アタケルの虐殺

ギャリー・リーチ
2006年9月18日
コロンビア・ジャーナル原文


今年7月初旬、64歳のセグンド・オルティスは、コロンビア南西部の深いジャングル地帯で、1700人のアワ先住民とともに、家を追放された。彼は、他の大勢の人々とともに、その地帯でコロンビア軍が行っていた作戦を逃れるために2日間も歩き通さねばならず、ようやく、アタケルとリカウルテという小さな町に避難した。けれどもその一カ月後、避難していたアワの人々に再び悲劇が襲った。「世界先住民の日」に、アワの指導者たち5人が寝床から引きずり出され、射殺されたのである。回りにいた多くの人々によると、どうやら、家を追われたアワの人々を守る任務にあたっていたはずのコロンビア軍兵士たちが、この虐殺を実行したらしい。

アレバロ・ウリベ大統領政権のもとで、コロンビア軍は、伝統的にコロンビアの荷台ゲリラFARC(コロンビア革命軍)とELN(民族解放軍)が支配していた南西部のナリニョ州の諸地域で作戦を激化させている。その結果、民間人に対する暴力が悪化している。というのも、コロンビア軍は、ゲリラの支配地域にあるコミュニティの多くを、ゲリラのシンパと非難するからである。

7月11日、コロンビア軍の攻撃により、400人の子どもを含む1700人のアワ先住民が、チャグイ・チムブサ保護区からむりやり追放させられた。アタケルのアワ先住民広報担当者は、アワの人々が追放されたのは政府のせいであると批判し、「政府に対し、軍事作戦を停止するよう求める。というのも、この軍事作戦で、ヘリや飛行機、兵士たちが我々の領土に侵入して武装グループを捜査しているが、その際人々を恐怖に陥れ、多くの住民を追放しているからだ。過去3年間、こうした状況が続いている」と述べた。

追放されたアワのうち約1200人がリカウルテの町に非難し、他の人々はアタケルの村の学校敷地に難民キャンプを設置した。政府機関アクシオン・ソシアルや国連難民高等弁務官事務所から多少の人道援助はあるものの、追放されたコミュニティは毎日の食事や衣服をはじめとする生活必需品を手にするためにとても苦労している。

アワの女性たちの中には、追放された人々の食事に必要な大量なスープと米を料理するために必要な素材を確保するために、毎日多くの時間を使っている。そうした中、それ以外のアワの人々は、熱帯雨林にある自分たちの家から遠く離れたなじめないコンクリートの環境の中で将来の不安を思いながら日々をクラしている。セグンド・オルティスは、「町の人々との間に問題はありません。けれども、ここには仕事が何もありません。こうしているうちにも、家では動物たちが死んでいっているでしょう。鶏や豚が」と語る。

アクシオン・ソシアルの一員としてアタケルの難民の中で活動しているソーシャルワーカのエルネスト・モレノによると、「家を追放されたアワの人々は恐ろしい人権侵害の結果に苦しんでいます。そして今、食料や衣服を必要としています。けれども、何よりも重要なのは、自分たちの家に平和的に戻れることです。彼らの文化は土地ととても密接に結びついています。その土地と動物たちを、むりやり放棄させられたのです。これは人道的悲劇です」。

追放された人々の4分の1を占めるアワの子どもたちは、おそらくこの追放と暴力で最も大きな影響を受けている。モレノが指摘するように「コミュニティ全体が苦しみを被っていますが、特に子どもたちの苦しみはひどいものです。子どもたちが何を感じ考えているか理解し、それを言葉にするよう手助けする必要があります。状況はとても複雑です。子どもたちはみんな脅かされています」。

人々が追放されてから1カ月後、再び暴力がアワの人々を襲った。黒いTシャツと迷彩ズボン、軍用靴を身につけた9人のガンマンたちが、アタケルで先住民コミュニティの指導者たち5人を虐殺したのである。殺人者たちは、8月9日の朝4時、6人の名前を記したリストを手にして現れた。彼らは標的のうち5人をベッドから引きずり出して射殺した。犠牲者は、コミュニティの元代表フアン・ドナルド・モラン、それからアデライダ・オルティス、マウリシノ・オルティス・ブルバノ、ハイロ・オルティス、マルレネ・パイの5人である。リストに記されていた6人目の人物、現在のアワ代表ドリス・プチャナは、アワの追放されたコミュニティの苦しみを人々に訴えるために「世界先住民の日」の会議に参加するため、ボゴタにいた。

アタケルのアワ広報担当者によると、「虐殺が行われていたとき、軍は500メートルしか離れていないところにいて、警察も町の中にいた。人々は学校で寝ており、指導者たちは住民の家に寝ていた。殺人者たちは朝やってきて、指導者たちを家から引きずり出し、動物を殺すように射殺した」という。

その当時アタケルにはコロンビア軍が大規模に駐留していたため、多くの人々は、殺人を犯したのはFARCゲリラであるという軍と国家警察の主張に疑問を呈している。コロンビア全国先住民機構(ONIC)のルイス・エベリス・アンドラデ代表は、「アタケルのように軍が厳重に警戒しているところでどうしてこんなことが起きうるのか理解できない」と語る。リカウルテにいるアワのある老女もまた、公式発表に疑念を抱いており、「5人の指導者を虐殺したのは自警軍[右翼準軍組織]だと思います。彼らはこれまで私たちのコミュニティを脅迫していたのです」と言う。

虐殺を取り巻く状況は、公式見解に懐疑的な人々の見解を支持している。たとえば、虐殺を行うためには、一部戦闘服を身につけたとても目立つ武装ゲリラがのうのうと、町の中を歩き回って夜の静寂の中何度も発砲しなくてはならない。しかも、軍の兵士たちや警官に囲まれている中でである。結局のところ、これはありそうにない。

さらに、殺害現場の側にいたにもかかわらず、政府軍はすぐに対応していない。さらに、アタケルとリカウルテに駐留している軍の隊ゲリラ部隊グルポ・カバル・メカナイズド部隊の兵士たちの多くは、迷彩服の下に黒いTシャツを来ている。また、アワの老人はやったのは自警軍だと考えているが、そうした準軍組織は、しばしば、非番の、軍服を一部身につけた兵士たちから構成されている。最後に、追放されたアワの人々によると、これまで自分たちを脅迫してきたのはゲリラではなく軍であり、また、自分たちを追放したのも軍であるという。

これまで、政府は、先住民の犠牲者の中にはゲリラがいたとほのめかしてきた。暗黙のうちに、だから殺人は正当であると示唆するための戦略である。虐殺の翌日、ナリニョ州知事オフィスは、犠牲者のうち2人は最近4カ月のうちに逮捕歴があり、ゲリラと非難されていたと発表した。結局、告訴はされず2人は釈放されていた。けれども、コロンビアでは、そうした逮捕がなされただけで、軍や準軍組織は逮捕された人々を「政府転覆を狙う者」と見なす。そして軍と準軍組織は、日常的に超法規的処刑を行っているのである。

虐殺の数日後、グルポ・カバル・メカナイズド部隊を含むコロンビア軍第三部隊ヘルナンド・ペレス准将は、民間人の安全を「保障する」ために、対ゲリラ部隊をもう一部隊送り込むと発表した。言い換えると、アワの人々を追放し、おそらくは虐殺にもかかわったであろう部隊と同じ部隊からさらなる兵士を、追放された先住民コミュニティを守るために送ろうというのである。

このおぞましい皮肉にアワの人々も気づいている。アタケルの広報担当者は、政府にはアワの人々を守る気がないと指摘し、次のように語る。「私たちは政府軍の軍事作戦により追放された。そして、政府軍が駐留している中で、虐殺が起きた」。

アワの人々の追放、そしてアタケルでの虐殺は、コロンビア政府軍が直接関与されたとされる人権侵害の増加の一例である。こうした出来事を受けて、アタケルのアワ広報担当者は「国際社会と国連に対し、コロンビア政府に圧力をかけて、このような出来事が我々の領土で起きないよう求めて欲しい、また、先住民を尊重するよう求めて欲しい」と呼びかけている。

注:米国国務省によると、アタケルの虐殺を行った可能性がある、イピアレスに基地を置く第三機甲部隊に所属するコロンビア軍グルポ・カバル・メカナイズド部隊に対しては、2006年7月、米国の軍事支援提供先として、人権状況の調査が行われた(米国の軍事援助を受けているコロンビア軍部隊については、 http://ciponline.org/colombia/0609units01.htm.を参照。

本稿と少し異なる版は、以前、Cultural Survivalの世界先住民ニュースに掲載された。


安倍晋三氏が総理になることで、共謀罪や教育基本法改悪、憲法改悪などが推し進められる可能性はますます高まっています。「共謀罪」ってなんだ?のページや共謀罪Q&Aなどをご覧下さい。

教育基本法については、教育基本法「改正」の問題点って?をご覧下さい。また、「改正」に関する「法」の基本的な問題としては、教育基本法「改正」もご覧下さい。愛媛の教科書が大ピンチのページに、安倍晋三氏の「教育等に対する違法な政治介入等に対してその違法確認等と損害賠償を求めて松山地裁に提訴する」ことについて、情報があります(もう提訴そのものの時期は過ぎてしまったと思いますが、ご紹介です)。

■少し古いですが、加藤紘一氏宅放火事件で佐高信、石坂啓さんらが「テロ許さぬ」と共同アピールという記事があります。

■埼玉県上田知事の「従軍慰安婦否定発言」県民行動と集会

集会 10月3日(火)午後6時30分から8時30分
   浦和埼玉会館
会場費800円 JR浦和駅下車5分   
証言 李容洙さん韓国ナヌムの家より来日
  コーディネーター WAM西野瑠美子さん

慰安婦パネル展 埼玉会館展示室  10.1 10.2 10.3
  10月1日 (日) 開館 午後1時から5時
     2日(月)10時から5時
     3日(火)10時から5時
連絡先 埼玉県平和資料館を考える会
TEL・FAX048−686−7398
 
益岡賢 2006年9月23日

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