イラクの報道を殺す
デーブ・リンドルフ
2008年6月19日
CounterPunch原文
2005年、ロイター通信社と契約していたジャーナリスト、ワリード・カレッドを米軍が殺害した事件に対し、米国国防総省の調査は、米軍兵士たちの行為は「正当化」されると結論した。ロイター通信は、この調査に「満足」かもしれない。私たちは、満足してはいけない。
カレッドと運転手は、米軍兵士とイラク警察が攻撃を受けているとされる銃撃戦の現場に到着したとき、米軍兵士達によって殺された。ペンタゴンの事件調査報告は、二人が現場に到着したとき、米軍兵士たちは、カレッドのビデオカメラと三脚をロケットランチャーと間違えたと結論している。兵士達は警告発砲をしたとも言われている。カリッドの運転手が、当然すべきことをしたとき、すなわち、現場からゆっくりバックで車を後退させたとき、米軍兵士たちはそれを「ゲリラの戦略と考え」、車両を「使えなく」するために発砲し、二人を殺した。
まず、イラクで米軍に殺されたジャーナリストはカレッドだけではないことを確認しておこう。そこから、米軍兵士に随伴する軍属プロパガンダ屋とは一線を画すジャーナリストたちが、恰好の標的とされている現実がはっきりと浮かび上がる。米軍がイラクの人々に加えている暴力を、アメリカ合衆国にいる人々がほとんど知らないのは、このためである。
しかしながら、ジャーナリズムを巡る問題とは別に、この事件からわかるのは、自分の仕事をしようとしているだけで罪のない記者と罪のない運転手があからさまに攻撃的な米軍兵士(米兵たちそしてペンタゴンの「調査団」は、最初、この殺害行為を隠蔽しようとしたようである)に殺されるという事実に加え、イラクでは、戦闘の現場に遭遇してしまった人は誰であれ、何の罪がなくても、米軍兵士に惨殺される可能性があるという点である。
イラクで日常的に殺されている何百という人々の悲劇的な出来事と、カレッドの事件とを区別する点は、カレッドが著名な西洋の通信社に雇われたジャーナリストだったということだけであり、通信社の影響力と知名度があったから、実際に公開の調査をカレッドの事件について求めることができたのである。
似たような状況で殺されたイラクの人々については、調査がなされないだけではない。そもそも、殺されたことが報道されることさえない。米軍司令官たちが口に出した有名な、気分の悪くなる言葉を使えば、「死者の数は数えない」。
一般のイラク人が、ほぼ全員、ブッシュがイラク傀儡政権に承認を迫っている新植民地主義的な「取引」----米軍兵士に法的な刑事免責を与え、好き勝手に誰にでも攻撃を加え逮捕できるようにするとともに、イラクで米軍兵士が何をしてもイラク当局が米兵を逮捕できなくすること----に反対しているのには、理由がある。イラクの人々は、日々、米兵たちがナチスの突撃隊のようにふるまい、イラクの人々を殺して罰も受けない様を目にしており、そうした事態を阻止したがっている。
このような野蛮な占領が破滅的な終わりを迎えると考えない人は、妄想に取りつかれているだけだ。アメリカ合衆国で、イラク軍兵士が国中を跋扈し、罰せられる心配なしに何の罪もない運転手を爆殺し回っている状況を想像してみよう。米国人は自警団を組織し、対抗行動に出るだろう。イラクで起きていることも同じである。
ペンタゴンが、地上部隊兵士を送り込むかわりに空からの爆撃を強化し、さらに米国のビデオジョッキーから遠隔操作するプレデター無人飛行機を使って「ゲリラの容疑者たち」を攻撃していることで、一般のイラク人の状況は悪化している。こうしたやり方で米軍の犠牲者は減るかもしれないが、「副次的被害」と米軍が呼ぶ、罪のない非戦闘員の犠牲者の数も比率も、不可避的に増える。
米軍兵士たちによるカレッド殺害は、カレッドの同僚や家族には個人的な悲劇だが、イラク状況に注意を払っている人々にとっては、ブッシュ/チェイニー/民主党支配の議会が共同で進めるイラク戦争と占領の悲惨な現実を示すものでもあった。
イラク戦争から帰国し、反戦イラク退役兵の会(IVAW)に参加した退役兵たちは、勇気を持って、現在も続いている惨劇に反対する声をあげている。兵士も海兵隊員も、繰り返しイラクに派遣されて非人間的になり不満を抱え、生き延びて帰国すること以外考えられなくなると彼らは言う。イラク人すべてを憎みはじめ、「イスラム野郎」とか「アラブ野郎」と呼んで、ドラッグで興奮し、判断力のないままパトロールに送り出される----カレッドと運転手に起きたような事件を引き起こさずにはいられない状況である。IVAWの一人、カミロ・メヒアはイラクへの再派遣を拒否して脱走兵収容所への禁固1年という有罪判決を受けたが、「ラマディからの道:二等軍曹カミロ・メヒアの個人的反乱、イラク戦争の回想」(Haymarket Books)という優れた著書の中で、米軍司令官たちが、自分たちが胸に戦闘の勲章をつけて帰国したいという欲望から、部下の兵士を無意味な紛争に巻き込み、そこで民間人が殺されることになると書いている。
少しだけ、考えてみてほしい。カレッドと運転手は、銃撃戦の現場に到着したとき、どのようにふるまうべきだったのだろう? 車に向かって発砲され(誰が戦闘しているか知らなかったに違いない)、車を止めたとして、そのままシートに座ってじっとしているのが適切な選択でないことは明らかである。車を前に進めるのは自殺行為だ。そこで彼らは、唯一残された理性的な選択肢を選んだのである。ゆっくりと後退すること。とれる行動の中で、まわりを最も安心させる行為であることは間違いない。それでも、米軍はそのふるまいを「典型的なゲリラの戦略」とみなし、二人を射殺した。
撤退が敵の「戦略」と見なされるならば、罪のない人が銃撃戦に遭遇したとき、そこから逃れる望みはない。
この犯罪戦争で、100万人以上のイラク人が殺され、その多くが米軍の兵器により犠牲となったことは、不思議ではない。
イラクの人々の大多数が、米軍の撤退を望んでいるのも、不思議ではない。
米国が据え付けたイラクの傀儡政権でさえ、ブッシュ/チェイニーが進めている占領の永続化、米軍兵士の免責、イラクに58の米軍基地を置くこと、米軍が制空権を握り、好きなように人々を爆撃できるようにすることという政策に反対しているのも、当然である。
カレッドの身に起きたできごと----そしてペンタゴンがそれを「正当だった」と言うことができる状況----から、イラクで進んでいる危機に対する唯一の解決策は、米軍が即時撤退することであることがはっきりわかる。
デーブ・リンドルフはフィラデルフィア在住、調査記者・コラムニスト。新著は「The Case for Impeachment」(St. Martin's Press, 2006で現在はペーパーバック版も出ている)。記事はwww.thiscantbehappening.netで読むことができる。
Falluja, April 2004ブログとの同時掲載>です。これとは別に、ハディーサ虐殺について米軍の軍法会議結果の記事が、イラク民間人殺害で海兵隊員に無罪、米軍法会議にあります。
■ イラクからの自衛隊撤退を求める署名
自衛隊イラク派遣差し止め訴訟の会から署名用紙がダウンロードできます。
■ 辺野古・東村高江情報
現地からの最新情報があります。
■ 六ヶ所村
ストップ再処理工場・意見広告の会、ストップロッカショ.jpをご覧ください。
■ 原子力空母の横須賀母港化を許さない 7・19全国集会
日時:7月19日(土)
13時プレイベント 14時集会 15時デモ行進
会場:横須賀市ヴェルニー公園 (横須賀市汐入町1丁目)
JR横須賀線「横須賀駅」下車徒歩2分
京浜急行「汐入駅」下車徒歩2分
集会終了後に米海軍横須賀基地へ向けて、デモ行進。
■ 第20回アジア労働者交流集会in神戸
日時/2008年6月30日(月)午後6時30分~
場所/神戸市勤労会館40号室
参加費/1000円
チラシ
■ 言論弾圧の水脈~横浜事件から立川反戦ビラ弾圧へ~
日時:7月20日 13:30開場14:00開始
会場:文京区民センター3A(地下鉄「後楽園」駅5分)
第1部 講演
「司法は言論をどう裁いてきたのか?」
小田中聰樹さん(東北大学名誉教授)
第2部 発言
・横浜事件再審請求のたたかい
・私にとっての立川反戦ビラ弾圧
第3部 シンポジウム
「抵抗の言論と表現-現在と未来」
天野恵一さん(反天皇制運動連絡会)
鵜飼哲さん(一橋大学教員)
岡本厚さん(雑誌『世界』編集長)
主催:横浜事件再審ネットワーク、立川反戦ビラ弾圧救援会
■ 「君が代不起立・続編」予約販売と制作基金カンパのお願い ↓
ビデオプレスのHPをどうぞ。
■ 神奈川平和遺族会公開学習会
「在日コリアンに対する戦争責任は?」
日時:6月28日(土)14時~16時30分
場所:かながわ労働プラザ(Lプラザ)4階第4会議室
(京浜東北線石川町駅北口下車徒歩5分)
講師:関田寛雄さん(青山学院大学名誉教授、牧師)
資料代:500円
■ 重慶無差別爆撃から70年――
日本軍による重慶爆撃と「靖国」を考える集い
日時=7月5日(土)1時半~5時
会場=全水道会館4階大会議室(東京・JR水道橋駅東口2分)
(電話03-3816-4196)
集会内容
第1部=重慶爆撃被害者の証言(中国から来日)
第2部=講演「重慶爆撃と『靖国』思想」
西川重則(平和遺族会全国連絡会代表)
資料代=500円
主催=平和遺族会全国連絡会
協賛団体=重慶大爆撃の被害者と連帯する会・東京
■ 築地・市場移転に断固反対! デモ予定(7月12日)
日時:7月12日(土)12時集合、12時半出発
場所:築地正門前(集合)
交通:地下鉄大江戸線、築地市場
■ G8サミット、テロリスト警戒中!!!
なるほど・・・
■ 【集会】米軍に盗まれた島――ディエゴ・ガルシア島の経験
日時:6月26日(木)18:30~
場所:総評会館501会議室
http://www.sohyokaikan.or.jp/access/index.html
資料代:500円
主催:ピープルズ・プラン研究所
18:30~19:30 映画「国を盗む」(簡単な自己紹介含む)
19:30~20:10 ラギニさんの話
20:10~21:00 質疑応答
米軍基地のために生まれ育った土地を追われたディエゴ・ガルシア島の人々。ディエゴ・ガルシアの基地撤去をめざしてモーリシャスで活動されているラギニ・キストナサミー(Ragini Kistnasamy)さんが来日され、開催する集会です。