世界の底流  
米軍の気象戦争
2008年1月3日


 今日、気候変動(地球の温暖化)についての議論が盛んに行われている。洞爺湖サミットの最大の議題になうことは間違いない。しかし、その議論の中で、米軍がひそかに開発している気象戦争について言及されることはほとんどない。
 これは「高頻度のアクティブなオーロラ研究プログラム(HAARP)」と呼ばれ、「戦略的防御イニシアティブ」、別名スター・ウォーズの一部になっている。
その内容は、要約すれば、高精度な次世代電子磁気兵器でもって、地球の気象を操作する軍事技術である。そして気象を軍事目的で操作する技術は、これまで米国とともにロシアも開発してきた。
 しかし、米国が、この技術開発の開発を始めたのは半世紀以上もまえのことである。米国防総省の顧問である数学者のJohn von Neumannが通称「気象戦争」と呼ばれる「気象操作の研究」を始めたのは、冷戦が始まった1940年代末であった。
 またベトナム戦争中の1967年に、米軍は「ポパイ・プロジェクト」という「雲をよぶ技術」を使用したことがあった。それは、モンスーンの期間を長引かせて、ホーチンミン・ルートを使った敵の武器の搬送を阻むのが目的であった。
 米軍は、地域を特定してそこの気象パターンを変える技術を開発している。それは、High-frequency Active Auroral Research Programme(HAARP)と呼ばれ、「戦略国防イニシアティブ」、つまりスター・ウォーズの一環である。
HAARPは、大気圏外で用いられる大量破壊兵器であり、世界中の農業とエコ・システムを破壊することが出来る。
 米空軍が発表した「AF2025最終報告書」によると、気象戦争とは、敵の戦闘能力を破壊、または無能化する非常に広範囲な戦闘であると定義づけている。そのなかには、洪水、ハリケーン、旱魃、地震などの誘発も入っている。この武器は、攻撃、防御、あるいは、抑止力として使える、という。
 1977年秋の国連総会では「広範囲に、長期間にわって深刻な影響を与える環境変動技術の敵対的使用を禁止する国際条約」が批准された。この条約で特定された「環境変動技術」とは、「生態圏、地殻層、水圏、大気圏、あるいは大気圏外を含め、地球の活力、構成、構造を意図的に操作するなどして環境を変動させる技術」のことである。
 この1977年条約の内容は、1992年、リオの地球サミットにおいて署名された「気候変動に関する国連枠組み条約(UNFCCC)」に盛り込まれた。だが、それ以降、軍事目的での気象操作についての議論はタブーになっている。軍事アナリストもこの問題には沈黙している。気象学者もこの問題を取り上げようとしていない。エコロジストたちも、京都議定書のCO2問題に議論を限っている。
HAARPプログラムは1992年に始まっている。この基地はアラスカ州ゴコナに置かれている。そこには、132機の高圧力のアンテナが林立しており、高頻度のラジオ波を発して電離層(成層圏の上部)に大量のエネルギーを送っている。
この基地の建設は、米空軍、海軍、そして国防高度研究プロジェクト(DARPA)の資金で賄われている。HAARPは、パワフルなアンテナで特定の電離層を操作する能力を開発した。HAARPのウエッブサイト<www.haarp.alaska.edu〉には、特定した地域の電離層の温度を変えて、それによって対象部分にどのような反応が起こるかについても把握できる、と書いてある。
 HAARPプロジェクトは、1992年、Atlantic Rochfield Corporation (ARCO)社の子会社である「Advanced Power Technologies Inc.(APTI)」によってはじめられた。しかし、1994年に、APTIはE-Systems Inc.社にパテントぐるみで売却された。
 E-Systems社はCIA・国防総省と契約を結んだ。英国のBAES社は2004年になってHAARPの開発に参加した。
 「公共保健を憂慮する国際研究所(International Institute of Concern for Public Health)のRosalie Bertell会長は、「HAARPは巨大なヒーターであり、それによって電離層に大きな亀裂を起こす。これは単に一時的に穴を開けるというのではなく、地球に爆弾のように降り注ぐ死の放射能を防いでいる層に長期にわたる切り目を作るものだ」と語った。
 また物理学者のBernard Eastlund博士は、「HAARPはこれまでに類の無い巨大なヒーターである。これは空軍の研究プログラムだと言われるが。軍の文書によると、その主な目的は電離層の変形にある。それは気候パターンを変え、通信やレーダーを妨害することにある。
 ロシアの国会の報告書には、「米国がHAARPプログラムの下で、人工衛星やロケットに搭載している通信網と器具を破壊することが出来る兵器の大規模な実験とを行ない、現に、送電線と石油・ガスのパイプラインに重大な影響が出ている。さらに、基地のある地域すべてのメンタルヘルスに悪影響を及ぼしている」と書いてある。
 米空軍が出している軍事分析書は、恐るべきことが書いてある。「地球的規模での戦争の武器として気象パターン、通信、送電線を秘密裏に操作する能力をもつことによって、米国が世界を制覇できる。気象操作こそは真の意味での先制攻撃兵器である。感知されることなくして、敵、あるいは友好国に向けて、経済、エコ・システム、農業を破壊させルことが出来る。金融・商品市場を混乱に陥れることも出来る。農業を不作にすれば、食糧の輸入依存度を高め、必然的に米国に主食を依存しなければならなくなる、などと言っている。
 HAARPシステムはすでに実戦段階にある。アンテナは実験を終えていると言う。これが、これまでの戦略兵器をしのぐものであることは間違いない。米空軍の資料によると、これは「宇宙の軍事化」である。
 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は気候変動に関する科学的、技術的、社会的、経済的情報を調査する権限を与えられている。この権限の中には、環境戦争も含まれているはずだ。しかし IPCCの何千ページに及ぶ報告書には、全く触れられていない。