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これは実にユニークな人物を描いた本である。多くの読者は、今日の日本にこのような人物が存在することに驚くだろう。まず、この物語の主人公島岡強は、アフリカに革命を起こすために、ザンジバルという島で漁業をし、アフリカ人に柔道を教えている。背が高く、アフロヘアで、太い眉毛と鋭い目をしている。日本人イスラム教徒は4000人たらずだと思うが、彼は父親の代からのイスラム教徒である。そして、自らを「革命児」と呼ぶ。これまで、レーニンやゲバラが自らを「革命家」と呼んだが、それは1世紀に1人しか生まれない傑出した指導者の特権であった。だが島岡強は、まじめに自分を信じていて、自分の漁船にも「カクメイジ号」と名づけた。19歳ではじめてアフリカに渡ろうとするのに、ナホトカまで船、そして汽車でシベリアを横断し、ヨーロッパから入る、というのも変わっている。普通なら日本の漁船に乗せてってもらおうなどと考えそうなものだ。主人公は沢山の本を読んでいるらしいが、彼に最も強い印象を与えたのは、ゲバラ日記だったようだ。アルゼンチン生まれのゲバラはカストロのキューバ革命に参加した。そして革命に勝利した後も、ゲリラ戦士としてアフリカに渡り、最後にボリビアで戦死した。島岡強は、ゲバラを模範としながらも、ゲバラのように武装闘争では、長い間ヨーロッパ人に支配されてきたアフリカ人の心を解放できない、と考えた。そこで彼が選んだのは、アフリカの地で農業や漁業などの第1次産業をアフリカ人とともに興すことだった。主人公の熱情と粘り、そしてアフリカ人の友人に支えられて、彼はザンジバルに根をおろすことが出来た。漁民仲間、柔道の弟子などとの交流、そしてアフリカと日本人との生き方の違いなどが、楽しく読め、理解できる。これは、アフリカだけではなく、アジア、ラテンアメリカなど第三世界に共通するものがある。筆者は島岡強の妻だが、彼女のマラリア闘病記の章は、同じく20代にアフリカで過ごし、悪性のマラリアに苦しんだ私には手に汗を握る箇所である。 |