コロンビアの人権危機をめぐるワシントン・ポスト紙の社説
ギャリー・リーチ
2007年5月7日
Colombia Journal 原文
5月6日付ワシントン・ポスト紙の社説によると、コロンビアには重大な人権問題は存在しないという。「同盟国への攻撃」と題された社説で、ポスト紙は、ヒューマンライツ・ウォッチが最近だした「今日、コロンビアは西半球で最悪の人権状況と人道危機状況にある」という主張を嘲笑し、そうした非難に値するのはベネズエラとキューバとハイチであるとほのめかしている。同社説はそれから、コロンビアの人権状況について「想像上の人権危機」という言葉を使い、人権危機は議会の民主党と左派の捏造にすぎないとあてこすっている。しかしながら、世界のどの地域よりもコロンビアで労働組合指導者が多く殺されていることが、人権危機に値しないというのはどういうわけだろう? 昨年、アワ先住民指導者5人が虐殺された事件が人権危機に値しないというのはどういうわけだろう? そしてまた、家を追われ国内避難民化している人々の数がスーダンに次ぎ世界で二番目に多い状況が人権危機に値しないというのはどいうわけだろう?
この社説が、アレバロ・ウリベ大統領のもとで殺人と誘拐の数が減ったことを指摘しているのは正しいが、ウリベ大統領に不利になるような人権問題については社説は都合よく沈黙している。2006年、コロンビアでは労働組合指導者72人が殺され----その前年に比べて犠牲者の数は増えた----世界最悪の座を更新した。犠牲者のほとんどは、ウリベ大統領の和平イニシアチブのもとで解隊されたとされる右派準軍組織に殺されたものである。実際のところ、「解隊」プロセスはむしろ「リストラ」プロセスとでも言うべきもので、中級の準軍組織指導者たちは単に新たな民兵を組織しなおしただけである。コロンビアのNGOインデパスによると、過去2年の間にコロンビア32州のうち22州で新たな準軍組織が43以上結成されたという。
ポスト紙の社説が激賞する「自由貿易」体制を批判したために労働組合指導者たちが殺され、先住民はただ単に左派ゲリラが活動している地域で暮らしているというだけで虐殺されている。2006年8月、先住民アワの指導者5人がコロンビア南部の町アタケルで虐殺された。彼らを含む1700人に及ぶアワの人々は、その前に、ウリベ大統領の治安戦略のもとでコロンビア軍により強制的に元々の地区から追放されていた。また、証拠は、先住民指導者5人を殺したのはコロンビア軍であることを示している。
一方、コロンビアの国内避難民の数はここ数年で劇的に増加し、現在では300万人を超す。2005年に自分たちの土地を負われたコロンビア人は30万人以上おり、その多くはアワ先住民と同様、米国が支援しているコロンビア軍により難民化された。対ゲリラ作戦の結果何万もの人々が家を追放される中、さらに何千人もが、「自由貿易」というお題目のもとで多国籍企業による開発を可能にするために豊富な資源を有する土地から無理矢理追放されている。
ワシントン・ポスト紙は、ウリベ大統領の支持率が最近80%を示したことをウリベが幅広い人気を得ている証拠としてあげている。しかしながら、この世論調査はコロンビアの四大都市住民を対象に電話で行われたものである。これはコロンビアでよく行われる世論調査主要であるが、調査で対象となるのはウリベ政権下で殺人と誘拐が減ったことの恩恵を被る社会層に限られる。追放と虐殺、失踪を初めとする様々な人権侵害のほとんどは、コロンビアの地方部で起きる。したがって、都市を対象とした世論調査は、政府が先導する人権侵害がはびこる地方部に暮らす人々の意見を反映していない。
ワシントンポストがコロンビアの人権状況を「想像上の人権危機」と述べて軽薄に矮小化し、ベネズエラとキューバ、ハイチの状況のほうがひどいとほのめかすことには言い訳も立たず、無責任きわまりない。現在重大な人権危機がハイチにあることは明らかだが、ベネズエラとキューバの人権状況はコロンビアの人権侵害を前にするとかすんでしまう。確かにキューバには表現の自由をめぐる問題があるが、団体を組織したり政治的見解を表明することで虐殺されることはない。
ウリベ大統領のもとで犯されている重大な人権侵害を否定することで、ワシントン・ポスト紙は、1970年代から80年代にアウグスト・ピノチェト支配下のチリを初めとするラテンアメリカの独裁政権下で起きていた大規模な人権侵害を否定した右翼に類する人権侵害弁護者の立場にたっている。少なくともワシントン・ポスト紙は、ウリベ大統領政府のもとでコロンビア軍とその仲間の準軍組織が犯している人権侵害の犠牲者に誠意をもって謝罪すべきだろう。
継続して紹介していますが、米国の独立系メディア番組として有名な「デモクラシー・ナウ」の日本版ができました。デモクラシー・ナウ!日本版をご参照下さい。
■改憲手続き法案について
許すな!憲法改悪・市民連絡会からのお知らせを転載します。
2007年5月10日午後、参議院議運で本会議をいつ開くかの話し合いが行われます。与党は11日に特別委員会で採決、14日に本会議で採決を提案して来るはずです。民主党がこれを受け入れないように、ぜひ以下のような要請をFAXで緊急にしてください。
最低投票率、公務員・教職員の運動制限、TV・CM、憲法審査会の権能、などなど、憲法特で審議すべき課題はまだまだたくさんあります。こんなに急いでまともな審議が出来るわけはありません。
世論の多数は慎重審議を求めています。
中央公聴会もまだ開かれていませんから、当然、開くべきです。14日に本会議などという暴挙は絶対に避けるべきです。民主党は全力で14日本会議などという与党の提案を必ずくい止めてください。
FAX一覧
小沢一郎 03−3503−0096 民主党代表
菅 直人 03−3595−0090 同代行
輿石 東 03−3593−6710 参院議員会長
今泉 昭 03−5512−2607 参院議員幹事長
郡司 彰 03−5512ー2626 参院国対委員長
簗瀬 進 03−3593−8567 参院憲法特理事
前川清成 03−5512−2712 参院憲法特理事
広田 一 03−5512−2520 参院憲法特理事
また、許すな!憲法改悪・市民連絡会のお知らせとは別ですが、与党幹部に反対の意向を伝えるよう要請も来ています。FAX番号は以下の通りです。
FAX送付先(頭の03は省略)
自民党
内閣総理大臣 安倍晋三 3508ー3602
幹事長 中川秀直 3508−3505
参議院政審会長 舛添要一 5512−2219
参議院幹事長 片山虎之助 3502−8896
政調会長 中川昭一 3580−5556
総務会長 丹羽雄哉 3508−3811
参議院議員会長 青木幹雄 3502−8825
国会対策委員長 二階俊博 3502−5037
参議院国会対策委員長 矢野哲朗 5512−2338
参議院議長 扇 千景 3592−0407
参議院憲法調査特別委員会委員長 関谷 勝嗣 3580-3800
公明党
代表 太田 昭宏 東京12区 3592-1019
代表代行 浜四津 敏子 3593-0134
幹事長 北側 一雄 3592-6655
国会対策委員会委員長 漆原良夫 3508-3939
筆頭副委員長 西 博義 3508-3509
政務調査会会長 斉藤 鉄夫 3501-5524
憲法調査会会長 白浜 一良 大阪 参704 5512-2704
座長 赤松 正雄 近畿h 衆1-412 3508-3412
■基地はいらない、どこにも 上映会
日時 5月29日(火)午後6時30分 開場
午後6時45分 上映開始
会場 東京都・文京シビックセンター 3階C会議室
(後楽園駅2分、春日駅3分、TEL:03-3812-7111、文京区役所の入るビル)
上映作品 『基地はいらない、どこにも』(日本電波ニュース社・45分)
「沖縄、岩国、横須賀、座間、各地の自衛隊基地、そして
グアムで… 米軍再編に対する抵抗は続く」(チラシより)
おはなし 小林アツシ さん(演出・取材・撮影を担当)
参加費 700円(会員 500円)
【主催】国連・憲法問題研究会
[連絡先]東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210
(TEL)03-3264-4195 (FAX)03-3239-4409
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