コロンビア政治囚へのインタビュー
2009年7月13日
ギャリー・リーチ
ColombiaJournal原文


2008年8月8日、コロンビア国家警察はリリアニ・オバンドを逮捕し、反逆罪およびテロ集団への資金提供の罪で告発した。それから10カ月たっても、裁判は始まっておらず、オバンドはボゴタのブエン・パストル刑務所に入れられたままである。 FENSUAGRO(農業農場組合全国連合)国際関係委員会で働く彼女は、仕事として、講演や資金集めのためにカナダや欧州、オーストラリアなどを訪れ、そこでコロンビア政府の人権侵害を繰り返し批判してきた。2008年3月、コロンビア軍に殺されたFARC司令官ラウル・レイェスのラップトップで見つかったとされる証拠から、いわゆる「FARC=政治スキャンダル」が巻き起こったが、オバンドはその中で最初の逮捕者となった。そのオバンドに、先日、刑務所でインタビューを行った。

あなたがここブエン・パストル刑務所に拘留されている理由を教えて下さい。

私の告発の裏には政治的な動機があります。仕事の一環として、私は政府の人権侵害を批判してきました。政府は国際的なイメージを憂慮していますが、私たちは国際社会に向けて、コロンビア政府を批判してきたのです。ここコロンビアでは、司法手続きは政治に左右され、司法は独立していません。その結果、「意見犯罪」という新たな犯罪が作られたのです。コロンビアには7200人以上の政治囚がいますが、そのほとんどが良心の囚人です。

2008年8月8日、逮捕されたとき、どんな様子でしたか?

その日、友人たちが電話をくれて、私の逮捕命令が出たと教えてくれました。その日、メディアでは既に、私の逮捕命令が発表されていたようです。呼び鈴が鳴ったので、会う予定だった友人が来たのだと思いました。玄関に走って行き、扉を開けたところ、制服姿の男女が立っており、その後ろには武装した男たちがたくさんいました。我々はDIJIN[コロンビア国家警察諜報部]から来た、と彼らは言い、アパートを捜索し始めました。ロナルド・ハイデン・コイ・オルティス警部は、ラウル・レイェスのラップトップを押収し、ラップトップに入っていた情報に手を加えた人物でした。お前はラウル・レイェスの愛人だろう、と彼は言いました。アパートを一部屋ずつ調べ、仕事場では本を一冊一冊調べて、左翼の本が多いな、マルクスの本もある、と言いました。また、本の中に、ポロ・デモクラティコ・アルタナティバ[新民主党ポロ]の大統領候補カルロス・ガビリアのパンフレットを見つけましたが、警察にとって、それはFARCと関係しているという証拠なのです。警察はグロリア・ラミレス[新民主党ポロ所属のコロンビア上院議員]とカルロス・ロサノ[コロンビア共産党の新聞VOZの編集者]の写真も見つけ出しました。これらも警察にとっては疑わしいことなのです。カミロ[15歳になるオバンドの息子]の部屋で警官たちは、チェ・ゲバラのポスターを指差し、「母親をお手本にするとこうなるってわけか?」と言いました。カミロの部屋にあるポスターや本は、政府転覆を促すような資料だと考えたのです。彼らは、私をFARCと結びつけようと頭の中が一杯でした。捜索は約4時間続き、警官たちはすべてをフィルムにおさめました。そのフィルムは、まだアパートの捜査が終わっていないうちからニュースに流されました。警部は皮肉っぽい口調で「お前は国内でも世界的にも有名になるな」、と言いました。5歳の娘は武装した警官がたくさんいたので怯えており、私は、警官たちに連行されるまで、娘を抱いていました。逮捕されてから10カ月の間に、検察庁から尋問されたのは2回だけです。ようやく、二つの罪に問われていることがわかりました。反逆罪、そしてテロリスト・グループへの財政支援です。告発はいずれも、ラウル・レイェスのラップトップで見つかった電子メールに基づくとされるものですが、いずれの罪も認めません。

刑務所の生活はどんなものですか?

私は重警備のパティオ[独房棟]に拘束されていて、他のパティオから隔離されているので、他の囚人たちと付き合うことはできません。パティオ8には、政府に協力してきた囚人がいます。パラ=ポリティクス[準軍組織と政治の関係]で逮捕された人たちなどです。その多くはホワイトカラーです。一方、こっちのパティオ[パティオ6]にいる女性たちは全員、反逆罪を問われています。このパティオには84人拘束されています。全員がゲリラというわけではありません。労働組合員もいれば、コミュニティの組織化を行ってきた農民もいるし、学生もいます。共通しているのは、私たち全員が「反逆罪」を問われていることです。コロンビア法によると反逆は犯罪ですが、私たちにとっては権利です。INPEC[刑務所と拘置所を管理する全国機構]の表現を借りれば、「あなたの尊厳と私の尊厳は神聖不可侵」なのです。けれども、自分たちが人権を尊重しているという彼らの主張は、体制がつく最初の嘘です。ベッドの数が十分でなく、二つのベッドしかない監房一つ[縦8フィート・横5フィート]に三人入っているので、一人は床に寝なくてはなりません。「更生」の可能性はありません。INPECは契約仲介者の役割を担って、外の企業から仕事を引き受けることもありますが、それは労働権の侵害です。というのも、私たちは支払いを受け取らないのですから。また、ここにいる女性の約9割が母親で、多くは家長でもあります。3歳未満で母親とここで暮らしている子供は6人います。私は、二人の子を持つシングル・マザーであることを示す証拠を提出しましたが、それでも自宅軟禁は拒否され、刑務所に入れられました。ここに入っている10カ月の間に、さらに5回、自宅軟禁を申請しましたが、すべて却下されました。私たちのような政治囚と、パラ=ポリティクスに関与した人たちのあいだには違いがあります。パラ=ポリティクスに関係していた女性たちは、自宅軟禁要請を出しさえすれば認められるのです。この偽善は、[コロンビア大統領]ウリベの友人であるイディス・メディナのケースではっきりしています。

仕事の中であなたが批判してきた、コロンビアの政治社会問題はどのようなものですか?

特に、アレバロ・ウリベ政権にはファシズムの要素が多くあることです。ウリベ政府は反対派と貧しい人々を憎悪しています。本質的に寡頭制の政府で、上流階級と多国籍企業に奉仕する政権です。コロンビアの主権を放棄して米国に譲り渡し、コロンビアの資源も提供してしまいました。社会投資をせず、人道的な捕虜交換を拒否しました。和平プロセスに参加することも拒否しました。戦争政府であり、嘘月の政府なのです。この政府は国際社会に向けて、コロンビアは民主的な国で、人権を尊重し、人々のニーズを満たす政策を採っていると宣伝していますが、現実は違うのです。この政府は、不正義に対して何十年にもわたり闘いを続けてきた社会運動に対して戦争を仕掛けている政府なのです。私たちを黙らせたがっています。私たちを殺したあとで、死者の記憶を侮辱するのです。公正で誰もが社会参加できるコロンビアを望む私たちを投獄する政府です。実際のところ、ウリベ政府に、民主主義を実現する力はありません。

あなたが海外でFARCのために資金集めをしたという政府の主張についてはどうお考えですか?

海外で私が集めた資金は、FENSUAGROの人権プロジェクト、それから文化と教育関係プロジェクトに使うためのものです。資金がFARCに流れたなどという主張について、政府は何一つ証拠を持っていません。

あなたのケースはどのようになると思いますか?

司法手続がきちんと機能すれば、私は告訴内容のすべてについて無罪を言い渡されることになると思います。けれども、コロンビアの司法手続は政治的なものなので、海外の諸政府にコロンビア政府に対して圧力をかけてもらいたい、そして、手続が民主的に進むようコロンビアの人々と連帯してほしいと思っています。

リリアニ・オバンドのケースとリリアニの解放を求める国際キャンペーンについては、「コロンビアに平和と正義を」を参照のこと。


■ ブルース・ギャグノン・スピーキング・ツアー
  ~夜空を眺めて宇宙と地上の平和を考える夏~

宇宙への兵器と原子力配備に反対するグローバルネットワーク」のコーディネーターである、ブルース・ギャグノンさんが、9年ぶりに来日し、正式招待イベントの前後に、下記会場での講演会を行います。

東京:7/25  文京シビックセンター 18:00~
名古屋:7/26 名古屋YWCA   午後1:30~
京都:7/28 キャンパスプラザ京都  18:30~
福岡:8/11 早良市民センター    18:30~


詳しくは、北東アジアの核・ミサイル軍縮に向けてをご覧ください。関連の書籍として、『宇宙開発戦争』もどうかお読み下さい。

パレスチナ関係新著

ジャーナリストの土井敏邦さんが『ガザの悲劇は終わっていない----パレスチナ・イスラエル社会に残した傷痕----』(岩波ブックレット)を出しました。「住民殺戮の事実を、複数の目撃者の証言によって詳細に再現することに留意した」大切な一冊。

ぜひお読み下さい。

「反戦イラク帰還兵士の会(IVAW)」TJ.ブオノモさん全国スピーキングツアー(7/23〜7/30)

日時:会場
<秋田>
 7月23日(木)秋田大学 午後3時〜
<関西>
 7月21日(火)西宮市勤労会館 午後7時〜
 7月22日(水)エルおおさか南館ホール 午後6時半〜
 7月25日(土)バンジー(東成区役所1階)午後3時〜
 7月26日(日)京都アスニー 午後2時〜 
<関東>
 7月29日(火)青山学院大学青山キャンパス ①午後3時〜  ②午後6時半〜
 7月30日(水)川崎市総合自治会館 午後6時半〜
<広島>
 7月27日(月)広島市民交流プラザ 午後6時半〜
参加費  一般 1000円  学生・失業者・障がい者:500円
    (会場ごとに異なることがあるので詳しくはお問い合わせください)
主催 平和と民主主義をめざす全国交歓会
お問い合わせ   info at zenko-peace.com  TEL 090・8536・3170(山川)

<T.J.ブオノモさんの紹介>  IVAW(反戦イラク帰還兵士の会)シカゴ支部 空軍士官学校で中東学を専攻。イラク戦争に疑問を持ち、同僚士官達に自分の考えを伝え、当時の米国上院外交委員会のバイデン上院議員(現副大統領)にも書簡を送った。軍当局は「軍法上犯罪だ」として彼を告発。5ヵ月後に除隊処分を受けた。 *イラク国際労働者大会→「イラク平和テレビ局inJAPAN」 http://peacetv.jp/ ※IVAWの設立目的:イラクからの全占領軍の即時徹底、イラク国民への謝罪と補償、イラク帰還兵への経済的・精神的ケアなど。

益岡賢 2009年7月17日

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