1. 第4回世界水フォーラムの開催
世界水フォーラム(WWF)は3年毎に開催される。今年は第4回、3月16〜22日、メキシコシティで開かれた。
WWFの主催団体は世界水評議会(WWC)というマルセイユに本部を置くNGOとなっており、WWFは国連と連携して世界の水政策を作成することになっている。
しかし実態は、WWCのRene Coulomb会長は世界で3大水会社の1つに挙げられるスエズ社の社長であり、WWF自体は世界銀行、コカコーラ社その他の多国籍企業との共同開催であり、会議を主催したCONAGUA(メキシコの水道庁)は腐敗と資金の疑惑で有名な組織である。
実際には、WWFは、自由貿易フェアであり、企業エキスポであり、水関連企業が向こう3年間のアジェンダを決めるプラットフォームである。
ベネズエラの環境省の高官であるSantiago Arconada がWWFのことを「水のダボス」と呼んだのは正しい。
2. オルターナティブ・フォーラムの開催
WWFに対抗してオルターナティブ水フォーラムが同市内で開催された。「水については
死ぬまで戦わねばならない」とオルターナティブ・フォーラムで活動家が言った。これはいつでも水道の蛇口から水が出てくる先進国では奇妙に聞こえるかもしれない。しかし、途上国ではほとんどの人が水へのアクセスを奪われている。
「水戦争は未来の黙示録ではない。すでに始まっている」とオルターナティブ・フォーラムを取材した2006年3月17日付けの『ワシントンポスト』は書いている。メキシコの地方からWWFの会議場まで10,000人の仲間と一緒に行進してきた参加者は、「我々は、水のために殴られ、投獄され、そして殺されてさえいる。しかし諦めない」とMarco
Suasteguiは述べた。彼は太平洋に面したリゾート地アカプルコに水道を供給するためのダム建設に反対する闘争のリーダーである。ダムが近くのパパガヨ川を干上がらせてしまうと恐れている。
メキシコのNGOである水の権利を守る委員会のAudora Dominguezは「WWFは金を払うことが出来る人びとのフォーラムであり、貧しい者は除外されている」と述べた。
3月16日、1万人が平和的なデモがあった。しかし、スキー帽で顔を隠した若者たちがジャーナリストを襲い、警官と衝突し、パトカーを壊し、石を投げたりした。この若者たちは直接オルターナティブ・フォーラムの参加者ではないようだった。
メキシコで、水問題で闘っている人びとは、このような“ラディカル”と呼ばれる人びとではない。それはメキシコシティの低所得地帯の住民である。彼らはトラックで運ばれる水を得ようと体で闘っている人びと、とくに主婦たちであり、家の周りが汚物の下水で溢れていることにもはや耐えられなくなった人びとである。またメキシコシティに水を供給するために水路を変えられた結果、穀物を栽培できなくなった先住民たちがいる。彼らの子どもたちは安全な水を飲めなくなっている。また、川にダムを建設されたために水を失った農民や漁民がいる。彼らは村が開発され、何千もの新しい家が建っていくのを手を拱いて見ていなければならない。
2004年に安全な飲み水を求めて 闘争を指導した33歳のMazahua の先住民女性Victoria Martinez Arriagaは、「我々は最後まで闘う。恐れるものはない」と語った。しかし、暴力は彼女にとって最後の手段だといった。彼女がもっている銃は木製のおもちゃであり、シンボリックなものである。
オルターナティブ・フォーラムのデモはメキシコシティの一部に水の供給を一時的に停止させた。
メキシコシティの市会議員Almeida Alavez Ruizは「メキシコシティの水紛争は激化するだろう。なぜならここの洪水、水不足、都市のスプロール化、公害、ごみ問題などが、世界の都市の水問題の典型であるからだ。もしこの問題を今認識しなければ、次の乾期には紛争がさらに激化するだろう。彼女の選挙区では住民が、水道が止まって、トラックで運ばれる水に頼らざるをえない。住民は長い列をつくって水の供給を受けるのだが、列を乱すものが出てくると争いになる。
水をめぐる争いの激化については関心が高まっている。WWFの主催団体であるWWCのLoic Fauchon会長は世界中で起こる水をめぐる争いにそなえて平和維持部隊の創設を呼びかけた。これは国連の平和維持部隊“ブルー・ヘルメット”をモデルにしている。 |