インドネシアの北西の端にあるアチェの警察署で、拘留された人々は日々恐怖を味わっている。法的手続きの結果を恐れているわけではない。偽の自白をさせるためにインドネシア警察が行う拷問を恐れているのである。
この数日間、アチェの首都バンダ・アチェのPolres(地元警察)署から、情報が漏れ出てきている。情報源は様々であるが、ほとんどの情報は、自分が強制的に参加させられた行為に対して嫌悪を抱き、拘束されている人々のために介入できずに無力感を抱いていることを恥じているある警察官から来ている。
アチェで5月19日に軍事戒厳令が適用されて以来、国家反逆罪で罪を問われ、弁護士と話ができない状態に置かれた人々の拘留は、指数関数的に増加している。
様々な情報源---すべて公開できないものであるが---によると、留置所では、拷問や睡眠の剥奪、多数の人々を狭い部屋に押し込めること、食事と水の欠如などが蔓延している。拷問は体系的に行われ、日夜休まずに続けられている。
先週日曜日の夕方、Polresの2つの留置所には37人の人々が拘留されていた。留置所は、縦4メートル横3メートルである。毎日2食わずかな食事が与えられるが、きれいな飲料水は不足している。食糧不足と脱水、詰め込まれ過ぎたことによる熱によって、多くの人々が病気になったが、Polresに拘留されているこれらの人々を医者は訪れていない。共有のトイレは数日にわたって詰まっており、多くの人々が警察の拷問により開いた傷を体に持っていることから、こうした非衛生的な状況で、感染症にかかる危険は非常に高い。
この数日間、16歳のアミルディンは頭をあまりにひどく殴打されたため、片方の目しか見えなくなった。留置場に拘留されている人々の中には18歳に達していない人々が数名いるが、これらの人たちは全員が殴打されている。国際基準に従えば、これら18歳未満の被拘留者は、子供に分類される。
年老いた囚人も何人かいるが、やはり拷問を受けている。6月30日月曜日、テング・ワハブは留置所の一つに入れられたが、そのとき、警察機動隊(Brimob)で拘留されている間に受けた殴打により、既に肋骨が折れていた。Brimobはインドネシアのエリート警察機動部隊であり、インドネシア軍と同様に、殺害や暴力を行っていることで悪名高い。テング・ワハブは63歳で、被拘留者のほとんどと同様、国家反逆罪で告発されている。
インドネシア政府は、分離主義の自由アチェ運動(GAM)を支援している疑いのある者たちを国家反逆罪で告発すると発表した。6月30日、テング・ワハブが入れられている牢獄には、他に16人の被拘留者がいたが、そのうち15人は同じ国家反逆罪で告発されている。ワハブの入れられている牢獄の隣の牢獄にいる20名の運命も同じである。けれども、2名は、Polresに5ヶ月間拘留されていながら、公式の告訴はなされていない。囚人の一人は精神的な病を抱えているが、彼もまた、国家反逆罪で告発されている。
6月29日日曜日の午後9時半に、新たな囚人がやってきた。警察は怒っており、叫んでいた。「おまえはGAMのメンバーだろう?俺たちが馬鹿だと思っているのか?GAMのメンバーだと言え。言うんだ!」。警官たちは、叫びながら、彼の頭を牢獄のバーに繰り返し繰り返し打ち付けていた。午後11時30分の電話で、明らかに苦しみながら、くだんの警察官はPolresの拷問室に通ずるドアを開け、「国際赤十字を呼んでくれ。この人々には助けが必要だ。私が参加したことについて神が許し賜うことを、我々皆を神が許し賜うことを」と述べた。
情報は、この警察官から来ているだけではなく、釈放された一部の人々を含むいくつかの情報源からもたらされている。「そう、私は殴られたが大丈夫だ。なぜ自分が釈放されたのかわからないが、ただラッキーだったのではないだろうか。今もPolresに拘留されている私の兄弟たちを助けてくれ」。拷問道具にはどんなものがあったか聞かれたサイフディン(本名ではない)は、「囚人を拷問するために使えるものは何でも使っている。銃や籐の鞭、木さらには重い本まで使って人々を殴打し、靴で肋骨や頭を蹴る。そして、たばこやライターで人々の皮膚を焼いた。ときに、私の指の間にボールペンを挟んで、それから、指を押しつけた」。
国際社会は、アチェ問題に対して沈黙しているばかりである。その一方で、ビルマの民主化指導者アウンサン・スーチーの拘留に対しては遙かに多くの時間をつぎ込んでいる。実際、ASEAN諸国閣僚会議で、ミャンマー政府(ビルマの軍政:軍政そのものを指すときにはミャンマーという言葉を使います)を最も声高に批判したのがインドネシアのハッサン・ウィラユダ外相であった。ハッサンは、スーチーの拘留に関して「ミャンマーは国自身の後退であり、地域の後退でもある」と述べた。ウィラユダは、スーチーの拘留とその状況について反対したのである。
けれども、ハッサンもその一部であるインドネシア政府が、インドネシア内で5月、1975年の東チモール侵略以来最大の軍事作戦をアチェで展開したことを考えると、虚ろに響く。ハッサン自身の国インドネシアでは、膨大な数の人々が、囚人の扱いに関するあらゆる基準と条約に反し、戦争下の民間人の権利を蹂躙したひどい状況の中で、拘留されているのである。
戦場で戦闘行為に参加することと、国家警察が怪しげな法律を振りかざして拘留した人々を拷問し、体の機能を奪い、殺すことは別である。インドネシア政府は、アチェにおけるこうした問題に対して国際社会が黙っていることを、アチェ地方での自らの行為に対する支持であると受け取っている。
何故、インドネシア警察は、アチェで子供や老人を拷問しひどい怪我を負わせているのだろうか?何故、土曜日、ひどい拷問に倒れたある囚人が、Polresから夜外に連れ出されたのだろうか?その遺体は今どこにあるのだろうか?
ハッサンは、ミャンマー政府はスーチー釈放を求める国際社会の要請を無視することはできないと述べた。そうであるならば、ここで述べたようなアチェの問題を解決することも非常に簡単である:国際社会が、インドネシア政府に対し、子供や老人を含む民間人を拷問しないよう要求するだけでよい。本当にそんなに簡単なのだろうか?
アチェを巡る最新の情報は、インドネシア民主化支援ネットワークにあります。
日本政府は、相変わらず、「インドネシアの領土的統一を支持する」と述べながら、アチェの人権侵害については、強くインドネシア側に働きかけることをしません。インドネシアに対する最大援助国であるため、日本政府の働きかけは、有効であることが予測されるにも関わらず。その一方で、国際法にも日本国憲法にも違反するイラク特措法を押し進め、小泉首相などは不気味な笑いを浮かべています。
改めて、アムネスティ・インターナショナルと日本インドネシアNGOネットワーク共同のキャンペーンにも(まだの方は)ご協力頂けますと幸いです。既にFAX等なさった方は、知人・友人に広めて下さいますよう御願いいたします。また、独自に簡単な文面を作って、日本政府・外務省やインドネシア大統領にFAX等の働きかけを行うことにもご協力くださいませ。
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http://www.asahi-net.or.jp/~gc9n-tkhs/address.htmlにも、小泉純一郎日本首相、川口順子外相等のFAXやメール連絡先などがあります。