行った2007年の研究によると、「この4年間、イラクが[傭兵]産業に提供してきたことを、今後20年にわたりアフリカが提供するかもしれない。膨大な成長のエンジンを提供することになる」。

そうした成長の背後にあるのは、「主権と資源の略奪にほかならない」とトランスアフリカのニコル・リーは言う。米国国家エネルギー政策展開グループは、2015年までに米国の石油輸入の25パーセントはアフリカからもたらされると推定している。その大部分が、ギニア湾と北アフリカの西部から来るが、スーダンはアフリカ第二の埋蔵量を誇る。

米国はアフリカ地域の軍司令部----アフリコム----を設立したが、司令部受け入れに同意した国はない。アフリカにおける米国の狙いに対する疑いは大きいが、同じ疑いの目はどうやら米国の傭兵企業には向けられないようである。アフリコムを安全距離に置いているその同じ国々が、ブラックウォーターやディンコープ、トリプル・キャノピー、MPRIなどを受け入れているのである。

傭兵は、米国の独占物ではない。イスラエルもまた、治安監視所を、イスラエルの傭兵企業モディン・エズラヒを使って民営化し始めた。イスラエル国防相の報道官によると、「今年末までに、検問所の人々[守衛]は全員、民間人にする」。

イスラエルは、検問所を非軍事化したいために、軍を傭兵で置き換えていると主張するが、平和活動家たちはその議論はナンセンスだと言う。人権団体マッショム・ウォッチのハンナ・バラグは、民間人の保安要員は「ランボー」で、イスラエル軍兵士とまったく変わらない振舞いをする。

国連は、傭兵たちが軍の肩代わりをし出してから、「大きな困難」が増えたと報じている。

イスラエルの現国防相エフード・バラックの元顧問ダニエル・レーヴィは、本当の理由は、それにより、250万人のパレスチナ人を統制する重荷をイスラエルの人々から取り去ることにあると語る。「傭兵により[占領を]イスラエル社会から切り離すのだ」と彼はフィナンシャル・タイムズ紙に語っている。「彼ら[傭兵]は、家に帰って母親に自分たちがしていることを話したりはしない」。

結局のところ、最終帳尻は純損失である。2008年末までに、イラクの私営契約企業----19万人規模に達している----に、米国納税者の金を1000億ドルつぎ込むことになると推定されている。


■ 辺野古・高江

辺野古浜通信-photo-辺野古情報をご覧下さい。

■ NPO法人POSSEイベント

「格差社会とナショナリズム」
 高橋哲哉×萱野稔人座談会
日時:10/5(日) 14:30~(開場14:00)
会場:笹塚区民会館(京王線笹塚駅より徒歩8分)
   住所:笹塚3-1-9
資料代 500円

■ 岡まさはる記念長崎平和資料館 第41回連続ビデオ上映会

フィルム上映会
南京・引き裂かれた記憶
2008年10月4日(土)
   13:30開場/14時上映開始
場所:チトセピアホール
   入場料1000円(学生500円)

■ 派遣労働を考える市民懇談会

日時:2008年10月10日(金)午後6時半から8時45分まで
場所:たんぽぽ舎(東京)    JR水道橋駅・地下鉄神保町駅から徒歩6分
   電話:03・3238・9035
講師:高岡甫雅
   (よこはまシティユニオン・執行委員)
参加費:500円(当日資料を配ります)
主催:市民の意見30の会・東京
   (電話:03・3423・0185)

■ サダコへ そしてイラクのこどもたちへ2008

語り:『想い出のサダコ』 滝沢ロコさん、浅利倫映さん
対談:内部被曝の脅威(仮称) 肥田舜太郎医師、鎌仲ひとみ監督
日時:10月25日 午後2時~4時
会場:立教大学池袋キャンパス8号館341教室
 ※ 入場料:無料(ぜひカンパを)
共催:劣化ウラン廃絶キャンペーン、
   日本イラク医療支援ネットワーク
   「サダコ」・虹基金
お問い合わせは JIM-NET東京事務所へ
   TEL:03-6228-0746、
   e-mail:jim_tokyo★jim-net.net
   (★を@に変えて送信してください)

益岡賢 2008年10月3日

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