米国司法制度における権力と二重基準:コカコーラ訴訟とFARC訴訟
テリー・ギブス
2006年10月16日
コロンビア・ジャーナル原文
コカコーラ社と同社のコロンビア瓶詰会社が人権侵害に関与していることをめぐる訴訟が最近になって米国で却下されたことは、やはり米国で、コロンビアのゲリラ指導者が誘拐と殺人、麻薬取引、テロリズムで告訴されていることと何か関係があるのだろうか? 一見したところ、ほとんど関係がないように思われるかも知れない。けれども、この二つの訴訟を比較すると、司法上、そして政治的に、興味深い疑問が生じてくる。たとえば、あるグループが----それがコロンビア革命軍(FARC)のような政治グループであれコカコーラのような経済グループであれ----、米国の司法制度によって米国の外での行動の責任を追及されるのは、なぜ、いかにして、そしていかなる条件のもとでなのだろうか?
10月3日、米国地方裁判所のジョセ・マルティネス判事は、コロンビアの労働組合シナルトライナルおよび労働者数人が訴えた、アトランタに本社を置くコカコーラ社に対する、十分な資料の裏付のある訴訟を却下した。コカコーラ社とコロンビアの瓶詰め会社に対する訴訟が始まったのは2001年で、これらの会社が、コロンビア瓶詰め工場における労働組合活動を粉砕するために、脅迫、拷問、脅し、さらに殺人に訴える現地の準軍組織と共謀しているという訴訟内容だった。
判決の中で、マルティネス判事は、コカコーラ社が有罪かどうかについては判断せず、事実関係が受け入れ難いほど「曖昧」な訴訟を扱う裁判権がないと判断した。判事は次のように述べる:「企業の人権侵害に対する責任を示すことは本来的に困難なこと」であり、また、司法制度は「政治的アジェンダを追求するために・・・・・・企業に対して、結果の保障されない探り出しを行うために」使われるべきではない、と述べた。一方、ワシントンDCでは、FARCの指導者の一人リカルド・パルメラ(別名シモン・トリニダード)に対する訴訟が連邦裁判所で進められている。パルメラは、殺害、誘拐、陰謀、テロリスト組織に物的支援を与えたことで告訴されている。エクアドルで2年前に逮捕され、まずコロンビアに、次いで米国に身柄を引き渡されたパルメラはまた、麻薬取引での告訴されている。
今年3月、米国政府は、麻薬に関係する訴訟を使って「対テロ戦争」を追求するという計画に、パルメラの訴訟を組み入れた。米国司法長官アルベルト・ゴンザレスは、FARCの指導者トップ50人を、FARC制圧地域でコカイン関係活動に課税しているだけでなく、精製工場を運営し、地域の麻薬取引を支配しているとして、米国史上最も規模の大きい訴追を発表した。これらのFARC指導者たちは、米国政府には彼らの多くを麻薬取引活動と直接結びつける証拠がないにもかかわらず、訴追された。言い換えると、ゲリラたちは、ただ単にFARC----たまたま過去40年にわたって、米国の近しいお仲間である政府を転覆しようとしてきた組織----のメンバーだったために訴追されたのである。
パルメラ訴訟をフォローしてきた米国の弁護士ポール・ウルフは、このFARC指導者に対する個々の告発は、法的検討に耐えうるものではないと述べる。ウルフは、パルメラに対する最初の告訴内容、すなわち、米軍契約のノースロップ・グラマンが飛ばしていた監視飛行機の衝突----あるいは撃墜----に関するパルメラへの告発は、とりわけ弱いという。墜落現場で起きた銃撃戦で、米軍契約要員が一人殺され、3人がFARCの捕虜となった。彼らは今もFARCにとらわれている。ウルフによると、検察当局は、パルメラが撃墜を命じたとか、契約要員を捕虜に採るという意志決定に彼が関わっていたとかを示そうとさえしていない。検察がトリニダードをこれらの罪について告発しているのは、彼がそれに関与していたからではなく、ただ単に、彼が1万8000人からなるゲリラ・グループFARCの比較的地位の高いメンバーだからである。
法的観点からは、検察の立場は重大な問題を含んでいる。ウフルが指摘するように、「政府への反逆といった一つの犯罪を犯す意図を、別の犯罪を犯そうとする意図で置き換えることはできないし、ある犯罪を犯したとき、単にそこから別の害が生じたからといって、それが別の意図を要する別の犯罪についても有罪であるという根拠にはならない」。言い換えると、パルメラは米国軍事契約要員の殺害にも誘拐にも関わっていないのだから、米国の支援を受けるコロンビア政府に対してパルメラが反乱を起こしたというだけで、殺害と誘拐の刑事責任を問うことはできない。
コロンビア最大の日刊紙エル・ティエンポのワシントン特派員セルジオ・ゴメスが最近指摘したように、パルメラ訴訟は危険な前例となる可能性がある。すなわち、あるグループのあるメンバーが犯した犯罪について、米国の法では、同じグループのどのメンバーも刑事責任を負うということになる。この前例は、まさしく、マルティネス判事がコカコーラ訴訟を却下したときに警告したことに相当する、すなわち、政治的アジェンダを追求するたに・・・・・・国際的な狩り出しを行うことに相当する。
米国が進める「対テロ戦争」は、基本的に力が正義とされるかたちでまったく政治的なものとなっている。その結果、グローバルな「対テロ戦争」において何が「犯罪」かの定義を米国政府が決定している。けれども、私たちが、米国政府の司法的アプローチを一般化----あるいは民主化というべきかも知れない-- --したらどうなるだろう? たとえば、国連事務総長コフィ・アナンは、米国のイラク侵略は国連憲章違反であり、それゆえ不法であると述べた。実際、世界中の大多数の国は、米国がイラクで行っている戦争を国際法違反だと考えている。したがって、米軍は「犯罪集団」ということになるだろうか?
そうだとすると、米軍の指令系統の中で、総司令官を含むどのメンバーも、米軍という同じ組織の別のメンバーが犯した犯罪の刑事責任を問われるということにならないだろうか? たとえば、ジョージ・W・ブッシュ大統領やドナルド・ラムズフェルド国務長官を、アブグレイブでの人権侵害や、米軍が行ったイラク民間人虐殺の罪で裁判にかけることができるということにならないだろうか? まったく対照的に、パルメラ訴訟で使われているこうした法律の「論理」を適用するかわりに、イラクで米軍が犯した犯罪で裁判を受けているのは地位の低い兵士たちだけであり、その上官の責任を問おうという試みはない。
マルティネス判事は、証拠が「曖昧」であり、コロンビアの労働者に対して加えられた人権侵害に対してコカコーラ社が間接的な責任を負うには不十分であるとして、コカコーラ社に対する告訴を、却下した。もちろんコカコーラ訴訟はパルメラ訴訟とははっきり異なる----たとえば前者は民事訴訟であり刑事訴訟ではない----が、FARC指導者トリニダードに対する証拠も、コロンビアで米軍契約要員が殺害・誘拐されたことの間接責任を問おうとしている点で、同様に曖昧である。
それにもかかわらず、コカコーラ訴訟は、提出された証拠が現在の司法体制のもとでは不十分であるとして却下されたにもかかわらず、トリニダードに対する同様に曖昧な訴訟は進められそうである。一方の訴追が進められ、他方が却下されたという事実は、法的な妥当性によりも、権力がどこにあるかに大きく関わっている。
テリー・ギブスはコロンビア・ジャーナルの編集委員で、ケープブレトン大学政治学部の助教授。
様々なことが急激に起こっています。戦争のできる国造り。人殺しのできる国造り。黙って殺されて、お国のために死んだ名誉の死だと人々を導き、邪魔な人は逮捕する国造り。
■共謀罪について
10月17日に行われた共謀罪反対、市民と表現者の院内集会がストりーミング配信されています。リアルプレーヤが必要ですが、無料でダウンロードできるようです(けっこうしつこく有料版に誘導しますが、無料バージョンをゲットしてください)。
18日に開催された日弁連主催の共謀罪反対集会で、もしかすると10月24日にも、法務委員会法案審議冒頭に共謀罪を強行採決する可能性があるという分析がなされたそうです。
法務委員会委員に反対のFAX・電話を
法務委員会のメンバー連絡先一覧
■10・21国際反戦デー 銀座−日比谷公園デモ 街頭活動参加アピール
日時 10月21日(土) 午後1時半
集合場所 水谷橋公園集合(銀座1丁目12番地、地下鉄京橋下車)
デモ出発 午後2時
解散地 日比谷公園・内幸門
街頭行動 有楽町マリオン前 午後3時〜5時まで
街頭リレー・トーク バンド ビラまき
60年安保世代から 若者への青空対話
■STOP戦争! 10.22 WORLD PEACE NOW緊急アクション
◎北朝鮮の核実験反対
◎戦争につながる制裁反対
◎東北アジアを非核の地域に
各界各層の方々に緊急に呼びかけます。10月9日の北朝鮮による「核実験」発表以来、「戦争」の危険が語られ始めました。戦争に反対する人は一緒にアクションを起こしませんか。銀座をパレードして平和をアピールしたいと思います。それぞれの立場で、それぞれのやり方で平和を訴えてみませんか。
・日時:10月22日(日)集合13:30
パレード出発14:00
・集合場所:常盤橋公園(東京駅そば/交通:地下鉄三越前駅、地下鉄
大手町駅、地下鉄日本橋駅、JR東京駅)、日比谷公園解散(以上は
予定。月曜以降、再確認の連絡をしたいと思います。)
・地図
・パレードコース:常盤橋公園→銀座→数寄屋橋→日比谷公園(解散地点)
※プラカード、メッセージボードなどアピールグッズをお持ち寄りください。
※このアクションは非暴力アクションです。
■戦争準備ミサイルについて
まず、地対空迎撃ミサイル・パトリオット3が、多くの人々・地元自治体首長の反対にもかかわらず、嘉手納基地に運びこまれました。
1週間ほど前の話ですが、抗議先は、
・在日本アメリカ合衆国大使館(東京・日本語可)
03−3224−5000(代表)
ファックス03−3505−1862
・日本・外務省
03−3580−3311(代表)
・内閣官房内閣総務官室
03−5253−2111(代表)
・防衛庁
03−5366−3111(代表)
・那覇防衛施設局
Fax: 098−866−3375
・那覇アメリカ総領事(日本語可)
TEL:098−876−4211
FAX:098−876−4243
安倍政権は、今国会で教育基本法の改悪を進めようとしています。それに関して、日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」というのを出しているようで、それに誰もが署名できるような署名運動をやっているページが立ち上がったようです。日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」に勝手に賛同するみんなの署名運動解説(pdf)と日本教育学会歴代会長が「教育基本法改正継続審議に向けての見解と要望」に勝手に賛同するみんなの署名運動の署名サイトがあります。
ビデオプレスが「君が代不起立?教員たちのレジスタンス(仮)」という映像ドキュメンタリーを制作しており、カンパおよびDVDの予約受付を行っています。
安倍晋三・ジョージ・W・ブッシュは金正日を、金正日は安倍とブッシュを国内(・国外)でやりたいことをできる体制づくりのために必要とし、活用している、戦争脅迫スパイラル状態になっているようです。
そもそも米国はこれまでに1000回以上も核実験を行ってきた国。旧ソ連とともに、核実験大国です。
日本では「テロ対策特措法」の1年間延長が衆議院本会議で可決されました。しかしながら、これに関連して日本政府が行ったことといえば、米国によるイラク侵略と大量殺人の後押しをするなど。「テロ行使特措法」と言った方が良いようです。
■訪朝報告会:絆を断つな−北朝鮮の子どもたちへの粉ミルク支援
食糧難による栄養失調で一度は命を落しかけたピョンヤン市育児院のシンヒョン君。私たち北朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパンの粉ミルク支援が功を奏し、奇跡的に快復しました。歴史的責任を忘れ、憎しみと偏見ばかりが煽られ、北朝鮮―朝鮮民主主義人民共和国―の市井の人々の姿すら見えにくくなった日本社会では、戦争をしてちゅうちょ無く相手を殺す心の準備が進められているようにも見えます。私たちは「北朝鮮」という匿名の集合ではなく、一人一人と具体的な絆を結ぶ事こそが対話と平和の礎となると考え、制裁を乗り越え、ささやかながらも支援を続けてきました。
10月にピョンヤン市育児院を訪問した私たちは、まだまだ子ども達の栄養が足りていないことを実地に確認しました。シンヒョン君ら子ども達の命を紡ぐのか、制裁や戦争により全て断ち切ってしまうのか、日本社会に住む私達は、そこを問われているのではないでしょうか。
本集会ではシンヒョン君の現状や新しく出会った子ども達の様子を報告し、ファシズムに突き進みかねない日本社会で、隣人である北朝鮮の人々との平和の絆を結ぶ方途について議論します。
日時:11月11日(土) 18:00〜20:45
会場:文京区民センター 3階 3-C会議室
(日韓ネット名の案内が出ています)
東京都文京区本郷 4-15-14
地下鉄後楽園駅から徒歩3分
都営三田線春日駅から徒歩0分(A2出口直上)
参加費 800円(学生500円)
主な内容
・ピョンヤン市育児院や核実験前後のピョンヤン市街の風景を映像も交えて報告
・子どもの栄養状態調査報告
・提起と議論: 制裁・戦争ではなく対話と人道支援を!
主催:北朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン
(ハンクネット・ジャパン)
http://www.hanknet-japan.org
contact@hanknet-japan.org
■エネルギー
「ピークオイル」が騒がれる中、日本はまったく解決にならない(理由はレゲット著『ピーク・オイル・パニック』をお読みいただけますと幸いです)原子力を推進しようとしています。佐賀県・玄海原子力発電所で計画されているプルサーマルについての情報を提供するthink-Pu.netというのがあります。ご参考まで。
■ポリトコフスカヤさん
日本でも追悼集会が12日に行われました。その様子をNikon OnlineAlbumで見ることができます。アクセス後、右上の方にある「スライドショー」をクリックして下さい。
ポリトコフスカヤさん暗殺に対する反応をめぐって、とても大切なことが、竹山さんのメルマガPublicityで論ぜられています。
日本では、菅総務相が10月13日、「NHKには命令放送を行わせることができる。内閣が代わって、拉致問題が国の最重要事項になっていることは間違いない。そういうことを含めて検討したい」と述べたそうです。ロシアではTV・放送が翼賛化され、新聞ジャーナリストが殺される。日本も次第にそれに近づきつつある気配です。日本では、今のところそこまで統制しなくても、大手メディアではあまり情報が入りませんが・・・
■改憲手続き法案の廃案をめざす国会昼休みデモ
改憲手続き法案の廃案をめざす国会昼休みデモを行います。ウィークデーの昼という条件は厳しいですが、ぜひご参集願います。一人でも多くの方々にお知らせ下さい。
日時/10月31日(火)12時
場所/日比谷公園霞門集合
出発/12時15分国会(請願)デモ出発、衆院・参院議面請願
主催/5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会議/「憲法」を愛する女性ネット/憲法を生かす会/市民憲法調査会/女性の憲法年連絡会/平和憲法21世紀の会/平和を実現するキリスト者ネット/許すな!憲法改悪・市民連絡会)この件でのお問い合わせは03−3221−4668へ