世界の底流 |
米軍が撤退し、石油会社が入る −ベーカー報告書の真実− |
2006年12月17日 |
イラク戦争の当初は、米国がイラクの石油利権を獲得するため、つまり、「Blood for Oil」だという非難に対して、ブッシュ政権は激しく否定した。 たとえば、ベーカー報告書の第62項勧告は、「米政府は、(イラク政府が外国の投資家向けに)財政上、かつ法的な枠組みとなる石油関連法案の起草を援助すべきである」と述べている。さらに、米国政府は、IMFと協力して、イラクのエネルギー部門に対する補助金を廃止するべきである。イラク人は国際市場価格で石油製品を買うべきだ、と勧告している。これは、とりもなおさず、戦争で家を壊され、インフラも破壊され、50%の失業に苦しんでいるイラク人に、補助金なしの高い石油製品を買えということになる。これは、まさに、石油資本の利潤を確保するためである。 勧告第63項は、「米国は、多国籍石油資本がイラクに投資を容易にするために、イラク政府が石油産業を民営化するのを支援するべきである」と述べている。これはあまりにも露骨な勧告ではないか。 さらに、ベーカー委員会そのものが、石油、建設、金融産業などイラクに利権をもっている資本の代表で構成されている。まず、ベーカーは、ブッシュ・パパの湾岸戦争のときの国務長官であった。イラク戦争が始まったとき、ベーカーは連合軍の結成のために奔走した。彼の法律事務所はクエートとその他の湾岸諸国の債務返済を手がけており、彼自身もテキサスのオイルマンである。 メンバーの中にも、石油利権がらみの男が多い。Lawrence Eaglebergerは、Halliburton (イラクでの最大の建設請負会社)とPhilips
石油に関係し、問題の多いコンサルタント会社であるKissinger Associatesの元代表である。ちなみに、イラク占領時代のPaul
Bremer軍政官はKissinger Associatesの専務理事であった。Vernon JordanはAkin Gumpの法律顧問であり、なぞのBilderberg
Groupと近い。Leon Panettaはニューヨーク株取引所の理事である。 このように、ベーカー委員会には、イラクの利権に関連する企業の代表たちによって構成されている。報告書には、コンサルタントとして専門家の名が乗っているが、平和運動や女性、環境、公民権、労働団体の代表の名は、1人も見当たらない。一方、右翼のヘリテージ財団やアメリカ企業研究所などの名は挙がっている。 さらに、スンニー派の武装グループも、イラク石油をコントロールする権利を主張してはいるが、実際には、米国企業に甘いオファーを提示している。 これらの事実から、米国のイラク戦争は、サダム・フセインを打倒するだけでなく、アラブの民族主義国家を解体して、石油の油田を外国資本の手にゆだねるのが目的であったことが良くわかる。 ベーカー報告書は、イラクから米軍を撤退させ、代わりに、世界第2位の油田を確保するというシナリオを提起したものである。 ベトナム戦争時代に、反戦活動家として知られたトム・ヘイドンは、米国の平和運動に対して、以下のような提言を行っている。 |
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